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静岡学園が開幕2連勝!10人の鳥栖U-18に「悔しい」内容も、より上手くなるきっかけの試合に

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我慢の展開となった静岡学園高だったが、CB森下蒼大(右)やキャプテンのCB行徳瑛中心に無失点勝利

[4.10 高円宮杯プレミアリーグWEST第2節 静岡学園高 2-0 鳥栖U-18 エスプラットフジスパーク]

 昇格組の静岡学園、「悔しい」開幕2連勝――。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 WESTは10日、第2節2日目を行い、昇格組の静岡学園高(静岡)とV候補のサガン鳥栖U-18(佐賀)が激突。静岡学園が2-0で勝ち、開幕2連勝とした。

 初戦で全国高校選手権準優勝の大津高(熊本)を4-0で下した静岡学園は4-2-3-1システム。GKがU-17日本代表の中村圭佑(2年)で、4バックは右SB谷岡拓(3年)、CBが森下蒼大(3年)とキャプテンの行徳瑛(3年)、左SB鈴木新(3年)。U-17日本高校選抜の白井柚希(3年)と保竹駿斗(3年)のダブルボランチ、右SHがU-17日本高校選抜の10番MF高橋隆大(3年)、左SHが寺裏剣(3年)、トップ下が開幕戦2発の西井大翔(3年)、そして1トップを神田奏真(2年)が務めた。

 一方、3-0で快勝した履正社高(大阪)戦に続く連勝を狙う鳥栖U-18は、いずれも2種登録選手としてルヴァンカップに出場しているキャプテンのU-19日本代表候補MF福井太智(3年)、MF坂井駿也(3年)、MF楢原慶輝(3年)の3人が先発。GK栗林颯(3年)、右SB山本楓大(3年)、CB竹内諒太郎(3年)、CB大里皇馬(3年)、U-17日本代表左SB北島郁哉(2年)、福井と坂井のダブルボランチ、右SH堺屋佳介(2年)、左SH増崎康清(2年)、トップ下が楢原、そして最前線で山崎遥稀(1年)が先発出場した。

 前半はやや静かな展開でスタートした。静岡学園がボールを握って押し込もうとするが、鳥栖は隙を見せず、非常に強度高い守備で対応。ボールを奪い返すと素早く、正確にボールを繋いで攻め返す。9分には右サイドでボールを奪うと、福井がPA左へ対角の1タッチスルーパス。走り込んだ増崎が左足でゴールを狙う。

 静岡学園も行徳のサイドチェンジから高橋が切れ込もうとし、また保竹の切り返しからの縦パス、白井の右足ミドルなどで揺さぶりを掛ける。その中で左サイドが攻めどころに。強力ドリブラー、寺裏の突破が鳥栖U-18DFを苦しめ、中学時代からチームメートの鈴木とのコンビネーションも交えてゴールへ迫る。43分には相手クロスをファーで拾った鈴木がプレスを剥がして前進。そして寺裏の仕掛けから、PAまでスプリントした鈴木が決定的な左足シュートを打ち込んだ。

 ただし、前半の静岡学園は相手の強度高い守備の前にバックパスが増え、攻撃の起点が低くなってしまう。横への揺さぶりも少なく、ボランチが良い形で前を向くことができない。一方の鳥栖U-18も個々の技術力高い静岡学園からボールを奪い切ることに苦慮していた。また、グループでしつこく守る静岡学園の前になかなか良い形の攻撃を増やせない。

 その中で、この日存在感のあった左SB北島が素晴らしいスプリントからクロスを上げ切っていたほか、プロ契約している10番MF福井が違いを示す動き。そして、楢原が巧みにボールを引き出し、サイド攻撃へ持ち込んだ。前半43分には背番号11のCB大里の右ロングスローをニアの竹内がそらすが、静岡学園GK中村が好反応でクリア。スコアは動かず、0-0で前半を終えた。

 拮抗した展開のゲームは、後半開始直後の1プレーで静岡学園へ傾いた。バックパスを受けた静岡学園GK中村が相手PAへロングキック。強引に前へ潜り込んだ神田が竹内のファウルを誘い、PKを獲得する。鳥栖U-18は守りの要である竹内が決定機阻止の判定で一発退場。そして3分後の後半5分、静岡学園はキッカーに志願したFW神田が右足PKをゴール右へ流し込み、1-0とした。

 40分を残して10人での戦いを強いられた鳥栖U-18だが、ここから強さを見せつける。ボランチの坂井が1人でCBとアンカーの役割。相手の速攻を潰したかと思えば、コンビネーションから前進して相手を押し込む。そして、左の北島、右の楢原からのクロスが次々とゴール前に入った。

 数的優位に立った静岡学園だが、逆にペースを握られる展開。行徳は「一人少ない状況でも相手は運動量を増やして前から来るという中で、静学らしさで剥がしたり、前へ運んで数的優位で押し込む場面を作りたかった」と悔しがる。

 それでも、静岡学園は白井、保竹のダブルボランチがポジショニング良くボールを奪ったほか、好カバーリングを連発していた森下と、競り合い、空中戦で身体を張り続ける行徳、そしてゴール前で存在感放つGK中村が相手の前に立ちはだかる。

 鳥栖U-18は後半12分に山崎をFW木戸晴之輔(3年)へチェンジ。23分には福井のスルーパスから北島が左足シュートを狙うが、静岡学園GK中村が左手に当て、ゴールへ向かったボールを行徳がギリギリでクリアする。

 鳥栖U-18は26分にも楢原の絶妙クロスから堺屋がGKと交錯しながらもシュート。だが、この一撃もゴールマウスを叩き、同点に追いつくことができない。静岡学園はともに守備のキーマンである白井と森下がタフなゲームで途中交代。MF半田祥真(3年)とCB早川龍弥(3年)と投入したが、我慢の時間が続いた。

 鳥栖U-18は1人少ないことを感じさせないようなパフォーマンス。田中智宗監督は「10人になってもチャンスを作っていましたし、10人になってもあれだけやれるんだと見せてくれた選手たちは本当に感謝したいですね」と頷く。

 ただし、決定機を活かすことができなかった。29分に堺屋が抜け出すが、ループシュートは枠上。39分にも坂井の右FKを北島が頭で合わせたものの、決め切ることができない。一方の静岡学園はなかなかボールを落ち着かせることができなかった。それでも、行徳や谷岡、また交代出場組含めて身体を張った守備を継続。そして、相手の運動量が低下した終盤に自慢のテクニックでチャンスを生み出す。

 50分、敵陣でインターセプトした保竹が個で持ち込み、左足シュート。これは鳥栖U-18GK栗林の好守に阻まれたものの、直後の51分、右サイドからドリブルで仕掛けた高橋がPAまで運んで左横の寺裏へパスを送る。これを受けた寺裏がDFのマークを外して右足シュート。ニアへの強いシュートをねじ込み、勝負に決着をつけた。苦しい時間帯が続く中、高橋や寺裏のキープ力が効果を発揮。貴重な追加点ももたらした。鳥栖U-18は42分のFW赤崎陵治郎(2年)投入に続き、2失点目後にFW鬼木健太(3年)を送り込んだ。だが、実らずに試合終了を迎えた。

 2-0で勝った静岡学園だが、川口修監督は「全然何もできなかった。悔しすぎる」と厳しい。10人となってからギアを上げた鳥栖U-18の強度、技術力の前に後半は、ボールを保持して個とグループで相手を崩す“静学スタイル”をほとんど出せなかったからだ。

 ただし、「一つ収穫としたら、この強度を知れたのが良かった。これは練習の質が上がる。(これまでの)練習の基準低いよね、と言える」と指揮官は前向きだった。サニックス杯決勝で昨年のプレミアWEST王者・広島ユースを6-1で破っている鳥栖U-18は、今年のユース年代でトップクラスの実力。その強度の中でもテクニック、インテリジェンスを発揮できるようになるために、日常を変えることが新たな目標となった。

 選手にも満足感はない。寺裏は「鳥栖めちゃくちゃ強かったので、満足していないですし、内容では負けていると思っているんで、もうちょい自分の良さを出して後期は圧倒して勝ちたいです」と語り、行徳も「課題ばっかりだったと思うので、次節へ向けて調整して、課題を改善して、どんどんチームが良くなるような練習、取り組みをしたいと思っています」。昨年はインターハイ準決勝で青森山田高(青森)に0-4で敗れ、そこから基準を上げてプレミア昇格や、選手権8強に繋げた。今年は4月の段階で全国トップレベルの強度を公式戦で体感。プレミアリーグにいるからこそできる強化を続け、22年度の静学はより上手くて強い個、チームになる。

(取材・文 吉田太郎)
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