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10番を背負った左サイドの仕掛け人。横浜FCユースMF高塩隼生は年代別代表の経験をさらなる成長へ結び付ける

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横浜FCユースの左サイドで躍動するMF高塩隼生

[9.4 高円宮杯プレミアリーグEAST第13節 柏U-18 0-2 横浜FCユース 日立柏人工芝]

 プレミアリーグでの戦いも2シーズン目を迎える横浜FCユース(神奈川)の左サイドでは、いつだって10番が仕掛けまくっている。「オンで剥がすところと、オフで剥がすところも彼の武器なので、そのあたりも続けてやっていくことが、この次のステージでの活躍に繋がるのかなと思います」とはチームを率いる小野信義監督。MF高塩隼生(3年=横浜FCジュニアユース出身)のストロングは非常にハッキリしていると言っていいだろう。

 最大の特徴はスピードを生かしたドリブル突破。柏レイソルU-18(千葉)と対峙したプレミアリーグEAST第13節の一戦でも、とにかくボールを持ったら縦へと運び続ける。「3バックの左の選手から自分に入る時に、相手のサイドバックが出てこないということで、前を向けることが多かったなと思います」とは本人。丁寧なビルドアップを徹底するチームの中で、高塩にボールが入った時はそれが攻撃のスイッチ。周囲の選手のベクトルも瞬時に縦方向へと切り替わる。

 この日は守備面でも自らのタスクを把握し、きっちりまっとうする。「相手のセンターバックの3番が持った時に対角を狙ってくるというのはわかっていたので、身体の向きで先に良い状態を作れたなと思います」。柏U-18のストロングでもある、左センターバックからのフィードも言葉通りに予測しながら、簡単に自分のサイドからのアタックは許さない。

 守備の意識向上に、この夏の“経験”が一役買っていたことは間違いない。8月下旬に静岡で開催された『2022 SBSカップ国際ユースサッカー』へU-18日本代表の一員として参加。「呼ばれたのは嬉しかったですけど、ディフェンスで選ばれたことにはビックリしました。やったことがなかったので」と本人も語ったように、DF登録で招集された高塩は主に左サイドバックで起用される。

 ただ、実際にやってみた新たなポジションは、想像以上にしっくり来ていたという。「サイドバックをやってみて、『思ったよりできたな』という感じはありました。守備のところでは中に絞って、相手より早く準備して、背後に走らせないようにしてカバーすることだったり、そういう守備の部分は結構できました」。

 もちろん攻撃面でも、そのスピードで違いを生み出していく。1試合目のU-18ウルグアイ代表戦と、3試合目のU-18ウズベキスタン代表戦にスタメン出場。「ウルグアイ戦はそこまで自分が運んだり、前に行くことがなかったですけど、ウズベキスタン戦では自分で運べる回数も多くて、左からある程度チャンスは作れたのかなと思います」。とりわけ本人も好感触を口にしたU-18ウズベキスタン代表戦では、左サイドで縦関係を組んだ名願斗哉(履正社高3年)とともに、果敢な縦勝負で相手の脅威になっていた。

 初めての代表活動は、小さくない刺激を得る貴重な学びの場となった。「やっぱり代表は1つ1つの強度が高いなと思いました。最初のミーティングで『取られたらすぐに切り替えろ』と言われましたし、練習でも試合でもそこはみんな意識していて、取られてもすぐ取り返すことは何回もできたなと。攻撃では自分のスピードは結構通用するなと思いましたし、継続的に代表に選ばれていきたいという想いは出てきましたね」。高いレベルでの経験は、さらなる成長への意欲を連れてくる。それは高塩にとっても、もちろん例外ではない。

 今シーズンの前期はケガで離脱する時期もあり、リーグ戦でもスタメンから外れることが少なくなかった。「10番で試合に出ていないというのは、他のチームとしても『え?』って感じなのかもしれないですし、『何でスタメンじゃないんだろう?』と思う時もあったんですけど、どれだけ練習で良くても、試合で結果を残さないとスタメンで出られないなというのは感じましたし、結果を残すことが一番大事だなと思いました」。

 小野監督はそのポテンシャルをよく知るからこそ、この10番への期待と課題を口にする。「強さと弱さがハッキリしている選手で、今日も不用意なロストが多かった感じはあったんですけど、ああいう部分をどれくらい改善していくのか、ですよね。でも、ウィークのことばかり言っても仕方ないので、自分の強みを限界まで出せるようになってほしいです」。

 これには本人も「波がなくできるようにならないといけないなと思います」ときっぱり。それでも、能力をフルに発揮した時の輝きは、期待せざるを得ないエネルギーに満ちており、大きな将来性を感じさせてくれることも、また確かなところだ。

 決して多弁な方ではない。だからこそ、残されたリーグ戦での目標を問われ、短く言い切った言葉が印象深い。「これからも試合の中で、アシストやゴールという目に見える結果を残したいと思っています」。

 世界を見据える、左サイドの仕掛け人。高塩がトップスピードで駆け抜けていく道の先には、ハマブルーのユニフォームとともに輝く未来が、きっと待っている。



(取材・文 土屋雅史)

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