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憧れの飯島陸も背負った10番の後継者。前橋育英FW高足善は「試合を見て何かを感じてもらえる選手」に

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前橋育英高の新10番、FW高足善

 小柄な身体に搭載されたエンジンは駆動力抜群。あふれるゴールへの意欲と、前へと進み続けるアグレッシブさは、タイガー軍団の切り込み隊長としてとにかく頼もしい。

「自分はコーチの櫻井(勉)さんからも『試合を見て何かを感じてもらえる選手になれ』と言われているので、大きい選手に立ち向かっていって、負けてもまたどんどんチャレンジして、転んでもまたすぐ立ち上がっていくようなイメージを持って、小さい子供たちに『自分のように小さくてもできるんだぞ』ということは見せたいと思っています」。

 その鋭利で俊敏な動きに、ディフェンダーたちは要注意。プレミアリーグ初挑戦の前橋育英高(群馬)を最前線で牽引するストライカー。FW高足善(3年=FC杉野ジュニアユース出身)のプレーには、多くの人の熱い感情を喚起するパッションが詰まっている。

 2年生だった昨シーズンは、いろいろな起伏があった1年だった。「夏頃まではプリンスとかインターハイでもずっと先発で出られたんですけど、そのあとからだんだん途中から交代で出場するような感じになったので、先発出場できなくて悔しい想いもありました。ただ、『後半からでもいいからアピールしよう』とやっていた中で、選手権でも途中出場でゲームの流れを変えられたり、今年に生かせる部分も改善点も見つかって、濃い1年だったなと思います」。

 高足が一際輝いたのは選手権3回戦の鹿島学園高(茨城)戦。前半終了間際に緊急出場すると、後半に先制点をヘディングで記録。一時は追い付かれたものの、後半39分に劇的な決勝ゴールを叩き込み、チームの勝利に大きく貢献してみせる。

「大竹(駿)さんから本当に良いボールが来て、自分は触る形だったんですけど、自信は付きましたし、今後の自分にとっても大きな影響のある試合でした。今でもたまに得点シーンとか見てますね(笑)」。全国の舞台で手にした確かな結果は、今シーズンに向けての大きな手応えとして、自身の中に蓄えている。

 選手権後にはU-17高校選抜候補合宿に参加。同世代のライバルたちと、同じグラウンドで切磋琢磨する機会を得た。「1人1人の個が高かったですし、初めてのところだったので、なかなか自分はアピールできなくて、裏に抜けてもパスがもらえなかったりと、難しさも感じました。ただ、選手権でも通用した予測の部分はできていたので、今後はそこをもっと強みにできるようにしていけたらなと思います」。

 中でも同じプレミアの舞台に挑戦する同い年のアタッカーは、強く意識する存在になったようだ。「大津の田原瑠衣と静岡学園の高橋隆大は、自分と同じくらいの身長なのにあれだけできていて、『凄いな』とは感じましたね。田原とは選手権で当たったので『どんな感じだった?』という話もしましたし、2人とポジションは違いますけど、同世代なので『負けなくないな』という想いはあります」。

 前橋育英へと進学してきたのは、ある“先輩”の存在が大きかったという。「きっかけは飯島陸選手(ヴァンフォーレ甲府)です。小柄なのにフォワードで選手権でも凄く活躍していて、『あんなに凄いのはやっぱり指導者が良いのかな』と思って、『自分も行けばああなれるかもしれない』と感じて、前橋育英に決めました」。

「1年生の頃に指導してもらった宮本(允輝)さんからも背後に抜けるシーンの動画をもらったりして、そういうのを見ながら、『相手との駆け引きが上手いな』とか、『どうやったらうまく裏に抜けられるんだろうな』とか、ほとんど飯島陸選手を参考にしています」。プロまで辿り着いた偉大な先輩をイメージしながら、フォワードとしての幅を広げるべく、自分の中でさまざまなトライを繰り返している。

 チームも初めて挑むプレミアリーグ。年代最高峰のステージに、高足も大きな期待と意欲を抱いている。「今年は先輩が上げてくれたプレミアで戦えますし、選手権で自分の中で反省点が出たところをまた試せる舞台なので、頑張っていきたいです。チームとしてもプレミアは良い相手ばかりなので、1試合1試合責任を持って全力で取り組んで、そこでできたことや反省点を練習に持ち込んで、インターハイや選手権で全国制覇できるように頑張っていきたいです」。

 具体的な目標を問われると、ストライカーらしい強気な姿勢も覗かせる。「プレミアで得点王を獲ることは意識してやっています。15点くらいは獲れたらなと思いますし、チームは1位を獲ることを目標にやっています」。

 高校時代の飯島陸と同様に、10番を背負った前橋育英の新エース。高足の圧倒的なパフォーマンスがチームの躍進に必要不可欠であることは、あえて言うまでもない。

(取材・文 土屋雅史)

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