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【独占】「無理」の声を努力で覆してきたCBチェイス・アンリがドイツ挑戦。「やっぱりサッカーで返すしか無い」

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高校サッカーの“怪物”CBチェイス・アンリシュツットガルトで新たな挑戦をスタートする。

“怪物”CBは、高校時代のように努力で「無理だ」の声を覆す――。今年3月に尚志高(福島)を卒業したDFチェイス・アンリが、同7月1日からドイツのシュツットガルトへ加入することが決定(当初はU-21チームで活動予定)。04年生まれの18歳は今年、日本代表のトレーニングパートーナーを務め、U-21日本代表へ“飛び級”で選出された逸材CBだ。

 中学1年時から本格的にサッカーを始めたアンリは、才能を見込まれて強豪・尚志へ進学。本人も認める通り、当時は同級生の中でも“下手”でチームに迷惑をかけることも多かったという。中学時代含めて、何度も聞いてきた「(アイツは)無理だ」という言葉。落ち込むことも多かったが、人一倍努力を続けてきたアンリはチームや家族、関係者のサポートもあり、周囲を見返す形で年代別日本代表、高校ナンバー1のCBへ駆け上がった。そして、ブンデスリーガの強豪から評価を獲得。海外挑戦を決断したアンリに、ゲキサカは単独インタビューで高校時代やこれからのことについて聞いた。

―進路をシュツットガルトに決めました。魅力に感じているところを教えて下さい。
「育成が良くて、自分が課題にしているビルドアップについては専門のテクニカルコーチがいて参考になったし、良いなと思いました。1タッチや細かいところを色々と教えてくれました」

―昨年、練習参加した際は、ここに行くかなという感じだった?
「あの時は、マジどうしようとなっていました。まだJリーグか、海外か迷っていました」

―決断したのは?
「いつだ? 選手権あとだったかもしれないです」

―日本人も活躍しているクラブへ行く。
「遠藤航さんや伊藤洋輝さんとかいるし、練習内容もめっちゃ良い。みんな、普通に上手いです。推進力がエグいです。日本人はパスでシンプルにやるじゃないですか。でも、シュツットガルトはDFも身体とかで前に向かう。オレは好きだなと思いました」

―進路をJリーグではなく、海外にしようと思った理由は?
「自分からしたら、日本のプロの選手はみんな上手いです。そこでしっかり出れないと試合勘とかなくなったりするかもしれない。しかも、CBってベテランの選手がやることが多くて、出場機会は簡単に取れないじゃないですか。ちょっと言い訳みたいになってしまうけれど、それに勝たなければいけないとなっちゃうと思うと、さすがに自分、今のままじゃ、日本のパスのスタイルの中では絶対に出れないと思いました。それだったら海外で、セカンドチームもあるし、自分早生まれなのでU-18もあるし、そういうところから試合に出たいので選びました」

―セカンドチーム(ブンデスリーガ4部相当)でも強度が高く、試合で成長できる。
「強度が高いし、前に行くなど自分のプレースタイルに合っているし、そういうところが好きです」

―自分の特長がより活かせる方を選んだ。
「自分もあの(代表のサッカーを経験して、)お陰で上手くなっているんですけれども、このままじゃ、Jリーグじゃフィットしない可能性があるし、日本じゃ自分のプレースタイルが潰れちゃう可能性がある。自分、最近思っているんですけれども、代表とか行くと上手くなっているんですけども、試合とかなると丁寧にやろうとしすぎて逆にミスってそっちに気を遣いすぎて、自分の前に運んでとか、そういうのができなくなってきた。Jリーグにも同じようなスタイルでやれている人もいる。でも、今の自分のままじゃ……。それだったら試合出ないよりは、ユースでも、セカンドチームでも試合に出ながら成長した方が良いんじゃないかと思いました」

―シンプルにパスを繋げる力も大事。
「大事なんですけれども、自分のやりたいサッカーもある。Jリーグでやった方が良いよとコメントも来ると思うんですけれども、自分も早く世界で活躍したいですし、(決断は)難しかったです」

―家族と離れる。
「寂しいですね。これからどんどん一人でやらないといけないし、頑張らないとキツイです」

―家族は何と言っていた?
「家族は『カマして来い!』と。でも、いつも『寂しい』って言っています」

―日本を離れるが。
「生活的にちょっと寂しいのはあるんですけれども、こういうこともやっていかないといけない。早くあっちでサッカーやらないといけないですし、寂しさに慣れないといけないですね」

―世界一のCBになるためにドイツのシュツットガルトを選んだ。まず、この1年の目標は?
「最初はセカンドということで本当に努力します。代表活動とかを挟んで、夏までに(セカンドチームで)試合に出れると思うんですけどね。死ぬ気でやります」

―サッカーに、懸ける。
「もう一回、自チームで頑張らないと。ガチで頑張らないとヤバいです」

―クラブの人たちの印象は?
「全然フレンドリーでした。英語で話しかけてくれましたし、本当に色々と教えてくれますね。普通にフレンドリーです」

―年代別代表のようにイジられたりはする?
「あっち行ったら全然イジられないです。あっち行ったらオレみたいな見た目の人いっぱいいるし(微笑)」

―チームメートとは仲良くなれた?
「仲良くなれました。今は連絡取っていないですけどね」

―シュツットガルトの街の印象は?
「(練習場から)街も結構近かったし、色々な人がいて、夜に街歩いて行った時も(他の街に比べて)騒ぎもなくて、シンプルでした」

―食事はどうだった?
「シュツットガルトの寮の下にレストランがあって、そこで選手は食っていたりしたので一緒に食ったりしていました。ドイツの食事も好きなんですけれどね、パンとか朝から食べて。ただ、ご飯がないのが辛いです。でも、全然美味いです」

―ドイツの選手は身体つきが違う?
「自分なんて、普通です。みんなデカイ。全然ヤバいです。全然足りないです。足とかヤバいです。足の筋肉だったり、身体も分厚かったり、体幹も凄いですし、身体がしっかりしています」

―アンリ君が細いくらい?
「細いです。めっちゃ細いです。ガチで細いです。細い人もいるけれど、それでも筋肉がしっかりついている感じです」

―そのような身体にならないといけない。
「これから、もっと飯食わないといけないなと思いました」

―今、体重は?
「81kgです。今の体重も好きなんですけれども、85kgくらい必要。でも、増やすとできなくなりそうなので、とりあえず今のままで行こうと。(その中で)筋肉つけたり、足をデカくしたいです」

―海外でのプレーも想定して体幹トレーニングを重ねてきた。
「今はひざに痛みがあって、身体の連動性です。とりあえず体幹をするのではなくて、しっかり筋肉を使っているかどうかみたいなトレーニングをしています。筋力とウェートというよりは今、身体が痛くならないような動きや、もうちょい速くなるようなトレーニングですね」

―効果を感じる?
「最近痛みがなくなってきた。でも、色々な人からメニューをもらってしまったので、その組み合わせが多くてキツイです(笑)。絶対に被っているので、まとめて欲しいです(笑)」

―年代別代表チームでJリーガーの成長も感じた。
「(松木)玖生とか本当に凄いです。エグいです、あれは」

―彼はずっとトップチームでやってきた。
「今は差がデカイですね。自分はまだ高校サッカーって感じで早く上でやりたいし、早くやらないと自分も成長しないと思う。早くプロのスピードに慣れないといけない。早くやりたいですね」

―早く海外に行きたい。
「代表でもやりたいですけれども、今、U-21みんなプロでやっているじゃないですか。代表のやっているパスとかに本当に慣れていて、自分慣れていなくて本当に気を遣っているし、だからプロで慣れて帰って来たいですね」

―昨年、欧州へ練習参加して感じたことは?
「対人とかそういう部分は全然大丈夫でしたし、判断もあの時は結構良かった。AZ行った時は、ビルドアップしている時に前に運んだりしていて、あまり速くSBに出さないし、ルールがあったんですよ。SBに出さずに剥がして前に出ていくみたいな、そういう感じが好きでしたね」

―それはアンリ君にとっても好きなスタイル。
「怖かったんですよ。相手アヤックスでしたし。でも、そっちの方がオレは好きです。相手が来ていたらワンツーでそのまま上がれるし、オレ、そういうのが好きでしたね」

―球際でも負けなかった。やれるという手応えがある。
「その時は負けなかったですけれども、分からないですね。あの時は上手く行き過ぎてビックリしました」

―課題はまだまだある。
「今、課題しか見えないです」

―なかなか自分を出せていない。チームから求められることをやる上で、もっと自分の良さを出しても。
「やりつつ簡単にやる。でも、最近それができなくて。プレス速いし。デンソー(カップチャレンジ)でもめっちゃ速いなと感じたし、大学生でも。最近できないんです。最近、そのことばかり考えている」

―それを乗り越えればまた成長できる。
「これは良くないけれど、今は一回代表行って、尚志戻って(自主練だけして)強度が下がって、また代表に行って。2週間で強度が下がっちゃうじゃないですか。(日常のレベルを)一定にしたいです。代表と尚志では違うので、高いレベルでやりたい。マジで頑張らないとヤバい。代表で自分出せたら良いな。最近、出せないんですよね。最近、怖くなってきた」

―注目されすぎて、下手なプレーができないことがプレッシャーに。
「そうなんですよ。カメラも多いし。気にしないようにしているんですけれども、言われすぎて、下手と……」

―気にせずにやれるかどうか。
「丁寧にやろうとしちゃう。それで、逆にミスっちゃう。マジで思い切りがない。最近悔いしか残らない。練習試合の後とか……」

―それではアンリ君も成長できない。自分を出して失敗したら、またチャンスが来るまで頑張れば。
「一回、森保さんに言われたんですよ。『オレはオマエの良さを知っていて、前に行くことが好きで。もっと前行けば良い』と。良さ出せば、良いのにな。出せねえ、最近……。最近、出せていない。ヤバいです。最近キツイです。難しいです」

―今年はU-21代表、U-19代表の活動もある。
「精神的に上げていかないといけないですね。今のままじゃ、マジでヤバいと思っています。今もちょっと休んだだけで焦っています」

―結果を出すことで変えたい。
「自分の良さを出せばできるけれど、最近できない。守備は出来るけれど,前行ったりできない。もったいない。ヤバいです。ゴールでも、アシストでも良いからちょっと吹っ切りたい」

―簡単にやること、そしてスペシャルな部分も出す。
「代表のように、簡単にやる力はマジ欲しいです。丁寧にパス繋いで、どこ(のクラブへ)行ってもそういう感じになるし、でも最近難しいです。今の悩みは……自分、今まで上がっていたじゃないですか。でも、代表では丁寧に繋ぐ感じで、オレもそういう感じでやりたいんですよ。しっかりやり過ぎて、それでミスしたら自分で前行った方が良いと思うんですけれども、レベルが上がると前に行ったらFWも強くなって取られちゃうと思うし、どっちが正解なのか、今のところマジで分からないです」

―高いレベルの試合を重ねて自信をつけるしかない。
「どっちもできるようにしたい。今、中途半端なところにいます。両方極めればな。キレイにやりたいし、前にも行きたいし、みんな上手いんですよ。19でもガチで上手いし、難しいです。尊敬しかしていないです」

―注目の中でもブレずにやっている選手もいる。
「玖生とか凄いわ。あんな言われて、自分と同じくらい色々言われているのに結果出して。負けずにやっている。アイツ、エグい。ああいうところ好きだ」

―吉田選手も冨安選手も苦しんで乗り越えている。
「あの人たちの話を聞きたいですね」

―尚志でのサッカーが終わった。
「マジで楽しかったですね。本当に尚志来て良かったです」

―実家を離れて強豪校へ来るのは怖くなかった?
「最初、怖かったですね、入学式でサッカーやった時に、『やべぇ、みんなうめぇ』ってなって、怖かったですね。そうだ、今、オレ尚志の1年生に戻った気分です」

―尚志では3年間で変わることができた。
「やれ、と言われたことをしっかりやっていたら……何回もやらかしていたし、今、そんな感じです。それでも使ってくれたので、ありがたかったですね」

―あの時と一緒。
「でも、今は色々な人に言われ過ぎて苦しいです。だって、あの時(高校1年時)はほぼ無名じゃないですか。今、ミスしていられないと思っています」

―辞めたいなと思ったことも。
「全然ありましたね。高2までは。うぜぇなと。自分でも分かっていたんですけれどね。悔しいな、と思いながらやっていましたね。朝練は行くたびに嫌だったな。ガチで。先輩も怖かったし、(染野)唯月くんとかいて全員怖いし(苦笑)。でも、徐々に1年の選手権までやっていたら言われなくなったし、周りの目も変わってきた。それまでは『辞めてぇ』と思っていました」

―尚志でどんどん上手くなった。
「朝練とかして、どんどん言われなくなって……。(20年2月に)初めて代表行った時も『辞めてぇ』と思いましたよ。みんな上手すぎて。自分は相手に変なパス出したり、やらかしていたし、みんな上手かったし。で、そこからなぜか最後の試合は縦パスとかビルドアップとか、ヘディングも決めて全部できて、良く分からない。みんなストレッチとかしていて自分もするようになって。自信持てるようになったんですよ。『やればできんじゃん』みたいに自信になって」

―活躍できたのはデカかった。
「デカかったですね。(1年時の)国体も始まりだったなと。それで、初めてゲキサカに載った。でも、高1振り返るだけで嫌になるな。色々言われていたな。中学校の時もそうでしたけれどね。みんなにめっちゃ言われて。中3の時、オレも語っていたし、『絶対にプロになるわ』と勝手に。でも、『絶対に無理だから』って直で言われて、『分かったわ』と返して……。今は『ここまで行くとは思わなかったわ』って(苦笑)」

―見返した。
「高3になって段々自信がついてきました。ただ、高3の最初の方はちょっと注目されて嬉しかったですけれども、(5月に)U-20に行ってからちょっとヤバくて。U-18の時は良かったけれど、U-20になってめちゃくちゃ見られるようになって。インハイは全然悪いプレーはしていないと思うんですけれども、『アイツ、上手いよ』と言われたり。でも、インハイ後のU-18のプレーが酷かったし、色々言われて、でもU-20も呼ばれて……なんでオレ選ばれちゃうんだろうと。どんどん注目されるようになって、でも上手くできなくて、尚志でもパスとか狙いすぎて自分のプレーがおかしくなってきて……。フロンターレの四角形のパスあるじゃないですか。それを選手権まで毎朝やって、どんどん変わってきたんですけれども、プレミア参入戦もダメだった」

―選手権の1回戦ではサイドチェンジで会場を沸かせたりもしていた。
「いや、もっと細かくやりたくて、縦パスとか。サイドチェンジとか当たり前にしていて、オレがしたいのは高いボールの処理とか1タッチで回せるとか、1タッチでボランチに回せたりできなくて、オレ『悔しい、悔しい』っていうんですよ。上手くできなくて。その辺ですね。ボランチに1タッチで出して、もらって流れるようにしたい」

―中学時代もなかなか認めてもらえなかった。
「今よりも中3、中2の方がきつかったな。練習とか苦しかった。一番嫌だったのは『絶対に無理だから』と言われて。中3の時、後輩で優しい子もいて、『アンリ、プロなれんじゃない?』と言われて普通に嬉しくて、でも隣の子が『無理だよ』と言って『ウワッ』ってなって」

―当時からプロになろうと思っていた。
「目標あった方が良いと。中2の途中からかな。今思うと、結構思っていたかもしれないです。『プロになりたいな』とノリみたいな」

―本格的にサッカーを始めたのは中学1年から。
「アメリカでサッカーとかバスケとか色々やっていて。アメリカでワールドカップをテレビで見て、初めてメッシ知って、中1の夏に日本に来て、1か月くらいしてから(横須賀市立)長沢中学校のサッカー部に入りました。あの時、バカみたいにドリブルばかりしていましたね。中1でFW。で、逃げたんですよFWから。下手すぎて。守ろうって。でも、中学校の時、顧問にも言ったんですよ、電話とかで『プロになりたい』って。そこからトレセンとか入って、オレの中学校の先生、凄い人なんですよ。藤井先生って今、県選抜の監督とかしている。あの人のお陰。練習めっちゃ怒られていましたね。鳥かごでフリックとかしていたら、『そんなんじゃプロになれねぇよ』って。自分、中2から(プロなんて)『無理、無理』って言われていたんですよ。でも、自分で言うのもなんなんですけれども、多分上手くなっていて、中3の最後言われなくなった。尚志がベスト4行ったんで、『オマエ、めっちゃ強いところに行くやん』って言われて、変わるもんだなと」

―上手くなっていることに周りも気づいていた。
「高1の時も(新谷)一真かな、オレ何回も強引なプレーとかしていて、でも、一真めっちゃ上手くて1年でトップに上がって、一人だけ違うなと思っていました。でも、アイツに言われたんですよ、『オマエ、絶対に化けるやん』って。卒業式で『予想通りやん』って言われました」

―努力でみんなから認められるようになった。尚志の卒業式では色々なエールをもらった。
「卒業式でみんなオレに長文とか書いてくれて。『高1の時にオマエ何回もやらかしていて、オマエ何やっているんだと思っていたけれど、結局オマエは努力してここまで来たし』、とか言われて嬉しいなと。やっぱりサッカーで返すしか無いですね」

―ドイツで、『アイツ上手くなったね』と言われるように。
「今、尚志の1年生の時みたいです。やるしかないです。マジでやるしかないです」

―ヤングサッカーフェスティバルでのプレーを見て、静岡選抜を見に来ていた人たちが「アンリ!アンリ!」って言っていた。見る人を感動させている。
「力になりまね。ずっと悩んでいたんですけれども、そういう感じで言ってもらえて、あのお陰でアシストできたんじゃないかと。あのお陰で力になりました」

―シュツットガルトからステップアップを目指していく。
「最終的にプレミアでやりたいですね。肉弾戦が好きなので、面白そうだなと思います」

―イングランドはタックル一発で決まる勝負も。
「一発ですし、凄いし、一発で決めるのであれは面白いなと」

―数的不利でもCBが止めれば良い、という世界。
「止めれば、良い。ファン・ダイクとかマジでエグいです。展開も速いし、一歩一歩進んで行きたいです」

―これからが楽しみ。
「楽しみですね。早くやりたいです。早く練習したいですね」

(取材・文 吉田太郎)
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