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[MOM3812]桐生一MF岩崎隼星(3年)_プレミアの舞台でAチームのスタメンデビュー。効いているボランチが踏み出した『陰の中心』への第一歩

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Aチームのスタメンデビューとプレミアデビューを同時に飾った桐生一高MF岩崎隼星

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.24 プレミアリーグEAST第4節 桐生一高 0-0 市立船橋高 太田市運動公園陸上競技場]

 指揮官の抜擢に応える形で、Aチームでのスタメンデビューとプレミアリーグのデビューを同時に叶えた男には、90分間を全力で戦い切った今、新たな想いが芽生えてきているようだ。

「自分としては初めてAチームに加わってスタメンでプレーすることができて、ワクワクした気持ちと緊張があって、最初は不安だったんですけど、しっかりゲーム自体には入れたかなという印象でした。でも、ここで満足していたらダメなので、もっとステップアップしたいですし、今日は凄く良い経験になったので、本当にありがたかったですね」。

 プレミア初参戦の桐生一高(群馬)に現れた、努力型の“効いている”ボランチ。MF岩崎隼星(3年=ともぞうSCジュニアユース出身)が披露したこの日の活躍は、チームメートにも大きな刺激を与えたに違いない。

 チームが0-7という大敗を喫した、2週間前の横浜F・マリノスユース(神奈川)戦。ベンチに入ったフィールドプレーヤーの中で唯一出場のなかった岩崎は、「マリノス戦を外から見て、レベルの高さも感じましたし、『自分がスタメンで出られない理由はどこなんだろう?』と、矢印を“他責”ではなくて“自責”にできるように、常に考えてやってきたつもりです」とその心境を明かす。

「『今週の目の色でスタメンを決める』と。『もう上手い下手云々じゃなしに、今週戦ってくれるかなというヤツを出すよ』と」いう中村裕幸監督は、岩崎のスタメン起用を決意することになるが、その雰囲気を感じていた本人の言葉が実に微笑ましい。

「本当に準備が大変でした。チームのみんなには言っていなかったんですけど、試合の2日前ぐらいから授業中もドキドキしていて(笑)、気持ち的にはどう準備すればいいのかという想いを隠して、自分を保とうとやってきました」。日頃から選手を見つめているスタッフ陣が、その緊張に気付かないはずがない。「コーチたちが『いつも通りに』と声を掛けてくれたんです」とは本人だが、指揮官はさらに愛のある“イジリ”で心を解きほぐしに掛かる。

「今日の試合前に『引退試合だぞ』って(笑)。アイツは『もっとこれから出るから大丈夫です!』って返してきました。ハーフタイムにも『あと45分だぞ』と言ったら、『まだまだです』と(笑)。大人の対応ができるヤツなんですよ」(中村監督)。岩崎も「アレでちょっと緊張がほぐれたので、ありがたかったです」と笑顔。2人の信頼関係が透けて見える。

 試合に入ると、決して派手なプレーをするわけではないが、ボールを受けて捌き、相手の狙っているスペースを先回りして埋めれば、ここぞというシーンでは激しいコンタクトも厭わず、丁寧なプレーを重ねていく。結果はスコアレスドローだったが、勝ち点1を獲得したチームの中で、確かな収穫と課題を得た。

「自分としては相手のカウンターの時にカバーに入る場面だったり、1対1の対応ができたなという印象はあります。でも、やっぱりボールを収める力だったり、もっと相手を見てプレーすることで、その中で一番良い選択を常にしていく部分はまだまだ足りないですね。まだまだ守備も甘いですし、セカンドの回収も足りないので、全体的にステップアップできるように頑張りたいです」。

 この試合がプレミアデビューだったにも関わらず、口にした感想が興味深い。「本当にあっという間でした。先輩たちがここまで持ってきてくれて、僕らはやらせてもらっている立場なので、とてもありがたい舞台だなと思いますし、成長できる良い機会でもあるので、最終的には楽しもうという気持ちでプレーしていました」。この男、なかなかの強心臓だ。

 ここからの目標を問うと、力強い答えが返ってくる。「苦しい時でも全員で声を掛け合って、本当に勝ち切れるチームに、全体で勝ちに行けるチームになっていきたいです。個人としては別に目立たなくてもいいので、しっかり陰で支えられるような選手になりたいです。落ち着かせられる部分は落ち着かせて、ボールを回す部分は回せるような、そういう“陰の中心”みたいな選手になっていきたいなと思います」。

 市立船橋戦はあくまでもスタートライン。『陰の中心』への第一歩を逞しく踏み出した岩崎の成長が、このグループのさらなる成長もきっと加速させていく。

(取材・文 土屋雅史)

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