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前橋育英が悲願のプレミア初挑戦で実力証明中。存在感放つMF徳永涼「責任のないプレーはできない」

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前橋育英高MF徳永涼主将が相手の前に身体を入れてボールを奪う

[4.17 高円宮杯プレミアリーグEAST第3節 FC東京U-18 4-3 前橋育英高 東京ガス武蔵野苑多目的グランド]

 5度目のプレーオフ挑戦でついに掴み取ったプレミアリーグで戦う権利。選手権優勝世代をはじめ、数々の先輩たちが立ちたくても立てなかった舞台で“ルーキー”の前橋育英高が、堂々の戦いを見せている。

 柏U-18との第1節は延期に。一週間後に迎えた“開幕戦”で14年からプレミアリーグで戦う名門・市立船橋高を5-1で下して歴史的な初白星をマークした。そして、この日は17年にプレミア王者にも輝いているFC東京U-18とのアウェーゲーム。前橋育英は前半2分にMF小池直矢(3年)のヘディング弾で先制すると、すでにトップチームデビューしているCB東廉太(3年)やFW熊田直紀(3年)擁する強敵と渡り合って見せた。

 得点後はボールを保持される時間が増えていたが、ラストパスを出される前に奪い返しに成功。特に失わない力を見せていたMF徳永涼主将(3年)や左SB山内恭輔(3年)を筆頭に各選手が落ち着いて、素早く正確にボールを繋ぎ、小柄なMF大久保帆人(3年)やFW高足善(3年)、小池の仕掛けを交えて攻め切っていた。

 前半33分に追いつかれたが、同45分に高足が得点感覚の高さを見せつけるゴールを決めて2-1。この日ハットトリックのFC東京U-18FW熊田も前橋育英に対して「上手かったです、個人個人が」と印象を抱いたという。

 後半立ち上がりの連続失点はいずれも防げたもの。プレミアリーグで戦うチームの決定力の高さを目の当たりにすることになったが、そこからまた攻め返し、26分に見事なサイド攻撃から小池がこの日2点目のゴールを挙げた。

 交代出場で試合に上手く入れなかった選手もいて、終盤に細かなミス。45+1分のPKによって3-4で敗れた。徳永は「日々の練習の強度だったり、サブ含めたチームの作り方をもうちょっと見直さなければいけない試合だったかなと思います。失点の4点はさすがに多い」と指摘。また、山田耕介監督はセットプレーからの得点の必要性に加え、「攻撃も、守備も、もう1ステップしなければいけない」と求めていた。

 だが、初めてのプレミアリーグ参戦で周囲の予想を上回るような戦いを見せていることも確かだ。真っ向勝負で前橋育英らしいテンポの速いビルドップ、連動した崩しを披露。守備も深く相手に寄せてボールを奪い取っている。選手たちはこのステージで挑戦するために戦ってくれた先輩たちへの感謝、責任感も持って戦っているようだ。

 徳永は「自分たちがこういうピッチで責任のないプレーはできないってみんなが共通で思っていることなので。歴史の中で与えられたチャンスだということは共通認識でやれているのかなと思います」と語る。モチベーションビデオではかつて広島で開催されたプレーオフの映像も。山田監督をはじめとしたスタッフの意図を選手たちは理解し、全力プレーを続けている。

 特に徳永は球際で人一倍戦い、技術力を発揮し、そしてピッチを俯瞰して見ているかのような動きとコーチング。「このレベルだったら自分が何に置いても上回っていかなければいけない」と語っていたが、下級生時から名門のレギュラーとして戦ってきた経験やJクラブの練習参加、U-17高校選抜での活動で得た力を表現している。

「個人の勝負のところで代表のやつに勝ってやろうとは毎回思っている。自分の方が上だと自信を持って言えることなので、それを証明したいという気持ちは大きいです」。これまでよりもレベルの高い対戦相手とのリーグ戦は、各選手の評価を高めるチャンスでもある。この日、徳永は一つ一つ意図のあるプレー。課題とされている得点・アシストに繋がる動きにもチャレンジしていた。

 小池は「(個人として)実際全然できるなって。全然通用するし、チームとしても全然通用するし、まだまだこれから練習からやっていければ1位狙えるチームだと思うので頑張っていきたい」と力を込める。悲願のプレミアリーグ初参戦で実力を証明中のタイガー軍団は、この舞台で戦えることに感謝しながら、また次の試合へ準備。個人、チームで課題を改善し、勝ちながらより強くなる。
 
(取材・文 吉田太郎)
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