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[MOM3936]奈良育英GK瀧川笑玄(2年)_指揮官絶賛。初先発の155cmGKが日常を発揮し、J内定擁する東山封じ

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奈良育英高は初先発の155cmGK瀧川笑玄が好守を連発

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.9 高円宮杯プリンスリーグ関西2部第1節 東山高 1-1 奈良育英高 東山高G]

 奈良育英高の梶村卓監督は試合後、迷うことなくマン・オブ・ザ・マッチを決めたという。「チームの陰の仕事とか雑用的なこともしっかりやっているので、今日こういうゲームができたんだと思いますね。この場で、この相手で、あれが発揮できるというのは普段からああいう取り組みをしていないとできないと思います」。この日が初先発のGK瀧川笑玄(2年=奈良YMCA出身)は身長155cm。フィールドプレーヤーを含め、110人ほどの部員で最も小柄なGKがインターハイ有力校の一つ、東山高(京都)相手に好守を連発した。

 立ち上がりは相手のプレースピードの速さや力強さ、シュートの速さと巧さに戸惑った部分もあったという。東山は3連続のロングスローやCK、クロスで再三ゴール前にボールを入れてくる。懸命に、勇気を持って前へ出てパンチした瀧川だが、全てに触れられた訳では無い。だが、チームメートのサポートも受けながら立ち上がりを無失点で切り抜けると、「今日は落ち着いてできていたと思います」という守護神がコースを突いてきたシュートを1本、2本と弾き出して見せる。

「シュートストップのところは日頃からトレーニングしていますし、自分、見ての通り小さいですけれども自信を持ってやれたと思います」。後半にはDFに当たってコースの変わったシュートや至近距離からのシュートもあったが、反応してストップ。瀧川は特に1対1の守備で強さを見せた。

「シュートを打たれる前に相手を潰し切るということ、言葉は汚いですけれども潰し切るというところをGKコーチとも話し合って、自分はそういうところをやっていかないといけないと思っていて、打たれる前に潰しきるというところは意識していました」。前後半ともに相手選手と1対1になったシーンがあったが、相手の顔が下がった瞬間一気にアタック。打たれる前に足元へ飛び込み、またループシュートを叩いて止めるようなシーンもあった。

 この日奈良育英は彼のコーチングの成果もあってか、セカンドボールの攻防で健闘し、シュートブロックの本数も多かった。終了6分前に追いつかれ、さらにピンチが続いたが、瀧川の好セーブによって1-1ドロー。梶村監督は「ずっとサブGKに入れていたのでゲーム感が無い中で、彼のコーチングとセービングがなかったら今日のゲームはなかったと思いますね」と絶賛していた。

 前節、先輩GKの退場後に公式戦初出場。この日初先発することを理解していた。「今週始めるに当たって、誰が出ても良い準備してきたわけやから、示さなアカンよなと言ってきた中で、そこはホンマ示してくれたと思いますね」と梶村監督。この一週間だけでなく、日常の取り組みがこの日の好プレーに結びついた。

「中学の時からなんですけれども、日常や人間性のところは今までいてたチームでも大切にされていましたし、自分の中でも(誰しもがプロサッカー選手になれる訳では無い中、)人間としてちゃんとできたらよいなと思っていて、ゴミ落ちていたら拾いますし、他の選手ができていなかったら注意して、そこはチーム全体で厳しくやれていると思います」。瀧川がトレーニングを含めて「自信を持って言える」という日常。その積み重ねが初先発したゲームで大いに発揮された。

 瀧川は小学5年生で奈良YMCAに「最初はフットサルしていて、(サッカーの)試合をしたいと思ってGKでも良いのでやらせてください」と入団し、当時からGK。「関西とか見ていたら見上げるような選手が多くて、でも自分なんか(身長も低くて)自信もないですし……」。この日も対戦相手には自身よりも20cm以上大柄な選手が何人もいた。だが、ピッチで不安を払拭するプレー。本人もトップレベルの戦いで通用する手応えを得るゲームとなったようだ。

 小柄なGKが共通して抱いている「他の小さなGKたちのために」という思い。瀧川は「自分も小さいGKですし、(小柄なGKには)『どこでもやれるんや』と思って欲しいと特に思っています。(今後も)先輩とか後輩とか関係なく、GKって少人数ですし、そこは全員が切磋琢磨しながら良い刺激を与えられるようにやっていきたい」。また他のGKたちと競争。チャンスを掴み取るため、変わらぬ姿勢で準備を続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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