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[MOM3838]前橋育英MF山田皓生(3年)_ここまで無得点の悩めるアタッカーが衝撃の2ゴールで青森山田撃破の立役者に!

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青森山田相手の2ゴールで主役の座をさらった前橋育英高MF山田皓生

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.7 プレミアリーグEAST第6節 前橋育英高 3-2 青森山田高 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 次々と得点を重ねていくチームメイトたちを前に、焦りがなかったと言ったら嘘になる。ノーゴールをイジられるたびに苦笑を浮かべていても、内心はより悔しさを募らせていたことも想像に難くない。だが、そんな日々も今日で終わりだ。だって、こんな大事な試合で2点も奪ってしまったのだから。

「自分だけ前線でゴールが獲れていなくて、前の試合でも自分が決定機を外して、苦しい展開になっていたので、シュートの練習をしてきたんですけど、『気持ちの部分が一番大きいかな』と思って、『ゴールを積極的に狙おう』という気持ちでこの試合に臨んだので、それが良い結果になったかなと思います」。

 三冠王者相手に叩き出した衝撃の2ゴール。前橋育英高(群馬)の謙虚なアタッカー、MF山田皓生(3年=名古屋グランパスU-15出身)が有観客の敷島のピッチで誰よりも眩く輝いた。

 開幕から4試合で3勝1敗と、上々の開幕ダッシュを切った前橋育英。攻撃陣も13ゴールとその破壊力をきっちりと証明してきた中で、なかなか結果に恵まれていなかったのが、右サイドハーフを任されていた山田だった。

「自分がシュートを外して、結構そこからピンチになったりしていましたし、みんなからも『オマエじゃ入らない』みたいに言われていたんです(笑)」とは本人。これ以上、チームメイトの好調に乗り遅れるわけにはいかない。しかも、この日の相手は昨シーズンの高校年代のタイトルを獲り尽くしてきた青森山田だ。「去年の王者ですし、今年も上位にいて、絶対に負けられない相手だと思っていました」という山田の言葉は、間違いなくチームの共通認識。並々ならぬ意欲を携え、キックオフの笛を聞く。

 序盤からホームチームが押し込む時間を作ると、前半17分にスタンドを沸かせる先制点が記録される。MF青柳龍次郎(3年)が斜めに鋭いパスを打ち込むと、FW高足善(3年)も丁寧なパスを相手ディフェンスラインの裏へ。フリーで走り込んだ17番は右足を振り切る。

「『この試合で点を獲ってやろう』という気持ちで臨んだんですけど、善から良いボールが来たので、あとは流し込むだけでした」。ニアサイドを抜けたボールがそのままゴールネットを揺らすと、すぐさまチームメイトが駆け寄ってくる。とうとう生まれたプレミア初ゴール。弾けた笑顔の中心で、山田の安堵にも似た表情が印象的だった。

 これだけでは終わらない。ロングスローから同点に追い付かれ、1-1で迎えた42分。CBを務める齋藤駿(3年)が正確なサイドチェンジを左へ送り、MF大久保帆人(3年)はシンプルに後ろへ。オーバーラップしてきた左SB山内恭輔(3年)が高足とのワンツーで左サイドを切り裂き、グラウンダーのクロスを送り込むと、ニアサイドに潜った山田のシュートが鮮やかにゴールネットへ突き刺さる。

「自分は右サイドにいたんですけど、左サイドで良い崩しができて、サイドバックが抜け出してくれたので、ゴール前の入り方は練習からいろいろな形をやっていますし、キーパーとの間にタイミングよく飛び込めて、あとはゴールへ流し込めた感じです」。圧巻の自身2ゴール目は、完璧なコンビネーションを締め括る貴重な勝ち越し弾。試合も3-2で難敵相手に勝利を収め、悩み深きアタッカーが、大一番で主役の座を鮮やかにさらっていった。

 個性豊かな顔ぶれの揃うタイガー軍団の中で、定位置を掴みつつある現状にも、「自分はフィジカルが強いタイプではないので、しっかり相手を見ながら、間で受けたりしながら、少し違いを作れると思いますし、パスやシュートをもっとたくさんゴールに繋げられるような選手になっていきたいです」と冷静な自己分析も。山田耕介監督も「皓生は飄々とやりますよね」と言及しており、いわゆる“仕事人”の雰囲気も漂わせる。

 中学時代は名古屋グランパスU-15でプレー。プレミアWESTでは当時のチームメイトも躍動しており、「みんなもプレミアの試合にも出ていて、得点を決めたりしているので、そこは自分の刺激にもなっていて、『自分も頑張らないとな』と思っていました。今日は少し結果を残せたので、これからもこれを続けていきたいです」と笑顔を見せる。

 彼らとピッチで“再会”できるのは、プレミアファイナルの舞台のみ。だが、そのことに水を向けても、「まだアイツらともそんな話はしていないですけど、もっと終盤になって上位にいられたら、そういう話もしていきたいなと思います」とあくまで堅実な発言が。ようやく生まれたゴールにも、強豪相手の白星にも、浮かれた様子は微塵もない。

 ゆえに期待してしまう。飄々と、軽やかに、大舞台で躍動していく姿を。2022年の前橋育英を山田がメインキャストとしてより一層牽引していくシナリオは、決して想像できない未来ではない。



(取材・文 土屋雅史)

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