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[MOM3841]大宮U18FW高橋輝(3年)_「引き出しの中も綺麗にした」プレミア屈指のドリブラーが1G1Aと躍動!

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大宮アルディージャU18FW高橋輝のドリブルは一見の価値あり

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.7 プレミアリーグEAST第6節 桐生一高 1-3 大宮U18 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 あるいはボールを持った瞬間に、勝負は決まっていたのかもしれない。得意なコース。得意な角度。得意な位置。もう意識しなくても体が勝手に動いていくぐらい、何度も何度も練習を重ねてきた形だ。

「あの角度は自分の得意な角度ですし、あの位置からは何回も決めているので、ディフェンスが2人来て、1人目をかわして、2人目をかわした瞬間に、『ああ、これはもらった』と思いました。今まで溜まっていた分、とにかく喜びが爆発して、凄く嬉しかったです」。

 若きオレンジ軍団が生み出してきた“超絶ドリブラー”の正統な後継者。大宮アルディージャU18(埼玉)のナンバー11、FW高橋輝(3年=大宮アルディージャU15出身)の1ゴール1アシストが、苦しむチームに大きな大きな勝利をもたらした。

「開幕からずっとゴールを決めていなくて、PKになってしまったり、ポストに当たった場面もありましたし、その中で森田(浩史)監督からも、コーチからも、チームメイトからも『今日は決めろよ』『今日は決めてこいよ』とは毎回言われてきました(笑)」。不思議と入らなかった。チャンスは何度も迎えるのに、肝心のゴールだけがなかなか入らない。

「(前澤)拓城も決めているし、(磯崎)麻玖も決めているし、(種田)陽も決めているし、オフェンス陣はみんなゴールを決めていて、自分がフル出場で出ている中で決められていないのは凄く情けなかったですし、『早く自分も決めよう』とずっと思ってやっていました」。前節の横浜FCユース(神奈川)戦もゴールは奪えず、チームは追い付かれてのドロー。ここまで無得点という状況に、とりわけこの1週間は改めて自分を日常から見つめ直してきたという。

「『何か変えなきゃな』と思って、シュート練習にもこだわってやりましたし、あとは普段の生活のところで、月曜日のオフの日に自分の寮の部屋も整理整頓して、引き出しの中も綺麗にして、そういうところからも変えていったんです」。

 引き出しの中も綺麗になって迎えた、この日の桐生一高(群馬)戦。膠着した展開の中で、高橋の才能が一瞬で激しく輝く。後半11分。「右サイドバックの秀輝には、『相手のサイドバックの裏に蹴ってくれ』という話はしていました」と本人も口にした通り、この日が初スタメンだったDF斉藤秀輝(1年)が送ったフィードへ、「たぶん相手の方が反応は早かったと思うんですけど、浮いたボールに怖がらずに」突っ込むと、ボールは目の前にこぼれてくる。

 右45度の角度。飛び込んできたマーカーを鋭い切り返しでかわし、次に寄せてきたマーカーはスピードで外して、中に潜りながら左足でニアサイドへのシュートを選択すると、ボールはゴールネットへ吸い込まれていく。「もうあの形は自分の形で、自信もあったので、思い切っていきました。凄くホッとしましたね」。ベンチへと一目散に走った高橋を中心に、歓喜の輪を作ったチームメイトにも笑顔が弾けた。

 もう一仕事を果たしたのは、同点に追い付かれて迎えた26分。今度は左サイドでMF種田陽(2年)のパスを引き出し、エリア内へ侵入すると、瞬時に前半のシーンを思い出す。「浮き球で抜けた時に左足でボレーシュートを打って、相手に当たってコーナーになった場面があったんですけど、『ここで打っちゃうと同じことになるな』と思って、1回右足で浮かせて、相手の逆を取ったらシュートコースが空いていなかったので、後ろを見たら(石川)洸介と(市原)吏音のダブルボランチがどっちも入ってきていて、『どっちかシュートを打ってくれ』という感じで、優しめにパスを出しました」。

 そのパスを受け、DF市原吏音(2年)が放った25メートルミドルは豪快にゴール左スミへ突き刺さる。高橋は「あれは吏音が凄かったです。吏音の得点です(笑)」と笑ったものの、冷静な判断から繰り出したアシスト。2得点に絡んだ高橋の活躍が、大宮U18に5試合ぶりの勝利をもたらした。

 そのドリブルの威力は、確実にプレミア最高峰のレベルだ。「1試合で何回か絶対にドリブルで何人も相手を剥がしてチャンスを作りたいというのはずっと考えていて、先輩でも(山崎)倫とかシバくん(柴山昌也)とか偉大な先輩が身近にいましたし、トップチームの高田颯也選手のユース時代の映像を見る機会が多くて、あの推進力が凄く好きなので、自分もあそこを目指してやっています。この代のドリブラーと言ったら自分じゃないかということは意識していますし、少しでも違いを作れるように考えています」。高田颯也柴山昌也山崎倫。いずれもトップチームへと昇格したアカデミー出身の先輩たちに匹敵するだけのスペシャリティを、高橋も持ち合わせている。

 アカデミーで迎える最後の1年は勝負の年。掲げる目標も力強い。「世代別代表はチームメイトに何人もいますし、そこには自分も入りたいという気持ちが強いです。あとは大学に行っても、トップに昇格したとしても、しっかりプロで活躍できるような選手になりたいですし、たくさんの人に認められて、人間性の部分でもたくさんの人に愛されるようなサッカー選手を目指しています」。

 圧倒的な輝きを放つオレンジの閃光。高橋は磨き上げてきたそのドリブルで、自らが望む未来へと一直線に突き進んでいく。

(取材・文 土屋雅史)

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