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ドリブル止まらず3人抜き、技あり同点弾…履正社MF名願斗哉は圧倒的な動きも、「チームが勝たないと意味がない」

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後半29分、履正社高のエースMF名願斗哉が右足で同点ゴール

[5.15 高円宮杯プレミアリーグWEST第7節 東福岡高 2-1 履正社高 東福岡高G]

「個人として見たら、やっぱり自分は10番も背負わせてもらっているので、レベルの違いを見せないといけないし、でも個人じゃなくてチームが勝たないと意味がないので、チームを勝たせる選手になっていかないといけない」

 名門・東福岡高相手に圧倒的なプレーを見せて1ゴールを決めた一方で、チームは敗戦。試合後、ピッチ上で仰向けになって顔を覆っていたMF名願斗哉(3年=ガンバ大阪ジュニアユース出身)は、履正社高(大阪)を勝たせるプレーヤーになることを誓っていた。

 名願は昨年度の選手権予選やプレミアリーグプレーオフなどで活躍し、今年はU-17日本高校選抜で抜群の突破力を発揮。“次世代のMF三笘薫”とも言える強力ドリブラーだ。緩急自在のドリブルで相手守備網に穴を開ける一方、厳しく寄せられても独特のタッチとしなやかな身のこなし、そして際の強さで振り切ってしまう力もある。

 この日は、前半から積極的にボールを受けて幾度も突破。DF2人に対応されても縦への鋭い動きと切り返し、カットインを織り交ぜて攻略してしまう。前半、東福岡DFは対応できずにファウルで止めるシーンが3度4度と増えていった。

 前半29分には、体ごと止めに来たDFを強引に振り切るなど圧巻の3人抜き。平野直樹監督から「ボール来た時だけ頑張るんじゃなくて引き出すとか。もっとやらないと評価されないよ」と指摘されている10番は、オフ・ザ・ボールのところから精力的に攻撃に係わり、左サイドから中央にも顔を出してドリブル、パスを繰り出していた。

 名願は「前半はちょっと相手もマークが甘かったので、受けたら何とかできたんですけれども、後半に入ってマンツーマン気味に来ていたので受ける回数が少なくなってしまっていた。(それでも、)自分一人でやるんじゃなくて、それ(攻撃を作る部分、打開する部分)は味方に任せて、自分はゴール前で仕事がでれば良いかなと」と振り返る。

 後半もコンビネーションなどからゴールへ迫るシーンがあったが、前半ほど自由にプレーはできなくなっていた。それでも、0-1の後半29分、MF川端元(3年)と呼吸を合わせる形でゴール前へ飛び出し、胸トラップから右足で同点ゴール。鮮やかな一撃で試合を振り出しに戻した。

「クロスが入りそうだったので、それはチームの決まりごととしてしっかりゴール前に入って行こうと話しているので、入って行ったら川端から良いボールが来て、ファーストタッチも上手く良いところに置けたのであとは流し込むだけでした」

 ただし、次の1点を奪うことができなかったことを名願は悔しがる。キープ力を発揮しながら、ラストパスの前のプレーやプレースキックでチャンスメーク。だが、試合を決めることはできず、逆にワンチャンスを決められて1-2で敗れた。

「結果で示せる選手にならないといけないし、攻撃だけじゃなくて守備も最後のシーンもポジション関係なく(自分が危ないと気づいて戻って)、守備でもできるようになっていかないといけない」と引き締めていた。平野監督は特別な攻撃力を伸ばす一方、ボールを受ける動作を増やすことや守備の部分も強く要求。名願もより周囲とのレベルの違いを示すため、チームを勝たせるために、意欲的に取り組んでいる。

 高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグという舞台が将来A代表入りも期待できるような素材をまた成長させている。「高校年代のトップレベルのリーグでできているので、それは自分たちにとってもプラスだし、課題がたくさん見つかる。自分が成長するためにもっと自分のレベルアップにこだわってやっていきたい」。この日は同じく注目タレントの東福岡MF浦十藏(3年)と対戦。「ちょっとあれは速かったです」と驚き、浦からは「(名願は)上手いです。凄かったです」という評価を得ていた。ライバルたちからの刺激も力に、逸材ドリブラーは厳しいリーグ戦でまだまだ成長を続けていく。

(取材・文 吉田太郎)
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