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[関東Rookie League]重圧の中、1年生が特別な90分間。入れ替え戦は日大藤沢が日体大柏と引き分け、Aリーグ残留!

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Aリーグ残留を決め、歓喜に沸く日大藤沢高イレブン

[9.4 関東Rookie League A・Bリーグ入れ替え戦 日大藤沢高 1-1 日体大柏高 時之栖うさぎ島G]

 関東・静岡の高校1年生が90分ゲームのリーグ戦で優勝を争う「2022 関東Rookie League」は4日、Aリーグ・Bリーグの入れ替え戦を行った。Aリーグ9位の日大藤沢高(神奈川)とBリーグ2位の日体大柏高(千葉)が対戦し、1-1で引き分け。大会規定により、上位リーグの日大藤沢がAリーグ残留を果たした。

 1年生チームにとって、なかなか経験できないような、特別な90分間だった。日大藤沢は前日のリーグ最終節・静岡学園高(静岡)戦で0-3から1点差へ追い上げたものの、終了間際のPKを止められて敗戦。入れ替え戦に回ることになった。

 GK小久保亮大は「受け入れて今日勝つために話し合ったり、早く寝たり、自分の身体のことをケアしたりとか、今日の試合に向けて昨日は頑張っていました」。前半は互いに決定機を作り合う展開に。中でも、日体大柏は相手を上回るような強度、また崩しの力を見せる。

 下位リーグの日体大柏が昇格条件は90分間での勝利のみ。対する日大藤沢は先制してより優位に立つことを目指し、チャンスも作った。だが、187cmGK早川ウワブライトを中心とした日体大柏の守りは堅く、リードを奪うことができない。一方、日体大柏の前にも日大藤沢のGK小久保やDF陣が立ちはだかる。重圧もあったか、互いにラストの精度を欠き、0-0のまま試合は進んだ。

 迎えた後半23分、日体大柏が絶好の先制機を迎える。右サイドで3人、4人と絡んでの崩し。最後はMF高橋大翔のスルーパスでPAへ抜け出したFW斉藤海智がGKにファウルで止められ、PKを獲得する。このPKを斉藤が右足で決めて1-0。昇格へ前進した日体大柏は控え選手も斉藤の下へ駆け寄り、喜びを爆発させた。

 畳み掛ける日体大柏。40分には、カットインしたFW吉村友佑が左足を振り抜く。ボールはコースを突いたが、日大藤沢GK小久保の指先に弾かれたボールは右ポストをヒット。「信じられないくらいの、自分もやったことのないくらいのプレーで驚いています。自分の仕事はゴール守ることなので、それだけなので、一生懸命に頑張っていました」という守護神のビッグセーブだった。

 ピンチもあったが、日大藤沢はここでDF陣が踏ん張った。「日藤にも伝統がある。降格してしまうと日藤の名前に傷をつけてしまう」(小久保)。そのプライド、新たに入学してくる後輩への責任感、諦めない姿勢、そしてかつてないほどに研ぎ澄まされた集中力が同点ゴールを生み出した。

 後半43分、日大藤沢は相手セットプレーからロングカウンター。FW宮澤朋也が持ち上がって右へはたくと、FW小林琉云が1タッチで中央へ折り返す。完璧なパス交換で右SB高橋育人が独走。一気にPAまでボールを持ち込むが、後方から猛スピードで追いついた日体大柏右SB杉本文武が執念のディフェンスでその前進を阻止する。

 日大藤沢は決定機が潰えたかと思われたが、こぼれ球を小林琉がシュート。これは右ポストを叩いたものの、跳ね返りを高橋が右足で蹴り込み、劇的な同点ゴールとなった。今度は日大藤沢の控え選手たちがヒーローの下へ駆け寄り、喜びと興奮を全身で表現。高橋は「決めた瞬間、全員が来てくれたのでチームが一つになった瞬間かなと思いました」と歓喜の瞬間について振り返る。

 勝つしか無い日体大柏は、再び猛攻。ゴール前のシーンを作り出したが、わずかに判断が遅れると日大藤沢DF陣は距離を詰めてシュートを打たせない。逆に日大藤沢はカウンターから再びチャンスも。ピッチの22人が全力を尽くし、ピッチ外の選手も声を張り上げるなど今できることに必死で取り組んでいた。その中で日体大柏は1点への執念を見せたが、日大藤沢が全員でゴールを死守。Aリーグ残留を決めた。

 日大藤沢の指揮を執った河内健奨コーチは「勝った、負けたがゴールじゃない。(将来へ向けて)良い経験をさせてもらった」。また、小久保は「残留ができてチームのためにも、自分の自信にもなったと思います。3年生の時、選手権で優勝できるように、自分が全ての試合を無失点で終えれるように頑張りたいと思います」と力を込めた。他のチームが経験できないような特別な90分間。最高の一体感で勝った日大藤沢も、敗れた日体大柏も、この経験を飛躍への糧にする。

(取材・文 吉田太郎)
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