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[MOM3996]流通経済大柏DF萩原聖也(3年)_「流経のチアゴ・シウバ」が圧巻の守備で無敗の首位撃破の立役者に!

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流通経済大柏高のディフェンスラインを牽引するDF萩原聖也

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.4 高円宮杯プレミアリーグEAST第13節 流通経済大柏高 1-0 川崎F U-18 流通経済大学付属柏高校グラウンド]

 首位を快走している川崎フロンターレU-18(神奈川)に1-0で競り勝ち、リーグ戦での初黒星を付けた試合後。流通経済大柏高(千葉)を率いる榎本雅大監督は、守備の手応えを問われて、こう語っている。

「特に萩原が良かったですね。かなり守備範囲が広がっていますし、簡単にボールを捨てないですし、彼を中心にかなり守備が堅くなってきていますね。この5試合で失点1なので、非常に守備は安定してきているなと思います」。

 難敵相手に好パフォーマンスを発揮した流経大柏のセンターバック、DF萩原聖也(3年= VITTORIAS FC出身)は試合前からやるべきことをしっかり整理していた。「自分たちも前半からボールを回されるのは覚悟していたので、ゴール前でどれだけギャップやバイタルを締めて、粘り強く守備をするかが求められると思っていました」。

 警戒していたのは、相手の中盤でのスムーズなボール回しとそこからの配球。「そこをどれだけ潰せるかが今回の試合の鍵だなと話していた中で、中盤の都築や竹原が頑張ってくれたので、川辺と自分はこぼれ球やロングボールを処理することに専念できました」と萩原。ドイスボランチのMF都築駿太(3年)とMF竹原伸(3年)が中盤で果敢に相手を潰し、縦へと入ってくるボールに対しては、基本的にDF川辺暁(3年)がチャレンジし、萩原が的確にカバーする。この棲み分けを徹底していた流経大柏は、リーグ2位の得点数を誇る川崎F U-18のアタックを1つずつ、丁寧に潰していく。

 個人としても、萩原にはマッチアップを楽しみにしている選手がいたという。「相手のフォワードの五木田(季晋)選手はウチの都築と一緒に代表に入っていて、そこを抑えれば自分の方が代表にふさわしいと言えると思うので、絶対に抑えてやろうと考えていました」。実際に対峙してみて、「あまり1対1のマッチアップはなくて、競り合いの場面が多かったんですけど、長いボールは全部五木田選手の頭を越えて、自分が弾いていた感じでした」と手応えを口にしながら、「でも、それは自分の方が有利な体勢だったからというだけですね」と謙虚な言葉を付け加えるあたりに、本来の性格が垣間見える。

 もともとカバーリングは得意なジャンル。この日もディフェンスラインの裏側に落とされたボールには、誰よりも速く反応し、GKデューフエマニエル凛太朗(3年)と声を掛け合いながら、正確な危機回避を繰り返す。だが、際どいシーンでは身体を投げ出して、厳しい1対1にも着実に勝利していく。

「自分は前期のプレミアであまり調子が出なくて、チームに迷惑を掛けていましたし、凄く悩んでいたんですけど、エノさん(榎本監督)には『カバーリングはできるから、1対1が課題だ』と言われていたので、逆に開き直って、インターハイが終わった後の遠征でも1対1があったらとにかく寄せて、寄せてと頑張って練習を積めたので、1対1が強化されたのかなと思います」。重ねた努力は裏切らない。この日のピッチには、トレーニングから積み上げてきた成果が、色濃く表れていた。

 これでリーグ戦は3試合続けて1-0での“ウノゼロ”勝利。確かな守備の安定感を纏いつつあるチームの中で、もちろん萩原も小さくない手応えを掴んでいる。「コーチの(斉藤)礼恩さんも『1-0が一番良いスコア』だと言われていて、宮本優太さん(浦和レッズ)の代はルーキーリーグの頃からずっと1-0で勝っていたと聞いているので、自分たちもそこに近付けているかなという感じです。自分としてはもっと点を獲ってくれた方が安心できますけど(笑)、1点獲ってもらえれば、自分たちが守れば勝てますからね」。まず考えるのは無失点で試合を終えること。そのマインドが良い形で結果に反映されている。

 ここまではチームも個人も、満足の行く結果を残してきているわけではない。だからこそ、ここからどう逆襲していくかも、萩原の中には明確なイメージがある。

「あと3か月半ぐらいで自分たちの流経での活動は終了するので、このラストの時間は全力を注いで、全員で頑張ろうと話しています。個人としても前期は足を引っ張った分、ここからは守備で危ないところを救っていきたいですし、そんなに声を出すタイプではないんですけど、的確な指示はしていこうと思っています。川辺が結構言うタイプなので、自分はそれに対して細かいところを補って言えばいいかなって」。

 目指すは『流経のチアゴ・シウバ』。決して雄弁なタイプではない萩原の静かなる躍動は、流経大柏がもう1つ上のステージへと足を踏み入れるためにも、間違いなく必要不可欠だ。



(取材・文 土屋雅史)
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