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[プレミアリーグEAST]新たな歴史の第一歩。川崎F U-18はウノゼロ勝利で堂々のプレミアデビューを飾る!

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MF川口達也の決勝PKで川崎フロンターレU-18がプレミア初勝利!

[4.2 プレミアリーグEAST第1節 大宮U18 0-1 川崎F U-18 秋葉の森]

 新たな歴史の第一歩を、勝利で飾った試合後。キャプテンマークを巻いていた大関友翔は、笑顔で終わったばかりの試合をこう振り返った。

「厳しい試合になるのは分かっていましたし、1点勝負になるとは考えていたんですけど、プレミアの舞台で、難しい試合をモノにできたというのは、これからの自分たちにとってもプラスになりますし、リーグ戦としても大きな勝ち点だったと思います。想像していたより緊張もあまりしなかったですし、『楽しくできたなあ』という感じでした。最高の気分で川崎に帰れます!」。

 念願のプレミアデビューは、会心のウノゼロ勝利で。2日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第1節、大宮アルディージャU18(埼玉)と川崎フロンターレU-18(神奈川)が対峙した一戦は、後半15分にMF川口達也(3年)がPKを冷静に沈め、これが決勝ゴールに。プレミア初昇格の川崎F U-18が、開幕戦できっちり白星を手繰り寄せている。

 2022年シーズンの幕開けとなるオープニングマッチ。お互いにケガ人も含めて、なかなか思ったようなメンバー構成を組めない中でも、この一戦に懸ける想いを序盤からぶつけ合う。前半6分は大宮U18。FW高橋輝(3年)がドリブルで仕掛け、MF安部直斗(2年)が狙ったミドルはゴール左へ。7分は川崎F U-18。最前線に入ったMF尾川丈(2年)が右サイドで仕掛けて枠内ミドル。ここは大宮U18のGK涌井寿大(3年)がキャッチしたものの、まずは双方がゴールへの意欲を打ち出す。
 
 その中で、少しずつ川崎F U-18の中盤が躍動し始める。「練習から3人の目が合うことは多いので、自分たちが連携で見せるところもありますけど、由井がいることによって螢と僕が前に出ていけるというところは、関係性として凄く良いのかなと思います」と10番を背負うMF大関友翔(3年)が話したように、MF由井航太(2年)、MF大瀧螢(3年)、大関で構成された中盤の3人が流動的にポジションを取りながら、ボールを動かすテンポを創出。ここに右の川口、左のMF岡野一恭平(3年)と両サイドハーフのドリブラーがアクセントを生み出し、攻勢を強めていく。

 16分には由井のパスから、大瀧が思い切ってミドル。相手に当たったボールはクロスバーに跳ね返り、こぼれを収めた川口のシュートも涌井のファインセーブに遭ったものの、惜しいチャンスを作ると、18分にも右CKの流れから、大瀧の左クロスをDF松長根悠仁(3年)がボレーで合わせるも、涌井がキャッチ。25分にもDF江原叡志(2年)のパスから、川口のカットインシュートはここも涌井にキャッチされるも、続く川崎F U-18のターン。

「前半から相手にボールを持たれる時間が長い展開の中で、選手たちはしっかり粘り強くハードワークしながら、我慢強く戦ってくれました」と森田浩史監督も話した大宮U18は、キャプテンのDF小澤晴樹(3年)やMF阿部来誠(3年)といった主力を欠く中、なかなか手数を繰り出せなかったが、41分には千載一遇の先制機。DF浅井一彦(2年)を起点に、高橋がスルーパス。フリーで抜け出したFW前澤拓城(3年)が打ち切ったシュートは、しかし枠の左へ。最初の45分間は0-0で推移した。

 後半も先に決定的なチャンスを迎えたのはホームチーム。11分。右サイドへ展開したボールを、高橋は丁寧にピンポイントクロス。ファーに飛び込んだ前澤が合わせたヘディングは、惜しくもゴール左へ。「私たちのサッカーをやる以上、切り替えのところやカウンターのリスクというところはある中で、何度も危ない場面があったので、大宮さんもさすがだなと思いました」とは川崎F U-18の長橋康弘監督。だが、ゴールには至らない。

 すると、今度はアウェイチームに先制のチャンスが訪れる。14分。左サイドをドリブルで運んだ尾川がペナルティエリア内でマーカーともつれて転倒すると、主審はPKというジャッジを下す。キッカーは前半からゴールへの意欲が際立っていた川口。「PKになった瞬間に自分が蹴ろうと思いました」というレフティは、短い助走からきっちりとゴールネットへボールを送り届ける。破れた均衡。川崎F U-18が1点のリードを手にする。

 先制から1分後の16分。川崎F U-18は大関の狙いすましたスルーパスが通り、巧みなアングルから抜け出した川口が、利き足とは逆の右足でフィニッシュ。ボールは右ポストに跳ね返り、“連続得点”を逃した先制点のスコアラーも頭を抱えたが、打ち出す2点目への意欲が何ともフロンターレらしい。

 1点を追い掛ける大宮U18は、22分にU-16日本代表候補FW磯崎麻玖(1年)を投入し、「前に入れて、そこで前線の選手のコンビネーションで打開したり、上手くセカンドを拾って、という狙いで、手数を掛けないシンプルな速い攻撃がメインになったかなと思います」と森田監督の意図した戦い方にシフトするも、GK濱崎知康(2年)に右から江原、DF信澤孝亮(3年)、松長根、DF元木湊大(2年)で組んだ4バックも安定した守備を続け、チャンスの芽を1つずつ摘んでいく。

 45分に大宮U18はFKのチャンスを得るも、MF種田陽(2年)が直接狙ったキックの軌道はゴールの上へと消え、万事休す。ファイナルスコアは1-0。「素直に嬉しいです。選手たちも初めての挑戦ということで、強度の高さやレベルの高さを想定しながら準備をしてきました。その中で大切なのは、やはり勝つということで、その結果で選手たちも乗っていけると考えているので、勝ったということは素晴らしい結果だと思います」と長橋監督も安堵の表情を浮かべた川崎F U-18が、プレミア初陣での勝ち点3という最高の果実を、アウェイの地でもぎ取ってみせた。

「プレミアの最初の試合というところで、チーム全体としてどれぐらい通用するのかが凄く楽しみだったんですけど、自分たちのサッカーが結構できたなという手応えはありますし、個人としても自分のプレーは見せられたかなと感じています」と語ったのは大関。スコアこそ最少得点差ではあったが、一定のパフォーマンスを披露しての勝利に、川崎F U-18の選手たちは揃って手応えを感じていたようだ。

 ただ、普段から選手を見守っている指揮官の言葉は、このチームへの期待と信頼がはっきりと凝縮されている。「まだまだ選手たちはできると、私は思っています。アタッキングサードでも、もう1つ前の崩しのところをやらないと、結局『前でボールを持っているけど、あまり怖くないね』というチームになってしまうと思いますので、そのへんにはこだわっていきたいです」。穏やかな口調とは裏腹に、確固たる信念を感じさせる長橋監督の“こだわり”が、彼らのさらなる成長に繋がっていくであろうことは想像に難くない。

 長橋監督が川崎Fに選手として加入したのは1997年であり、現役を引退してアカデミースタッフになったのは2007年。四半世紀近い時間をこのクラブと過ごし、多くの若き才能と向き合ってきたからこそ、このプレミアという舞台で迎えた“1試合目”が持つ意味は誰よりもよく分かっている。

「フロンターレは昔から、『トップで活躍できる選手を育てよう』ということで、ジュニアからユースまでスタッフで協力しながらやってきたんですけれども、やはりユースが一番上のレベルでやらないと、今の現状が分からないということで、『選手を育てながらその舞台まで行こう』という目標で常にやってきました。その結果、去年の選手たちが頑張って、この場所へ連れてきてくれたんですけど、プレミアで戦うことで、ここからどういうふうにフロンターレのサッカーが通用していくのかも分かりますし、逆に改善点も見えると思うので、ここから新しいフロンターレアカデミーの歴史がスタートするという想いですね」。

 クラブとして、アカデミーとして、新たに踏み出した大いなる一歩。川崎フロンターレU-18。好発進。

(取材・文 土屋雅史)

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