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[プレミアリーグEAST]太陽王子が見せた気合と根性の勝利。FC東京U-18を“本能”で上回った柏U-18が逆転劇完遂!

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柏レイソルU-18はチーム全員の力で逆転勝利を掴む!

[5.21 高円宮杯プレミアリーグEAST第8節 柏U-18 3-2 FC東京U-18 日立柏]

 タイムアップのホイッスルが鳴った瞬間。膝を突いて座り込む選手は、負けたチームより、勝った黄色いユニフォームのチームの方が多かった。1点差の終盤は押し込まれる時間を強いられながらも、まさに全員で粘り強く戦い、掴み取った白星が雨上がりのピッチでキラキラと輝く。

「本気で勝負に立ち向かって、『絶対やらせない』という本能みたいなものが出てくることが大切で、本能を掻き立てられるようなゲームになるのが、選手にとっては一番大事な経験になるので、そういう勝負ができれば本当に成長していけますよね」(柏U-18・酒井直樹監督)。

 泥臭く走り続け、勝ちたいという執念で上回った、“本能”の1勝。21日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第8節、柏レイソルU-18(千葉)とFC東京U-18(東京)が対峙した一戦は、FC東京U-18がFW熊田直紀(3年)のゴールで先制したが、前半のうちにMF大橋斗唯(3年)の同点弾で追い付いた柏U-18が、後半にMF中村拓夢(3年)とMFモハマドファルザン佐名(3年)の得点で逆転に成功。相手の反撃を熊田のPKによる1点に抑え、3-2で3試合ぶりの勝ち点3を手繰り寄せている。

 試合は意外な形で動き出す。前半3分。柏U-18は最終ラインでのビルドアップが少し詰まり、GKタイガ・オリバー・ハーパー(2年)が前方に蹴ったパスはミスに。これに反応した熊田が、無人のゴールへ右足でボールを流し込む。「メンバリングも含めて少しそこにウエイトを置いたスタートだった」と奥原崇監督も話した、前からの守備が呼び込んだ先制点。FC東京U-18が早くも1点をリードする。

 2連敗中のホームチームはいきなりビハインドを負う格好となったが、「コンセプトがああいうところにあるので、いずれはこういうことは起きるだろうと想定していましたし、次に切り替えるだけというところでした」とは酒井直樹監督。「ちょっと『やっちゃったな』というのはあったんですけど、もう終わったことなので、次に切り替えました」というタイガ・オリバー・ハーパーも決して折れることなく、その後もビルドアップに関わっていく中で、その姿勢が得点に結び付く。

 21分。バックパスを受けたタイガ・オリバー・ハーパーは、ダイレクトで完璧なパスを左サイドの中村へピタリ。これを起点に高い位置までボールを運び、中村のパスをキャプテンのDF西村龍留(3年)はダイレクトでクロス。ファーで待っていたFW近野伸大(2年)が折り返すと、ニアに突っ込んだMF大橋斗唯(3年)のヘディングがゴールネットをきっちり揺らす。「コーチからもクロスに飛び込んで決めろと言われていたので、その通りになってとても嬉しいです」という大橋は、これがプレミア初ゴール。ミスにも屈しない守護神のチャレンジ精神が得点に直結。スコアは振り出しに戻って、最初の45分間は終了した。

 勝ち越し弾は「自分はシュートが下手なので」と笑うナンバー8。後半3分。DF大槻豪(3年)が送ったフィードに、右サイドからFW大木海世(2年)が力強いステップで中央に潜りながらシュート。DFに当たったこぼれ球に反応し、「ゴールを見た時に、空いている所が凄く見えていて、そこに置きに行くだけでした」と振り返る中村が丁寧に蹴り込んだボールは、ゴール右スミへ吸い込まれる。「打った瞬間はもう『入ったな』と思って、喜びに行っちゃいました」という中村の冷静な一撃。柏U-18が逆転に成功する。

 太陽王子の勢いは止まらない。10分にはDF足立凱(3年)の左CKから、大橋のシュートはFC東京U-18のGK小林将天(2年)がファインセーブで弾き出し、大槻が詰めたヘディングは枠を越えたが、その1分後の11分にも再び決定機。MF田村心太郎(2年)のボールカットから、MFモハマドファルザン佐名(3年)が右へ展開。大木が右から折り返したグラウンダークロスを、ファーで中村が懸命に残し、ファルザンのシュートは右スミのゴールネットへ滑り込む。3-1。ホームチームのリードは2点に変わった。

「1点目がああいう形で入ったから、逆に気が緩んで、失点が多くなって」と熊田も振り返ったFC東京U-18も、ここからようやくスイッチが入る。20分にはDF岡崎大智(2年)が蹴った右FKに、熊田が頭で枠へ収めたシュートはタイガ・オリバー・ハーパーがファインセーブで掻き出すも、31分にもMF松本愛己(3年)の左CKから、MF田邊幸大(2年)がペナルティエリア内で倒され、主審はPKを指示。これを熊田が豪快に沈め、アウェイチームが1点差へと迫る。

 終盤は「追い掛ける展開になれば、そういう想いをあれぐらい出してくれるのはベースにしていきたい」と奥原監督も一定の評価を口にした通り、同点弾を狙うFC東京U-18が押し込み続ける。43分にはMF佐藤龍之介(1年)の左FKに、熊田がドンピシャヘッドを枠内へ打ち込むも、「練習から吉川(脩人)コーチがああいうところも練習してくれるので、その成果が出た部分はあります」と笑ったタイガ・オリバー・ハーパーがファインセーブで仁王立ち。直後の右CKから、最後はキャプテンマークを巻くDF土肥幹太(3年)のシュートはゴール左へ。45+2分にも岡崎のパスがエリア内の熊田に届くと、今度は柏U-18のキャプテンを務める西村が、決死のタックルで回避する。

 45+5分。左から松本が送ったクロスがこぼれ、途中出場のMF永野修都(1年)が放ったシュートに、FW吉田綺星(2年)が反応してコースを変えるも、軌道は枠の左へ逸れると、程なくして聞こえた試合終了のホイッスル。「最後の時間帯は我慢の時間が多くて、みんなでハードワークして、みんなで強い気持ちを持って守れたと思います。出ている人も、出ていない人も全員が声を出して、チーム一体となっていたので、凄く良かったです」と大槻も口にした柏U-18が逃げ切りに成功。大きな大きな勝ち点3を獲得した。

 ダメージの残るような先制点の献上から、一気に逆転まで持っていく力強さを発揮しつつ、最後は追い詰められながらも、チーム力で勝ち切った印象のある柏U-18。「追い詰められてしまった時の人って、“そういう部分”が現れますよね。普段ああいう状況があった時に結構パニックになってしまう選手が多いんですけど、今日はそうならずに本能が出たというか、普段はおとなしい子まで『今は守るぞ!』という気持ちが出ていたので、それがレイソルにとって必要なものなんです」とは酒井監督。ややスマートな印象もある彼らが、内側から勝ちたいという闘志を滾らせたことが、この日の結果に繋がったと言っていいだろう。

 また、「酒井さんや永井さん、藤田さんを信じて、自分たちは『絶対にマイボールにする』とか、『1対1は絶対負けない』とか、そういう基本的なことを当たり前にできるように練習しているので、あとは試合で出すだけなんです」と語った大槻や、試合を通してアップエリアから声を出し続け、交代で投入された最終盤にはピッチ上でもチームを鼓舞し続けたFW瀧澤一心(3年)のようなファイターの存在も、このグループをポジティブに引き締めていることは間違いない。

 敵将の奥原監督も「レイソルが4点目のチャンスを外した時に、全力で守備に戻っていく感じとか、あと5分の時のリスタートで、中で掛かっている声を聞いた時には、『かなり追い付くのは難しいだろうな』とは思っていました」と率直な言葉を残している。

 川崎フロンターレU-18(神奈川)に1-5と大敗を喫してから2週間。「前節で負けた分、今日はホームで絶対に勝たなくてはいけない試合なので、みんな目の色を変えて練習をやれました」と大槻も明かした通り、チームの意思統一された準備が引き寄せた逆転劇。彼らが手にした“本能”の1勝は、今年の柏U-18のターニングポイントになり得るような、気合と根性の勝利でもあった。

(取材・文 土屋雅史)

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