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[イギョラ杯]「伝統の7番」を受け継ぐ後継者。甲府U-18MF天野空太郎が幼い頃から貫き続けるヴァンフォーレ愛

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「伝統の7番」の継承者。ヴァンフォーレ甲府U-18MF天野空太郎

[3.20 イギョラ杯 桐光学園高 1-2 甲府U-18 帝京北千住G]

 幼い頃から、小瀬の綺麗な芝生の上で繰り広げられる、真剣勝負を見つめ続けてきた。青と赤のユニフォームを纏った選手たちが、とにかく眩しく映った。だからこそ、このエンブレムを身に付けることも、この番号を背負うことも、どれだけの意味があるのかなんて、口にするまでもなく、意識のレベルで理解している。

「克哉さんから『7番はオマエしかいない』と言ってもらえたので、そこは番号に恥じないように、自信を持ってしっかり甲府のためにプレーしたいという想いはありますし、小さい頃からヴァンフォーレを見ていたので、もちろん第一の目標はサッカー選手になることです」。

 クラブのレジェンドも認めるヴァンフォーレ甲府U-18(山梨)のナンバー7。MF天野空太郎(2年=ヴァンフォーレ甲府U-15出身)が羽ばたく世界は、きっと自分次第でどこまでも遠くの空の下へと、果てしなく広がっていく。

 何しろ、ボールが集まる。「内田(一夫)監督がポゼッションサッカーを志向していて、自分があそこでCBと3人で中心となって、ボールをもらいながら前進していくことを意識していますし、自分はボールを持つことが得意なので、そこには自信を持っています」。逆三角形で組んだ中盤の底。いわゆる“アンカー”の位置で、受けて、捌いて、前に出る。文字通り、船の碇のような役割を涼しい顔でこなし、チームにリズムとバランスを生み出していく。

 新チームになって今大会の初戦が対外試合は“2試合目”だという状況でも、逆にサッカーをできる楽しさをみんなで発散するかのように、有機的なアタックをみんなで繰り出していく。「今日の2試合に関しては結構真ん中でボールももらえて、落ち着いてプレーできましたし、ロングボールの質も結構良かったので、あとはもっとチームをまとめるというか、自分が中心となってやっていけばチームも楽になるかなと思います」。大会2日目は近畿朝高選抜に6-0、桐光学園高(神奈川)には2-1で競り勝ち、グループ首位通過を手繰り寄せた。

 ただ、本人はもう少し攻撃的な役割を担いたい様子。「去年も1個下の学年でトップ下をやっていたので、自分は前でやりたいタイプですね(笑)。一発で打開できるパスとか、試合を決めるシュートは自分のストロングだと思うので、チャンスがあったら前に行きたいなと。参考にしているのはヴィッセル神戸のイニエスタ選手です。プレーももちろんですし、頭を使ったプレーは参考にできるので、毎試合見ています」。そう言われれば、確かに前に出ていく回数はアンカーがイメージされるそれより、多かった気もしないではない。

 実は今シーズンのU-18にとって、対外試合の“1試合目”はトップチームとの練習試合だったという。「対人の強さには差があると思いましたし、ポゼッションも間でもらったりはできたんですけど、ボールを奪った瞬間にトップの選手の切り替えが速くて、その切り替えのスピードはまだユースと差はあるのかなと感じました。印象に残ったのは宮崎純真選手ですね。ケガ明けで僕らの試合に出てきたんですけど、スピードもあって、ドリブルもあって、3人で行っても取れなかったです。キレが凄かったです」。

 大きな刺激を受けた中で、幼馴染みと言っていい選手の存在も、天野にとっては無視できない。「(内藤)大和とはヴァンフォーレに入る前に、小さい頃からずっと一緒にやっていて、仲良しなんですけど、悔しい想いや自分もトップで試合に出たいという想いは常に持っています。自分たちもJリーグの次の日にある練習試合には何人か行ったりしているので、そこで経験できることが一番大きいと思いますし、1回呼ばれた時にそこで得た課題をしっかり練習で克服して、また呼ばれた時にアピールできるようにというのはみんな意識して練習しています」。身近な“基準”を身体に刻み込み、目標に近付くための日常を丁寧に積み重ねている。

 2022年はヴァンフォーレのアカデミーで過ごす最後の年。いろいろなジャッジが下されることになるが、基本的には自分のやるべきことの本質は、いつだって変わらない。

「チームとしてはプリンスリーグ1部昇格と、クラブユースでの全国優勝を目標としています。去年のクラブユースは自分も全国で1試合しか出られなくて、グループステージで敗退してしまったので、まずはチーム一丸となってしっかり戦って、本大会に出られるようにしていきたいです。個人としてはもっとアピールして注目を浴びることと、『コイツがいないとダメだ』と言われるようなプレーヤーになりたいですし、アシストだけではなくて点も獲れるように、結果にこだわってやっていきたいと思います」。

 石原克哉・U-18コーチも太鼓判を押すヴァンフォーレの司令塔。誰もが認める“7番”の継承者になるタイミングが来れば、きっとその時は天野もチームもそのステージをさらに一段階駆け上がっているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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