beacon

[プレミアリーグEAST]みなぎってきた圧倒的な「山田のエネルギー」。青森山田は横浜FMユースにアウェイで快勝!

このエントリーをはてなブックマークに追加

青森山田高は攻守に躍動感あふれるパフォーマンスで連勝達成!

[6.26 高円宮杯プレミアリーグEAST第10節 横浜FMユース 0-2 青森山田高 保土ヶ谷]

 結果的には2得点だったものの、決定機を作り続けた攻撃面の迫力。ほとんど危ないシーンを作らせなかった、ゴールを隠すところから逆算されている守備面の強度。もちろん快勝に繋がるピッチ面での要素はいくつも挙げられるだろう。だが、この日の90分間で一番際立ったのは、このチームが長年に渡って持ち続けてきた、溢れんばかりの“エネルギー”だ。

「春先から『今年の代は弱い』と言われていましたけど、ここに来て『絶対に勝つんだ』という強い想いでチーム一丸となってやってきましたし、スタメンで出ている2年生の選手も多い中で、3年生の『負けたくない』という強い想いも今週は凄く見えたので、そこは春先から凄く成長しているなと思います」(青森山田・多久島良紀)。

 3年生を中心にようやくみなぎってきた、他を圧倒する『山田のエネルギー』。26日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第10節、横浜F・マリノスユース(神奈川)と青森山田高(青森)が激突した一戦は、MF芝田玲(2年)とFW小湊絆(3年)がゴールを奪った青森山田が2-0で勝利。悪夢の5連敗から一転、連勝を飾る結果となった。

 試合は青森山田の決定機で幕を開ける。前半3分。前線でFW津島巧(2年)が時間を作り、MF小栁一斗(3年)が右から折り返したボールを、エリア内へ潜った小湊がフィニッシュ。ここは横浜FMユースのGK福井大次郎(2年)がキャッチしたものの、ゴールへの香りを漂わせながらゲームは立ち上がる。

 この日の青森山田は「今までみんなに助けられてきた分もあるので、こういうプレミアの舞台でチームの勝利に貢献できたらいいなと思って試合に入りました」というキャプテンのDF多久島良紀(3年)が今シーズンのリーグ戦初出場。成長著しいDF小泉佳絃(2年)とCBを組み、最終ラインにより安定感をもたらしたことで、攻撃陣も思い切り良いプレーが。26分にも小泉の好フィードを小栁が収め、上がってきたDF渡邊来依(3年)の右クロスに、MF川原良介(2年)が合わせたヘディングは、横浜FMユースのDF舩木大輔(2年)がブロックするも、惜しいシーンを創出する。

 なかなか意図する形で前進できないホームチームは、31分にビッグチャンス。ボランチに入ったFW望月耕平(1年)が、FW内野航太郎(3年)との連携から枠内シュートを放つと、青森山田GK鈴木将永(2年)がファインセーブで応酬。先制点には至らない。

 34分のスコアラーは、高精度キックを誇る2年生ボランチ。青森山田はこの日のホットエリアとして機能していた右サイドへの展開から、開いた津島が丁寧なクロス。ニアで川原が潰れると、ファーで待っていた芝田は「絆が中で呼んだので左足でクロスにしようかなと思ったんですけど、寄せてきた相手を切り返したらコースが見えたので、振った感じでした」と鋭いフェイントからコントロールシュート。ボールは右スミのゴールネットへ吸い込まれる。「左からのシュートは練習でもやっていたので、それが出たのかなと思います」と笑った16番のプレミア初ゴール。青森山田がペースそのままに先制して、最初の45分間は終了した。

 後半もゲームリズムは変わらない。6分は青森山田。芝田の鋭い縦パスから、単騎で抜け出した小湊はGKをかわすも、懸命に戻った横浜FMユースのCB石井琉晟(3年)が間一髪でクリア。その流れで獲得した右CKを芝田が蹴り込み、ファーで合わせた津島のヘディングは、叩き付け過ぎて枠を越えたものの、追加点への意欲を打ち出したアウェイチームの歓喜は、その直後に。

 7分。横浜FMユースがゴールキックから始めたビルドアップを、寄せた津島がカット。こぼれ球を拾った小湊は右へ流れながら、キックフェイントでマーカーを滑らせ、「キーパーが距離を詰めるのが速いと前半から感じていたので、そこをうまく使いながらチップで流し込めたらいいかなと思って」巧みなチップキックを披露、ボールはゆっくりとゴールネットへ吸い込まれる。10番のエースは実に開幕戦以来、9試合ぶりのリーグ戦ゴール。点差は2点に広がった。



 まずは1点を返したい横浜FMユース。15分にはU-18日本代表候補のMF松村晃助(3年)が右から仕掛け、望月が打ったシュートは枠の上へ。以降もMF細川楓(3年)やFW佐藤未来也(3年)と交代カードを切っていくものの、青森山田守備陣の高い集中力の前になかなかエリア内まで侵入できない。

 38分に細川が狙ったシュートは小泉がブロック。直後に佐藤が左サイドから仕掛けるも、途中出場でボランチに入ったDF三橋春希(3年)が果敢なタックルで阻止。「ボランチでもフォワードでも何でも、足の骨が折れても何してでも身体を張ってやろうと思っていた」と言い切る、本来はCBの4番が渾身のガッツポーズを見せる。終了間際の90+4分には、途中出場のFW大當侑(2年)が鋭いドリブル突破を見せると、身体を入れてカバーに入ったDF渡邊来依(3年)はゴールキックになった瞬間に左足が攣ってしまう。タイムアップの瞬間まで、青森山田の勝利への執念はいつも以上に発散されていた。

 ファイナルスコアは2-0。「だいぶ守から攻のところのコンセプトとか、守備コンセプトが浸透してきたなと。理想通り。理想通り。この暑さの中でよく頑張ってくれました」と黒田剛監督も一定の手応えを口にした青森山田が、2位に付けている難敵をアウェイで撃破し、リーグ2連勝を達成。5勝5敗と星を五分に戻している。

 その前の試合の退場を受け、出場停止になった流通経済大柏高戦以来、スタメンを外れている三橋が明かしてくれた“昨日”の話が印象深い。「流経戦の前にみんなで“一体感”の話をしたんです。今回の試合はアウェイでチームメイトも多くはいないですけど、自分たちがそれ以上に声を出そうというのは、昨日のホテルでサブの選手だけで集まって話していたので、今日も前半からみんなベンチで声を出していましたし、みんなの一体感で山田のやるべきことができたのかなと思います」。

 三橋、DF迫田大空(3年)、MF小野理竜(3年)、MF奈良岡健心(3年)。この日のサブには、開幕戦の市立船橋高戦でスタメン起用されていた3年生がズラリと並ぶ。下級生の台頭でポジションを失った選手たちは、それでも飲水タイムになれば率先して準備に当たり、ピッチから戻ってきた選手たちを鼓舞し続ける。

 GK代田昂大(3年)は交代で代わった選手の元へ走って水とビブスを届け、終盤に投入されたFW武田陸来(3年)は身体の強さを生かして、何度もボールキープしながら時間を確実に消していった。そんな彼らが念頭に置いていたのは『山田のやるべきこと』。ピッチ内でも、ピッチ外でも、『山田のやるべきこと』を徹底したことで、チームに大きなエネルギーが生まれていることは疑いようがない。

 先制点を挙げた芝田は、今のチーム状況をこう語っている。「3年生は去年の重圧も感じながらスタートして、最初は思うように行っていなかったですけど、そこで2年生がどんどん活躍することによって、3年生の刺激になってきたと思いますし、チーム全体が『もっとやらなきゃ』という気持ちになっているので、良い感じになってきていると思っています」。

 試合後に「やっぱり勝った時の喜びというのはいいですね。今日の勝利は今まで以上に嬉しかったです」と笑顔を見せたキャプテンの多久島も含め、3年生が率先して実行してきた『山田のやるべきこと』が導く、圧倒的な『山田のエネルギー』。厄介なチームの、一番厄介なストロングが、ようやく彼らのもとへ帰って来つつある。

青森山田高のエネルギー源、DF三橋春希


(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2022特集

TOP