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[プレミアリーグWEST]「練習から100パーセント」が新指揮官の流儀。ゴラッソ3発の磐田U-18がヤマハで快勝!

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ジュビロ磐田U-18は途中出場のMF後藤啓太(17番)が美しい追加点を叩き出す

[5.15 高円宮杯プレミアリーグWEST第7節 磐田U-18 3-1 神戸U-18 ヤマハ]

 開幕から好調を続けるサックスブルーの若駒たちは、ヤマハスタジアムでも躍動感あふれるプレーを披露して、きっちりと勝ち点3を奪い取ってしまう。FW伊藤猛志(3年)が5戦連発となる圧巻の2ゴールを奪えば、途中出場のMF後藤啓介(2年)もゴラッソを叩き込み、その存在を強烈にアピールしてみせる。だが、彼らのゴールについて尋ねられた新人監督の返した言葉が、強く印象に残った。

「ゴールは素晴らしかったですね。ただ、ゴールは決めていなかったですけど、フォワードの舩橋京汰は90分間攻守に渡って献身的にプレーしていたので、そのプレーが勝利に繋がったかなと思います」(磐田U-18・前田遼一監督)。

 成果に現れない評価を下せる指揮官と、成果に現れないかもしれない努力をきちんと積み重ねられる選手たちの融合が、招き始めている新たな化学反応。15日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第7節、ジュビロ磐田U-18(静岡)とヴィッセル神戸U-18(兵庫)が有観客のヤマハスタジアムで激突した一戦は、磐田U-18が3-1で快勝。これで開幕からの5試合で4勝1敗と、上々の開幕ダッシュに成功している。

 衝撃的な一撃は、まさに往年の“ファン・バステン”だった。お互いに攻撃のリズムを探り合いながら、決定的なシュートはないままに迎えた前半21分。磐田U-18は左サイドで、アグレッシブなプレーの目立つMF細石真之介(3年)のパスから、左SB伊藤稜介(2年)がダイレクトでアーリークロスを送り込むと、「稜介と目が合っていて、ボールは来るなと思っていました」という伊藤猛志はファーサイドに潜りながら右足一閃。軌道はゴールネットへ鮮やかに突き刺さる。「気付いたら目の前にボールがあった感じで、意外と緊張せずに蹴るだけでした」と笑ったストライカーのゴラッソ。ホームチームが1点をリードする。

 先制点を奪われた神戸U-18もすぐさま反撃。22分には右サイドを駆け上がったDF本間ジャスティン(2年)のクロスに、ここまで4ゴールとチームトップスコアラーのFW冨永虹七(3年)がボレー。ここは磐田U-18の右SB李京樹(2年)のブロックに遭ったものの、以降はボランチのMF安達秀都(3年)の配球から、右のFW蘓鉄航生(3年)、左のMF今富輝也(1年)と両サイドハーフの推進力を生かしながら同点機を窺うも、前半は1-0のままで45分間が終了した。

 後半は開始早々に磐田U-18へ追加点機が訪れる。1分。伊藤との連携からFW舩橋京汰(2年)がエリア内へ侵入すると、MF鈴木泰都(2年)のシュートは、神戸U-18のキャプテンを託されているDF寺阪尚悟(3年)が懸命のブロックで回避するも、5分にはリーグ初出場となったDF松田和輝(3年)がセンターバックの位置からドリブルを始め、右サイドをぶち抜いてクロス。飛び込んだ伊藤猛志とはわずかに合わなかったが、積極的な姿勢を打ち出し続ける。

 すると、再び場内にどよめきを巻き起こしたのはナンバー9のスーペルゴラッソ。8分。相手のクリアをMF亀谷暁哉(3年)が頭で跳ね返すと、「自分の前にボールが転がってきて、ディフェンスが寄せてきていないことはすぐにわかった」という伊藤猛志は躊躇なく30mミドルにトライ。ドライブ回転の掛かったボールはGKの頭上を破り、ゴールネットへ吸い込まれる。「当てた瞬間に『入ったな』と思った」という一撃には、スタンドからも大きな拍手が。2-0。点差は2点に広がった。

 ショックの小さくない失点を献上した神戸U-18は、それでも食い下がる。11分には横パスをかっさらった今富のスルーパスから、冨永が放ったシュートは磐田U-18のGK森脇真一(3年)の好守に阻まれたが、その1分後の12分に再び決定機。右サイドのロングスローの流れから、本間がクロスを送り込むと、MF永澤海風(3年)と蘓鉄が潰れ、最後は今富が左足でグサリ。2-1。意地の反撃弾。にわかに試合の行方は不透明になっていく。

 その男は、自分に憤っていた。「スタメンじゃなかったことが本当に悔しくて、悔しくて。でも、ここで腐ったり、折れたら、結果も残せないし、次にも繋がらないし、まずは流れが良くなかったので、『自分が入って流れを変えてやろう』と思いました」。28分。磐田U-18の前田監督が切った1枚目のカードは後藤。ベンチスタートの悔しさを、目の前のボールにぶつける覚悟はできていた

 30分。舩橋が左サイドへパスを付けると、後藤はドリブルを開始する。「どんどん中に仕掛けていきながら、『パスを出そうかな』と思ったんですけど、『ここは打たないとな』って」。長いストライドで中央へとグングン運び、エリア外から右足で振り切った軌道は、右のポストを叩いてゴールネットへ弾み込む。「『遼一さん、見たか!』と。メチャメチャ嬉しかったです」。煌めいた才能の爆発。3-1。この1点で勝負あり。

「流れが悪くて苦しい時間帯もありましたけど、選手のみんなが本当に頑張ってくれて、3点とも素晴らしいゴールがあって、勝つことができて本当に良かったなと思います」と指揮官も納得の表情を浮かべた磐田U-18が、今シーズン初開催となったヤマハスタジアムへ詰め掛けた観衆に、勝ち点3を力強く届ける結果となった。

 この日の試合の磐田U-18は、今シーズン初スタメンとなる選手が4人もピッチに送り込まれていた。中でもボランチで圧巻のパフォーマンスを披露したMF中村駿太(2年)は「去年も何試合かスタメンで出してもらっていて、今年は前回のセレッソ戦で途中出場しただけで、悔しい部分もあったんですけど、自分の特徴を生かして、チャンスが来るまで待つことを意識して、練習で120パーセントの力を出すようにしていました」と自身の心境を明かしている。

 前田監督は中村について「先ほどは京汰のことを言いましたけど、あの駿太のプレーがそこに繋がったと言っても過言ではないと思っています。攻守におけるパフォーマンスは本当に素晴らしかったです」と言及しながら、スタメン起用の理由については「先週は試合が空きましたけど、チーム内の紅白戦でも良いプレーをしていたので、練習を見ていて迷わず使おうと思いました」ときっぱり。中村が練習で掴んだであろう手応えと、指揮官が練習を見て下した評価がマッチしたことが、この日の出来に繋がったことは想像に難くない。

 監督として重要だと感じたことについて問われた前田監督は、こう答えている。「これは選手時代から思っていたことで、当たり前のことかもしれないですけど、練習から100パーセントやることが全てかなと感じていますし、それが逆に一番難しいことかなとも思っています。すべての選手にそういう気持ちでプレーさせることが大事なんですよね。今日も新しい選手が先発で出ましたけど、練習で良い選手はどんどん使っていきたいなと思っています」。

 練習を、つまりは日常をどれだけ100パーセントでやり切れるか。柔和な指揮官に一切の妥協なし。磐田U-18はきっと、もっと強くなる。

(取材・文 土屋雅史)

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