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[MOM3848]柏U-18MF中村拓夢(3年)_藤田優人コーチと積み重ねた日々が呼び込んだ、悩めるプレーメーカーのプレミア初ゴール!

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1ゴール1アシストで勝利の立役者となった柏レイソルU-18MF中村拓夢

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.21 高円宮杯プレミアリーグEAST第8節 柏U-18 3-2 FC東京U-18 日立柏人工芝]

 もっとできるはずだと、自分を信じてきた。もっと頑張れるはずだと、自分を鼓舞してきた。ここまでは悔しいことの方が圧倒的に多かったけれど、そんな日々がようやく報われるような一撃が、男の感情を爆発させた。

「打った瞬間はもう『入ったな』と思って、喜びに行っちゃいました(笑)。去年一昨年と自分のプレーに納得のいかない時期が続いていて、去年も最初の2,3節はプレミアでもベンチ入りさせてもらっていたんですけど、なかなかプレーが上手くいかなくなってしまって、県リーグの試合でもあまり結果が残せずに、本当に苦しんでいて……。でも、今日このプレミアリーグで初得点という結果を残すことができて、ずっと待ち望んでいたゴールだったので、凄く嬉しかったです」。

 中盤で明らかな違いを生み出せる、柏レイソルU-18(千葉)のプレーメイカー。MF中村拓夢(3年=柏レイソルU-15出身)が披露した1ゴール1アシストの躍動が、チームの貴重な勝利を力強く引き寄せた。

 いきなりの失点にも、太陽王子は折れなかった。FC東京U-18(東京)をホームに迎えた一戦。開始3分にビルドアップのミスから先制点を献上したものの、21分にはそのビルドアップを貫いた形から、中村を起点にMF大橋斗唯(3年)が同点弾をゲット。1-1で前半を終える。

 そして、その時が訪れたのは後半3分。DF大槻豪(3年)がフィードを送り、この日は再三キレのあるドリブルを繰り出し続けていたFW大木海世(2年)が、ここも右サイドを切り裂いて中央に潜ってくると、放ったシュートのこぼれ球が中村の目の前にこぼれてくる。

「ゴールを見た時に、空いている所が凄く見えていて、そこに置きに行くというか、流し込むだけでした」。丁寧にインサイドキックで打ち込んだシュートは、右スミのゴールネットを正確に貫く。その瞬間。エンブレムを掴みながら、中村はチームメイトが待つピッチサイドへと全速力で駆け出していく。

「最近はシュート練習を酒井さんにしてもらっていて、その中で強くインパクトして振るところとの区別が付けられるようになっていて、今日のアップのシュートも凄く良い感覚を持っていたので、自分の感覚だけを信じて、流し込みました」。その努力を知っている仲間の祝福の輪を抜けると、視界に“あの人”の姿が飛び込んでくる。

「去年ずっと支えてくれて、力になってくれたのが藤田さんで、今こうやって試合に出てやれていることは、藤田さんのおかげでもあるので、本当にそこは感謝の気持ちでいっぱいです。藤田さんは熱さの中に優しさもあって、凄く選手の気持ちにもなってくれるので、尊敬している人です」。出迎えてくれた藤田優人コーチと交わした握手は、1年分の感謝を込めたそれだった。





 これだけでは終わらない。11分。ここも右サイドで大木がボールを持つと、すぐに状況を思考する。「海世が今日は凄く調子が良くて、ドリブルで抜けてくるので、『中に入っていけば何とかなるかな』と思って」左から中央に絞ると、グラウンダーのクロスが入ってくる。

「ちょっとボールは後ろの方に流れてしまったんですけど、ファルザンが見えていたので、滑り込みながらでも当ててそっちに流せればと」倒れ込みながら優しく残した中村のラストパスを、MFモハマドファルザン佐名(3年)が丁寧にプッシュ。この3点目が効いた格好で、チームは3-2と勝利。1ゴール1アシストと結果を残した8番の活躍が、連敗中の苦しいチームに確かな光明をもたらした。

 だが、本人は少しだけ心残りがあったという。「まだまだ自分でも足りないところがあると思っていて、今日は両足が攣ってしまって交代という形だったので、もっと運動量を増やしていかないといけないです」。後半39分に交代を余儀なくされたものの、連続性の高いプレスバックも含めた攻守に献身的なプレーを鑑みれば、ある程度は仕方ないようにも思えるが、さらなる成長欲を口にするあたりも頼もしい。

 ある意味でこの試合はスタートライン。今まで溜めてきたエネルギーを発散する場は、これからも存分に用意されている。「今年の1年はチームとしても個人としても本当に悔いがないようにしたいですし、自分がチャンスメイクの部分だったり、長所のところを生かせれば、チームももっと攻撃的なスタイルになれると思うので、それを目指してやっていきたいです」。

 見え始めてきたブレイクの兆し。でも、きっとまだまだこんなもんじゃない。小柄な身体に詰め込まれた中村のサッカーセンスの煌めきは、きっとまだまだこんなもんじゃない。

(取材・文 土屋雅史)

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