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帝京の注目レフティー。U-19代表候補左SB入江羚介は言語化できるまで理解を深め、改善しながら成長中

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帝京高のU-19日本代表候補左SB入江羚介はこの日の試合からまた改善して次戦に臨む

[4.9 高円宮杯プリンスリーグ関東1部第2節 昌平高 3-0 帝京高 昌平高G]

「4月、5連戦あって結構キツいスケジュールだと思うんですけれども、自分がリーダーシップ持って、しっかり勝ちに持っていけるようなプレーをしていかないといけない責任があると思うし、代表とかに呼ばれているんで、その経験を帝京に還元したり、その意識を常に持って、そのレベルに合わせて行けるような練習をしていきたいと思っています」

 注目DFは自身のミスも絡んで敗れた試合後、目をやや赤く染めたまま決意新たにしていた。帝京高(東京)の左SB入江羚介(3年=FC東京U-15むさし出身)は今年2月、1歳年上のU-19日本代表候補に招集されると、3月の同合宿にも高体連の選手で唯一選出。181cmの長身レフティーは、MF宇野禅斗(町田)やFW千葉寛汰(清水)らJリーガーたちとともにトレーニング、練習試合を行ってきた。

 3日のプリンスリーグ関東開幕戦では三菱養和SCユースに2-0で勝利。その試合同様、この日もまずは前半を無失点で行くことを目指した。だが、前半14分に不運も重なって先制点を奪われると、直後には足を滑らせてバランスを崩した入江が昌平高のFC東京内定MF荒井悠汰(3年)にインターセプトされ、そのままゴールを許してしまう。

 入江は前半、左足パスを高確率で通し続けていた。正確なポジショニングから1タッチでプレスを剥がし、中央への斜めのパスや縦パス。才能の片鱗を示したDFは、ボールを保持して主導権を握る帝京の攻撃の起点になり続けた。後半は自身のミスと失点を取り戻すべくより高い位置で攻撃に係わり、クロスも上げ切っていたが、チームはなかなかシュート本数を増やせないまま無得点で敗戦。入江も決定的な仕事をすることはできなかった。

 この日は、昌平の右SHを務めた荒井と注目マッチアップ。「(入江は)一個上の代表に入っていますし、オレが負けていたらダメなんで自信持ってやりました」という荒井に対し、入江も「(荒井との)マッチアップは楽しみにしていたところがあったので。負ける気はありませんでした」。攻防で幾度かボールを奪うシーンも。だが、結果的に荒井に2点を奪われて悔しい敗戦となった。

 入江は試合後、「不甲斐なかったです」と第一声。高精度のパスを連発したことについても、「1本のミスとか自分は意識しないと。ここで通用していてもプロとか大学とか進んでもいきなり通用しないと思うので、自分に厳しくしていきたいと思います」。後半に仕掛けのパスを奪われたシーンもあった入江はより1本にこだわる考えを口にしていた。

 入江は自分のプレーを見つめ直し、しっかりと言語化できていることが印象的だった。年代別日本代表に招集され続けるようになり、「自分のプレーの考えていることが、結構はっきりしてきて、言葉にできてきている」という。きっかけはサッカーノートで自分のプレーを細かく見つめ直すようになったことだ。

 U-19代表候補合宿で自分のプレーについてアドバイスされた際、「なぜそうなるのか、何でそう動かないといけないのか」をスタッフやチームメートに確認し、中途半端ではなくしっかりと自分の言葉で説明できるまで理解することを心がけている。

「その時のプレーはなぜ上手く行ったのか。ファーストタッチだったり、ポジショニングだったり、もっとポジショニングが高かったり、低かったりしたらどうなるのかなとか、実際に自分が見ているシーンをノートに書いて、その時どう考えるかということを最近するようにしています」

 U-19代表候補合宿ではくさびへのパスなど強みを発揮できた一方、守備対応やポジショニングはより質を上げなければならないと実感。ベースの高いJリーガーたちがグループ、チームでのプレーの質を上げることに集中する中、入江はそれに加え、個のスピード感や判断力をJリーガー同等のレベルへ引き上げることにも取り組んできた。

「まだまだ追いついていないな、ということを凄く痛感しました」というが、多くを得られたことについてはとても前向き。帝京合流後も日常から自分のプレーを書き出して改善と強みのレベルアップに取り組んでいるという。この日、日比威監督はディフェンス面などについて厳しい評価。入江は指摘を受け止め、練習参加したJクラブや年代別代表のレベルを意識しながら成長を目指していく。

 まずは次戦でチームの勝利に貢献することへ集中。「今日は自分のミスもありました。練習から気を引き締めて、次の試合でそれを取り戻したいと思います」。経験を重ねながら力をつけてきていることも確か。一発で局面を変える対角の素晴らしい左足キックや精度高いくさびのパスなど魅力十分のレフティーは、ピッチでこの日からの変化を証明する。

(取材・文 吉田太郎)
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