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22年シーズン、名門・市船のゲーム主将は新2年生!松木と似た空気感纏うMF太田隼剛

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市立船橋高のゲーム主将を務める新2年生MF太田隼剛

[3.27 船橋招待U-18大会 市立船橋高 3-0 桐光学園高]

 22年シーズン、名門は新2年生のゲーム主将とともに復権への道を歩む。インターハイ優勝9回、選手権優勝5回の市立船橋高(千葉)は、MF太田隼剛(新2年=鹿島アントラーズつくばジュニアユース出身)が22年のゲーム主将に就任。27日まで開催された第27回船橋招待U-18大会では、主将のGKドゥーリー大河(新3年)が欠場した試合でキャプテンマークも巻いてプレーしていた。

「今年はゲームキャプテンという役割をもらったので、やらないといけない」

 太田は1年生だった昨年から先発を務めるレフティーボランチ。先頭に立って「球際・切り替え・運動量」の三原則を実践する一方、落ち着き払ったボールコントロールと長短のパスで存在感を放つ。

 船橋招待では名古屋U-18や静岡学園高などハイレベルな対戦相手との連戦だったが、プレッシャーに来る相手を個で剥がし、縦パスで攻撃をスピードアップ。そして、ゴール前へスプリントして得点を狙うなど一際目立つ動きを見せていた。

 加えて、ピッチ内外で物怖じすることなく同級生や上級生に発信。市立船橋は新シーズンへ向けてゲーム主将というポジションを新設したが、波多秀吾監督はその重責を太田に託した。

 主将はGKのドゥーリーが務めるが、トレーニングでは別メニューになることも多い。波多監督は慎重に考慮し、「(市立船橋のピッチ内は年齢関係なく、)フィールドで誰がゲームの中で中心になって戦術的なこと、メンタル的なことを発信できるんだ、となったらアイツかなと」と決断。市立船橋では、2年前の主将で現鳥取のDF石田侑資が下級生時から強烈なリーダーシップを発揮していたように、下級生が前に出る下地もある。もちろん、個性派揃いの新3年生が責任感を持って新2年生リーダーをサポートすることも必須。その上で、太田はプレーの質量、リーダーシップの両面を求められている。

 太田は「自分も去年の終わりくらいからキャプテンをやりたいと思っていたんですよ。引っ張っていく自信はあったので」と明かす。ピッチ外ではまだまだ足りない部分があると自己分析。だが、ピッチでは絶対にやれる自信、覚悟がある――。希望する形でリーダーの役割を得たMFは、全力で取り組みを始めている。

「『やれないとすぐに外す』と言われましたし、そのくらいの覚悟は自分自身もありました。勝ったらみんなのお陰ですし、負けたら自分の責任という立場なので、チームを勝たせられるゲームキャプテンにならないといけない。チームの士気が上がるようなプレーとか、チームがちょっと劣勢な時とかにプラスな声掛けをして、プラスに持って行けるようにしていきたいです」

 太田はチームを引っ張る上で、市船で一番のプレーヤーになることも目指している。球際も、切り替えも、運動量も、パスも、ドリブルも、シュートも一番の選手になることが理想。そのために自分を突き詰めている。

「(新2年生のU-16代表候補FW)郡司(璃来)とかいっぱい点を獲れるやつはいるんですけれども、その中でも自分が一番点を獲って目立ちたいですし、コイツがいると勝てるなとか、周りから見てもコイツがいないと勝てないなと、そう思わせる選手に個人としてはなりたいです。ボランチですけれども、一番獲りたいし、一番目立ちたいので得点には個人的にもこだわっています。自分自身に目を向けて、周りよりも自分に向き合ってウィークとかを改善していきたい」

 その言動から伝わって来るのは青森山田高を“3冠”へ導き、FC東京でのルーキーシーズンから活躍しているU-21日本代表MF松木玖生のような空気感。松木に比べると一回り以上小柄だが、同じレフティーのMFで、攻撃も守備も全てで一番を目指す姿勢や、先輩に対して物怖じせずに意見する姿も21年度高校サッカー界を席巻した「キング」と重なる。

 太田は「スタッフにも言われます。『松木にちょっと似てるな』と」と微笑。もちろん昨年の青森山田の強さは松木だけの力ではないが、実力、取り組み、熱量と「松木が青森山田に残したもの」の大きさを実感する波多監督は、太田によるチームの変化も期待しているのかもしれない。

 昨年、市立船橋は9年ぶりにインターハイ、選手権の両方で全国出場を逃した。プレミアリーグEASTは、最終節(対柏U-18)にFW郡司璃来(新2年)がハットトリックを達成して9位残留を果たしたが、悔しい1年だったことは間違いない。

 鹿島ユースへ昇格する実力を持ちながら市船へ進学した太田の勝利への欲求は特別。「今年は内容よりも結果を出さないといけない年。結果にこだわって、勝ちしかいらないので、プレミアでしっかり結果を残して、インハイも、選手権もしっかりと全国に行って強くなった市船をもう一度見せたいと思います。県リーグとか含めて獲れるタイトルは全部獲りたい。去年の(青森)山田を見て、あんくらいやらないと獲れない。あのチームでも苦しんだ試合ありました。今のままでは全然届かないと思いますけれども、チャンスはあるので。もっと練習から、試合から、こだわっていかないと勝てないなと思います」と力を込めた。

 4月3日のプレミアリーグEAST開幕戦の対戦相手は青森山田。ホームに王者を迎え撃つ一戦へ向けて太田は、「大半は山田が勝つと思っているんで、初戦。逆に初戦勝ったら、他のプレミアのチームにも『良い宣戦布告』ができるのかなと。『今年の市船、違うな』と初戦で見せつけたい」。船橋招待は勝負どころでの失点や決定力不足に苦しんだが、3年生の頑張りも実る形で桐光学園高との最終戦を3-0快勝。良い形で新シーズンへ向かう名門のゲーム主将は、三原則をはじめとしたプレー、発信力でチームを引っ張り、必ず結果を残す。

(取材・文 吉田太郎)

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