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[プレミアリーグEAST]「学びのサイクル」を進める大宮U18は桐生一に競り勝ち、5試合ぶりの白星をゲット!

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大宮アルディージャU18は3ゴールを奪って5試合ぶりの勝利!

[5.7 プレミアリーグEAST第6節 桐生一高 1-3 大宮U18 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 ただでさえ勝てていない試合が続いていただけに、『またか……』という想いがよぎったことは間違いない。リードを追い付かれて、悔しい引き分けを味わった前節のデジャブのような展開に、一度は下を向きかけたが、この日のオレンジ軍団は、折れなかった。

「前回と違って、追い付かれてから崩れないで突き放すことができたので、そこは評価できますし、良かったかなと思います」(大宮U18・小澤晴樹)「今日も追い付かれたところで、前回みたいに同じ失敗を繰り返さずに、守備陣が頑張ってくれましたし、失点した後の戦い方が凄く良かったので、勝てたんじゃないかなと思います」(大宮U18・高橋輝)。

『学びのサイクル』が呼び込んだ、5試合ぶりの勝ち点3。7日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第6節、桐生一高(群馬)と大宮アルディージャU18(埼玉)が対峙した一戦は、FW高橋輝(3年)の今季初ゴールで先制した大宮U18が、一時は同点弾を許しながらも、DF市原吏音(2年)とDF作本優真(3年)の連続ゴールで力強く勝ち越し、アウェイで白星をもぎ取っている。

「相手が前から来るというのはわかっていて、それでも繋ごうと思えば繋げたんですけど、そこはプレッシャーにビビって蹴ってしまうことが多かったですね」と大宮U18のキャプテンを務めるDF小澤晴樹(3年)が話したように、立ち上がりは有観客のスタンドの空気感もバックに、桐生一の勢いが勝る。前半6分には右サイドをMF岡村葵(3年)がドリブルで運び、最後はFW松島颯汰(2年)のシュートが枠を越えたものの好トライ。右のMF諏訪晃大(3年)、中央のMF藤島優吹(3年)、左のFW島野大和(3年)と3人が並んだ2列目も積極的にボールを引き出し、チャンスを窺う。

 一方の大宮U18は15分に決定機。市原が右へ送った展開から、ボールを持ったMF石渡巧真(3年)は鋭いドリブルで2人をかわし、そのままフィニッシュまで持ち込むと、桐生一GK清水天斗(3年)が懸命に弾いたボールは右ポストに当たり、詰めたMF種田陽(2年)のシュートは桐生一の右SB小泉郁歩(3年)が身体でブロック。惜しいシーンを作り出すも、以降はなかなかスムーズなアタックを繰り出せない。

 前半の最後には、桐生一にセットプレーから訪れた先制機。45+2分に右サイドで獲得したFK。岡村が丁寧に蹴り込んだキックに、ニアへ飛び込んだ松島のヘディングは枠の右へ。「前半は僕の中で、良いところも多くあったんですけど、ラスト10分ぐらいの弱気な姿勢もあった中で、0-0で戻ってきたので、『こんなラッキーなことはないぞ』と言いました」と桐生一を率いる中村裕幸監督が口にした言葉は、おそらく双方に共通した認識。やや動きの少なかった前半はスコアレスで折り返す。

 試合を動かしたのは、プレミア屈指のドリブラーが見せたスペシャルな一撃。後半11分。大宮U18は初スタメンの右SB斉藤秀輝(1年)が前方へフィード。ここに猛然と走った高橋は、フィフティのボールを収めてドリブルスタート。寄せてきたマーカーを切り返しで外しながら、さらに中央へ運んでもう1人も剥がすと、ニアサイドへ丁寧なシュート。軌道はゴールネットへ確実に到達する。「1人目をかわして、2人目をかわした瞬間に、『ああ、これはもらった』と思いました」と笑った高橋は、これが今シーズンのリーグ戦初ゴール。アウェイチームが1点のアドバンテージを握る。

 先制を許した桐生一だったが、「『とにかく負けることは嫌だけど、負けるのが嫌だから出ていかないのは違うでしょ』という感じで後半に送り出しました」という中村監督が切った交代カードが躍動する。21分。後半開始からピッチへ送り出されたMF小野剛史(2年)は、清水からのキックを受けると、完璧なスルーパスを浅いディフェンスラインの背後へグサリ。同じく後半に投入されたMF乾真人(2年)が迎えた1対1は、大宮U18のGK海本慶太朗(3年)がファインセーブを見せるも、後方から飛び込んできた松島が、“3度目の正直”でこぼれ球をゴールへ流し込む。ホームチームの同点弾に拍手の巻き起こるスタンド。1-1。桐生一がスコアを振り出しに引き戻した。

 前節も2点を先行しながら、そこから2失点を喫して引き分けている大宮U18。嫌な空気が流れかけたチームを、2年生ボランチのゴラッソが救う。26分。種田の浮き球パスに、左サイドを走った高橋が丁寧に後方へ。走り込んだ市原はゴールまで25メートル近い距離から右足を強振。地を這う軌道が左スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺さる。

「アレぐらいはやってもらわないと困るかなという選手ですけど、凄く大きな2点目だったと思います」と森田浩史監督も言及した市原のスーパーミドルで勝ち越したアウェイチームは、その4分後にも種田の左CKから、作本がヘディングでプレミア初ゴールを奪って勝負あり。「前節もリードした中で追い付かれて、その後に勝ち越し点を獲れなかったので、今日はそこからもう1回相手を突き放す点が獲れたことは良かったと思います」と指揮官も認めた大宮U18が、3-1でシビアなゲームを制し、第2節以来の勝ち点3を手にする結果となった。

 ケガや体調の問題で、なかなか3年生の主力クラスが開幕から揃わなかった大宮U18。少しずつ彼らが復帰してくる中でも、明確な結果を引き寄せられない状況に、選手たちは危機感を募らせていたという。

「去年に比べて『ちょっと緩いな』というのは感じていたので、まずは練習の雰囲気を改善しようと、自分と副キャプテンの(前澤)拓城で話して、選手たちだけでミーティングをやったんです。そこから横浜FC戦と今日と良い形で得点できましたし、練習から『本当に上手くなりたいのか』という姿勢が変わってきて、そこが結果に繋がってきたのかなと思います」と明かしたのはキャプテンの小澤。一歩ずつではあるものの、チームにも変化が訪れつつあるようだ。

 また、下級生もプレミアの舞台を経験してきたことで、ハッキリと存在感を示し始めてている。CBを任されている真壁拓海(2年)や市原、種田の2年生たちがここまで全試合に出場してチームを引き締めれば、この日は1年生の斉藤が「素晴らしかったです。凄く落ち着いていましたし、90分出れると思っていなかったので、僕もビックリしました」と森田監督も高評価を与えるパフォーマンスを披露。加えて、終盤にはMF勇内山遥海(3年)も右サイドで推進力を発揮しており、ここからのポジション争いが激化していくことは間違いないだろう。

 高いレベルでの実戦経験を重ねることは、勝利を引き寄せるための試合展開をチームで学んでいくことにも、選手個々もシビアな状況の中で、自らのパフォーマンスを出すための方法を学んでいくことにも繋がっていく。大宮U18がプレミアというステージで着々と進めている『学びのサイクル』が、少しずつ自分たちの成長へと反映され始めている。

(取材・文 土屋雅史)

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