beacon

「自分も負けていない」。鳥栖U-18MF坂井駿也が近づいてきた目標の背中

このエントリーをはてなブックマークに追加

サガン鳥栖U-18の“心臓”MF坂井駿也

 サガン鳥栖U-18は現在、“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグWESTで暫定首位に立っている。今年は攻守に力のある選手が多い注目世代。1年時から先発を務めるMF坂井駿也(3年=ソレッソ熊本出身)は年代別日本代表の常連で、今年2月のルヴァンカップでトップチームデビューも果たしている注目プレーヤーだ。サッカーIQが非常に高く、コーチングや切り替えの速い守備などで違いを生み出すMFに、スパイク選びやピッチ内外で意識していること、今後の目標などについて聞いた。

―トレーニングで履いていたスパイクは?
「今はFG履いているんですけれども、普段は同じスパイクのFG、HGを履いています。人工芝グラウンドは滑ったりすることがあるので、FGを使うこともあるんですけれども、基本はHG、AGを履いています」

―『X』を履き始めた理由は?
「代表などでアディダスを履く機会があって、『X』を選ばせてもらって、そこからずっと履き続けています」

―普段、スパイク選びでこだわりはある?
「自分がこのスパイクを選んだ時も足にフィットするというのが一番の理由でした。フィットするかつ、蹴りやすいという理由で自分は選びました」

―フィットする、しないでどのくらいプレーに幅が出る?
「フィットする分、ステップワークや踏ん張るところでしっかりと止まることができます。それがあると、プレーに支障が出ない。スパイクの良い選び方が出来ていると思います」

―特にボランチのポジションだと、ストップアンドゴーの回数も多くなる。
「ボランチは今おっしゃって頂いた通り、細かい動きが多いので、自分がそこで滑ったりしてしまうとカウンターや失点に繋がってしまう。そのことも『X』を選んでいる理由です」

―スパイクにより求めていきたいことはありますか?
「これは素晴らしいスパイクなので。敢えて求めるならば、もうちょっとポイントのところでFGスパイクぽいものがあれば、より良いかなと思います」

―ここまでプレミアリーグWEST首位と素晴らしい結果を残せている印象ですが、評価は?
「本当に今年は力がある方だと思いますし、一人ひとりの個の力もある。今年からトップチームと戦い方が似ていて、ベースやリアクション、取られた後の切り替えというところをユースもトップ同様に重視しているので、本当にそこのリアクションというところだけでも他のクラブと比べてダントツで出来ているのかなと感じています」

―他のクラブと差を付けられていると実感できるのは凄いこと。
「他のチームももちろんその部分があるんですけれども、(今年の鳥栖U-18は)上回れている。他のチームも力があるんですけれども、超えられていると思います」

―なぜそこまで差が出ていると思う?
「トップに行っている選手だけが言うのではなくて、他の選手も自分からこうしたいという意思表示をしています。同じ立場で全員が意志表示できているというのがありますね」

―今日のトレーニングも全員が声を出して、全員が一つ一つの動きに絡んでいるという印象でした。
「学年関係なく1年も言ってくれるし、2年も、3年も全員が言えるから、それが強さの秘訣かなと思います」

―それがU-18チームの基準になっている。
「私生活も、上下関係が多少はあるんですけれども、みんな仲が良いし、仲良いところからグラウンドでも使い分けはしているんですけれども、普段から言い合える。それも良い形でプレーに繋がっていると思います」

―目指しているところのバラツキがない。
「新チームになってから全員でここという目標を決めて、『誰も他の方向に流れたりしない』と全員で約束した上で同じところを目指しているので、良い結果が出ているし、みんなしっかりとやれていると思います」

―坂井君は中でも、という存在。
「自分、今年本当に勝負の年で、ユースでプレーしながら昇格というところをずっと目指しているので、本当に今ここでできるパフォーマンスを最大限に発揮して、一日でも早く昇格というところを掴むためにやっていかないといけない、とずっと思っています」

―トレーニングで人一倍声を出しているし、人一倍ボールに触っているし、人一倍切り替え速くプレーしているように見えた。
「自分は守備のところがベースになっていて、本当に守備から攻撃というのは中学校からずっとやっています。今、福井(太智)が代表へ行っていない中で、自分がアンカーに入るとやっぱり福井ほどの技術もないから難しい部分もあるんですけれども、守備のところでカバーする、自分ができるところで穴を埋める。今日も(田中智宗)監督からアドバイスして頂きましたが、ネガティブにならず常にポジティブにやれているので大丈夫かなと思います」

―年々成長できているからこその今がある。イメージしていたものと現状を比べるとどうかな。
「順調に進んで来れているし、ここに来るまで色々壁にぶつかったのもあるんですけれども、本当にスタッフのお陰というのが大きいかなと思いますね」

―どのようなものが自分にとって大きな壁に?
「一番壁にぶつかったのは、(昨年2月に)福井がトップチームの2種登録を最初にして、そこが、一番焦りが凄かった時期かなと思います。すごく焦りましたね」

―そこでもうひと頑張りできた。
「スタッフにも声掛けしてもらいましたが、メンタル面で自分の捉え方一つなんですけれども、先越されたとその時は思っちゃったので。そういうメンタリティーでやってしまうと焦りしか出ないと思ったので、自分は足りないところがあるし、もっとやらないといけないから2種登録されていないんだと、マイナスではなくプラスの方に思考を持っていった結果が多少立ち直れて、良い結果に繋がっていったのかなと思います」

―そこからの半年、1年で坂井君も成長を加速させた。
「格段とプレーの余裕などは出てきていると思います。1年の半ばから2年の半ばに掛けて苦しんでいた部分なんですけれども、乗り越えられたので、本当にスタッフをはじめ、他の選手からの助けもあったからかなと思います」

―このチームには坂井君と同じ悩みを持った選手がいると思うし、坂井君から伝えられることもいっぱいあると思う。
「自分はトップに参加させてもらって良い刺激を味わっているので、他の選手が落ち込んでいる時やどうしたら良いか悩んでいる時は声を掛けるようにしています。自分もこういうことを経験したから、もう一個こうしたら先へ行けるんじゃないかな、みたいなことを伝えて、自主練に付き合ったりします。そうすると自分の練習にもなるので一石二鳥かなと思います」

―他のチームの選手ともそのような話をする?
「同年代の代表に行ったことのある選手とかともたまに話すんですけれども、上手くいっていないとかも聞くし、『自分も上手くいっていなかったよ』とか話をすることがありますね」

―みんなのお兄さん的な。
「いや、結構怖がられていますけれどね(苦笑)」

―性格的なところを自分はどう分析していますか?
「プレー中は負けず嫌いというのが強すぎて、勝ちたい、勝ちたいというのが強くなって、強く言っちゃう部分があります。みんなに強く言って、要求しすぎちゃって、他の選手にちょっと嫌な思いをさせてしまったことも。田中さんから『もうちょっと、言い方』ということも言われたりしました。言い方を変えたらチームの雰囲気も良くなるし、自分もプレーしやすくなるというのは、言われて、やってみて、自分もそこは変わることができました。でも性格上、負けず嫌い過ぎて勝ちたい、勝ちたいという気持ちから言ってしまっている自分がまだいるので。コントロールするところも自分の実力なので、力をつけないといけないです」

―バランスが難しい。
「一時期は本当に酷くてずっと言ってしまってというところがあったので、本当にコントロールがすごく難しかったんですけれども、言う前に自分がちょっと身体を動かすことを意識すれば、自然と口じゃなくて身体が動くというのがあったので。自分が奪い返すというところに思考を変えてプレーも良くなりました」

―ピッチ外にもサッカーを持ち帰る?
「自分がピッチ内で済ませたい人なので。ピッチ外に持ち込むと、口だけでしか伝えられないから、それをピッチ内で、行動で、動きながらでやった方が伝わりやすいというのがあるので、極力ピッチ外に持ち込まないようになりましたね」

―大人になった。
「高校3年生なので(苦笑)」

―ピッチ外はどのように時間を過ごしている?
「筋トレとかストレッチとか2種登録をしてさらに意識は変わったのかなというのもあるし、あまり考えすぎていない自分がいます。プロになるために目指しているけれど、ピッチ外で硬くなりすぎるとサッカーも楽しくないし、休む時は休んで、楽しむ時は楽しまないとキツくなってくるのは自分なので」

―同世代の高校生から見てトップデビューしている坂井君の日常は気になるのかなと。
「寮では基本はしゃいでいますね。食事終わった後も(感染予防対策をした上で)みんなと食堂で話したり、風呂でも音楽流して楽しんだり。でも、一人の時間も自分は大切にしています。親とかも気にして電話とか掛けて来てくれて心配してくれるので、一人の時は心を落ち着かせたり、良い生活を送れています」


―サガン鳥栖U-18で挑戦したいというきっかけは?
「練習会に来て一番強度が高いというところもありましたし、松岡大起(現清水)という先輩がいて、自分と同じチーム(ソレッソ熊本)の先輩だし、自分がその時目指していた選手だったので、目指しているならばその人の道を辿っていきたいというのが自分の中であったことが理由です。でも、自分も負けていないと思います。自分はまだプロじゃないんですけれども、気持ちのところとか似ているし、近いと思います。すごく似ているんでタイプが。闘争心溢れているし、ソレッソがメンタリティーの部分を身に付けさせてくれるので、そういうところがすごく似ている。たまに相談したりしています。大起君は自分がトップに行っているとかも気にしてくれているので、『順調?』みたいなことは向こうが忙しくない時とか連絡してくれて、心の支えというか、身近にいる先輩だから目指しどころかなと思います」

―松岡君がユースでやっていないようなことを成し遂げるチャンス。
「自分たちこのチームだったらプレミアリーグやクラブユースの頂点を狙えるチームだと思います。でも、過信せず、もっともっと力を付けていかないといけない。日々成長というところは監督からも言われているので、そういうところを自分だけじゃなく、全員で共有してやっていかないと1位は取れないと思います」

―このチームで成長し続ける。
「一日一日充実しているし、成長できているので。良い環境だなと思います」

―サガン鳥栖のサポーターの方々に見て欲しいところは?
「自分の特長である守備のところや攻撃の推進力というところは、本当に力を持ってやっているので、そこはしっかりと良いものを見せれると思うので、見れる機会があったら見てもらいたいと思います」

(取材協力=ニューバランス)
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

TOP