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[MOM3809]成立学園MF陣田成琉(3年)_久々のゴールで役割を再確認。ゼブラ軍団の司令塔は結果にこだわる1年を誓う

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成立学園高を結果で牽引するMF陣田成琉

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.23 関東高校大会東京都予選準決勝 國學院久我山高 0-2 成立学園高]

 上手い選手だということは、そのプレーを一目見ればよく分かる。だからこそ、より求められるのはその先の役割。試合を決める、勝利を引き寄せるための、明確な結果を出すこと。もちろん本人もそんなことは、十二分に理解している。

「いつもあまりシュートを打っていなくて、監督からも『もっとゴールを狙え』と言われていたので、そういうことを試合前に意識していて、それが上手く出たので良かったと思います。いつもはアシストが多くて、あまりゴールという結果で貢献することはなかったんですけど、久しぶりにゴールが決められてマジで嬉しかったです」。

 高い技術を生かした攻撃的スタイルを標榜する成立学園高の司令塔。MF陣田成琉(3年=横浜F・マリノスジュニアユース追浜出身)の意識改革、着々と進行中。

 2年生だった昨シーズンからスタメン起用も多く、チームの軸を担ってきた。当時のポジションはボランチが主戦場。丁寧にゲームを組み立てていくプレーが目立っていたが、今シーズンから任されている新たなポジションには、さらなるやりがいを感じているという。

「去年は組み立てることが多かったんですけど、今年は1個前のポジションに出られて、よりゴールに近いところで仕事ができています。中学の時もボランチとトップ下を両方やらせてもらっていた中で、自分はゴールに向かっていくのが好きですし、結構自由にやらせてもらっているので、楽しくできていますね」。いわゆる1トップ下の位置で、ゴールに直結するプレーへの意欲を高めている。

 その意識が大事な一戦で力強く表出する。難敵の國學院久我山高と対峙する、関東大会出場を懸けたセミファイナル。やや劣勢を強いられていた前半13分、左サイドでボールを受けた陣田は躊躇なく自ら仕掛ける選択肢をチョイスし、すかさずゴールを見据えると右足を強振。ブロックに入ったマーカーに当たり、緩やかな軌道を描いたボールはそのままゴールネットへ吸い込まれる。

「ちょっと『入るかな?』と思ったんですけど(笑)、ゴールになって良かったです」と浮かべた笑顔に安堵感も滲む。この陣田の先制点がチームに大きな勢いをもたらし、前半の内に今度は陣田のアシストからMF武田悠吾(3年)が追加点をゲット。後半も攻撃の手を緩めなかった成立学園は2-0で勝利。1ゴール1アシストを記録した7番の働きが際立った。

 一見クールに映るが、秘めた情熱は比較的表に出てくるタイプ。本人にもその自覚はあるらしい。「実は結構短気というか、試合中は熱くなってしまうんです。練習からそういうことは言われているんですけど、それが良い方向に行けばチームも良くなると思うので、自分をコントロールしてチームを良い方向に持っていけるような選手になりたいですね。もっと自分が中心になれるように頑張ります」。アタッカーはそのぐらいの方が頼もしい。

 中学時代は横浜F・マリノスジュニアユース追浜でプレー。ユースへの昇格は見送られたが、それならばと学んできたスタイルを継続して発揮できるチームでのプレーを志し、成立学園の門を叩いた。

「元々パスサッカーをやりたかったんです。高校だと結構蹴ってしまうことも多いと思うんですけど、それでもずっと繋いでいる成立のスタイルを見て、入りたいなと思いましたし、練習会に来た時にもプロになった吉長真優(ジュビロ磐田)くんが本当に上手くて、自分も『そこを目指して頑張りたいな』と思って決めました。ユースに上がった選手以外にも他の高校に行って活躍している仲間もいるので、そういうヤツらには負けたくないですね」。

 このチームではっきりとした結果を出すことが、自分のキャリアを切り拓いていくことも認識済み。その上で掲げる目標であれば、それが高過ぎるということは決してない。「今年は東京の大会を全部獲って、全国で戦えるチームになりたいですし、個人としてはプロに行きたいので、それを目指して頑張ります」。

 17年ぶりとなる冬の全国出場を期す成立学園復権のキーマン。何よりもゴールを一番に考える陣田のパフォーマンスが、ゼブラ軍団の行き先を明るく照らしていく。

(取材・文 土屋雅史)

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