beacon

今年は堅守と勝負強さも示す興國が報徳学園に4-2勝利!無敗守り、プリンス関西1部首位浮上!

このエントリーをはてなブックマークに追加

後半44分、興國高CB常藤奏が4点目のゴール

[4.30 高円宮杯プリンスリーグ関西1部第5節 興國高 4-2 報徳学園高 J-GREEN堺 S3]

 興國が無敗守り、首位浮上――。高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ 2022 関西1部は30日に第5節2日目を行い、2位・興國高(大阪)と昇格組の4位・報徳学園高(兵庫)が対戦。興國がFW小林嘉人(2年)の2ゴールなど4-2で勝ち、首位へ浮上した。

 昨年が4人、一昨年は5人の高卒Jリーガーを輩出している“育成軍団”興國は4-1-4-1システム。GKが山際壮汰(3年)で右SB岡野真拓(3年)、CBはともに注目株の西川楓人(3年)と常藤奏(3年)、左SB古瀬夢叶(2年)。中盤は主将の宇田光史朗(3年)が1ボランチに入り、2シャドーがU-16代表歴を持つ千葉大舞(2年)と平古智也(3年)。右SH早坂優空(3年)、左SHが21年U-16代表候補の10番・宮原勇太(2年)、そして1トップに小林が構えた。

 一方、報徳学園はプリンスリーグ関西1部初参戦ながら開幕戦で京都U-18に勝利。高田秀一監督が「最高の形でスタートできて、自分たちも負けていないという自信になって、日常が変わりました」というチームは、2勝1分1敗と健闘を続けている。4-2-3-1システムを組んだこの日のGKは長村未都(3年)で、4バックは右SB前市岡孝太(3年)、CB村上陽音(3年)、CB山崎純平(3年)、左SB前山康貴(2年)。中盤は瀧田隼人(3年)と花野周磨(3年)のダブルボランチでトップ下が10番のMF松本一輝(3年)。右SH今西悠貴(3年)、左SH稲井想真(3年)、そして1トップを注目の185cmFW坂元一渚璃(3年)が務めた。

 興國が試合開始直後にスコアを動かした。3分、右サイドを突破した早坂がマイナスのラストパス。これを千葉がPA外側から左足で狙うと、ゴール前の小林がコースを変えて先制点を奪った。

 興國はその後も千葉が巧みなポジショニングでボールを引き出し、前を向いて攻撃の起点に。そして、早坂と宮原の仕掛けに繋げる。一方、報徳学園は186cmCB鹿野蓮斗(3年)がけがで不在だったものの、組織的なディフェンスでボールを奪い取り、右サイドで主導権を握っていた今西やDF背後のスペースを活用した攻撃で押し返す。

 そして19分、報徳学園は相手のビルドアップをインターセプトすると、稲井が左中間から持ち上がり、パスを受けた今西が縦へ仕掛けて右足一閃。こぼれ球を坂元が反転しながらの右足シュートで決め、同点に追いついた。

 だが、興國はそのわずか2分後に勝ち越す。中盤中央でボールを持った千葉がDFの寄せよりも一瞬速く左サイドへ展開。縦へ仕掛けた宮原が折り返すと、最後は千葉が左足シュートをねじ込み、2-1とした。

 興國はともにDF能力の高さとビルドアップ力を備えた西川、常藤から正確に繋いで攻撃。個々のキープ力の高さも活かし、押し込む時間を増やす。だが、縦に急ぎ過ぎたり、持ちすぎてロストするシーンが散見。前半24分に左SB田中領真(3年)を投入した報徳学園も興國の切り替え速い守備に苦戦し、サイドへボールが入る回数を減らしていた。

 だが44分、報徳学園は右中間を坂元が抜け出す。興國DFが身体を入れて対応したが、坂元が諦めずにボールをつつき、ゴール前方向へ向かったボールを稲井が右足シュート。一度ゴールマウスに弾かれたものの、自ら跳ね返りを押し込んで2-2とした。

 過去3試合連続で1-0の興國はミスが絡んでの2失点。それでも、この日は奪い返す力を示す。後半3分、右FKのクリアを左中間で拾った千葉が右足ミドル。これをゴール前の小林が頭でコースを変えて3-2とした。三度勝ち越された報徳学園だが、怯まずに前へ出る。8分、今西の右クロスに坂元が飛び込み、11分には右サイドでDF2人をかわした今西の折り返しを瀧田が狙う。

 報徳学園は後半、高田監督が「ポジショニングが天才的」と評する松本がセカンドボールを拾ってチャンスに繋げるなど存在感を増し、山崎の好フィードもアクセントに攻撃。15分、25分、30分と坂元が惜しいシュートを打ち込む。

 興國はこの日、被シュート12本。だが、西川が「今年は後ろが安定していて自信あるのでそこはもっと自信を持ってやっていって、これから絶対に無失点で抑えてチームを支えていきたい」というように、今年の興國は守りに自信を持つ。流れの悪い時間帯が続いたものの、タックル一発でボールを奪うなど堅守を見せ続ける西川や、空中戦で勝ち続けていた常藤、中盤でボールを引っ掛ける宇田を中心に要所を締めて3点目を許さない。

 興國は20分にMF下崎蘭真(3年)、29分にMF上野草汰(3年)とFW山崎帝(3年)を投入。重心をやや後ろに置いて戦ったこともあり、なかなか攻撃のテンポを上げられなかったが、守りを安定させながら時計の針を進める。そして、44分にダメ押しの1点を奪った。古瀬が獲得した左CKを早坂が左足で上げると、常藤が豪快に頭で決めて4-2。この後、MF久松大燿(1年)と右SB門林巧(3年)を投入して試合を締めた興國が無敗(4勝1分)を守った。

 興國の内野監督は「マイボールなのに失点しているという2失点はしんどかったですけれども、4点獲れたことは評価できる」とコメント。今季はFW山本倖栄(3年)、FW端野夏己(3年)、そして山崎の負傷もあり、やや前線の迫力を欠いていた。その一方、指揮官が「スーパー」と絶対的な信頼を置く西川と常藤を中心とした守りで対戦相手との差を創出。この日はミスが絡んで2点を奪われたが、攻撃でカバーして勝ち切った。

 大阪のタレント軍団は今年、プレミア昇格に挑戦する。内野監督は「プレミアにはガチで行きたいと思っている」と語り、西川は「選手権、インターハイに出て優勝狙って行って、チームの目標であるプレミア昇格したい」とコメント。これまでは大事な試合で勝ち切れないことも多かったが、今シーズンは苦しい試合でも堅守と勝負強さで勝ち切ることができている。

 西川は今年のチームについて、「(内野)監督も言ってくれているんですけれども、今年の代は凄く人間性が良くて、みんながチームのためにやれるチームなので、今年は絶対に(プレミアリーグへ)行けると思います」と説明。例年とはまた異なる強みも持つ世代がその武器や全国上位の個の力でライバルたちを上回り、今年、新たな歴史を築く。
 
(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●高円宮杯プリンスリーグ2022特集

TOP