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[MOM3789]帝京長岡MF石鉢真斗(新3年)_「帝長のチアゴ・アルカンタラ」がゴールという結果で定位置確保へ好アピール!

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帝京長岡高期待のプレーメイカー、MF石鉢真斗

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[3.27 船橋招待U-18大会 市立船橋高 0-1 帝京長岡高]

 そもそもその才能を持ってすれば、期待値は小さくない。なかなか陽の目を浴びるまでに至らなかった2年間で、エネルギーは十分に蓄えてきている。あとは、それをより大きな舞台で発散するだけだ。

「去年はケガが多くて、あまりトップチームに関わることができなくて、選手権もメンバーに入っていなかったので、今年こそはそういうところに絡んでいきたいですし、もっと言うとここまでの2年間はなかなか試合に関わることができなかったので、今年はみんなで一緒に日本一を目指して頑張りたいなと思います」。

 ようやく本来の力を発揮しつつある、帝京長岡高(新潟)の新たな心臓。MF石鉢真斗(新3年=東松山ぺレーニアFC出身)が長岡の技巧派集団を、冷静に振るうタクトで正しい方向へと導いていく。

 強豪の市立船橋高(千葉)と激突した、船橋招待U-18大会最終日の一戦。「みんなが怖がらずにボールを受けて、フォワードもタメを作れて、3人目の関わりで上手くサイドを崩せたので、そういうところは良かったかなと思います」と石鉢も振り返ったように、前半はボランチでコンビを組むMF五十嵐丈一郎(新3年)と左右に配球しつつ、右のMF廣井蘭人(新3年)を内側で、左のFW松山北斗(新3年)を外側で使いながら、攻撃の時間を長く作っていく。

 その中で虎視眈々と狙っていた得点を、自らの右足でさらってみせる。前半16分。左サイドで獲得したCK。廣井の蹴ったボールから、味方が頭で合わせたボールがゴール前にこぼれると、ストライカーのような嗅覚を発動させる。

「あそこに入ることはイメージしていて、そうしたら上手くこぼれてきたので、あとは決めるだけでした」。きっちりとボールをゴールネットへ押し込む先制弾。「そんなにゴールを決めることはは多くないので、嬉しかったですね」。その表情に全開の笑顔が弾けた。

 だが、後半は勢いが反転。市立船橋の猛攻に押し込まれる時間が続く。「自分はボールをもっと受けて、捌こうと思っていたんですけど、結構相手が前から来ていたので、そこは上手くできなかったですね」と展開を振り返る石鉢も守備に追われる時間が続いたものの、何とか粘り強く守り切って、1-0で勝利。前後半でまったく違う顔を覗かせながら、勝利という成果はきっちりともぎ取ることに成功した。

 中学時代は埼玉の東松山ペレーニアFCでプレーしていたが、埼玉スタジアム2002で見た黄緑色のユニフォームに心を奪われた。「自分は埼玉に住んでいて、埼スタは近かったので、帝京長岡で谷内田哲平くん(現・栃木SC)たちが選手権に出ていたのを見た時に凄く良いサッカーをしていて、『自分もここでやりたいな』と思ったんです。凄くあのサッカーに憧れて、『帝京長岡に行きたいな』と感じて進路を決めました」。

 ここまでの2年間も、トレーニングで積み重ねてきたものには、もちろん自信を持っている。「自分はパスを回すスタイルが好きなので、そういうところでも『ものすごく自分に合っているな』と感じていますし、『本当に帝京長岡に来て良かったな』と思います」。あとはその手応えを、実際に試合でのプレーに反映していくだけ。賢明な石鉢はそのこともとっくに分かっている。

 東松山ペレーニアFCの2つ年上に当たる“先輩”には、小さくない刺激をもらっているという。「自分が中1の時に、櫻井辰徳くん(現・徳島ヴォルティス)が中3でプレーしていて、よく試合も見に行っていましたし、練習場が一緒だったので、プレーを見たりしていて、そういうところでは参考にしていました」。

「やっぱりその頃から凄く上手くて、両足も蹴れて、前橋育英からヴィッセル神戸への入団が決まった時にも『ああ、凄いな』と思いましたし、ずっと憧れていますね。自分もアンカーという同じポジションですし、今もヴォルティスの試合を見ています」。いつかは櫻井くんのように。明確なビジョンを携えて、日々のトレーニングに取り組んでいく。

 参考にしている選手は、イングランドのプレミアリーグ屈指のアタッカーだ。「リバプールのチアゴ・アルカンタラが好きですね。普段から結構ターンを真似したりしているので、そういうところは参考になっています」。

 目指すは『帝長のチアゴ・アルカンタラ』。堅実さと大胆さを兼ね備えたプレーメイカー。2年間の雌伏の時を経て、実力を磨き続けてきた石鉢。覚醒の時は、おそらくすぐそこまで迫っている。

(取材・文 土屋雅史)

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