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再び北信越の主役へ返り咲くために。“人間力改革”に着手しつつある新潟U-18は金沢U-18に2-0で快勝!

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アルビレックス新潟U-18はホーム最終戦を2-0の快勝で飾る!

[9.10 高円宮杯プリンスリーグ北信越第15節 新潟U-18 2-0 金沢U-18 デンカスワンフィールド]

 今のままでいいなんて、誰も思っていない。みんなが知っているこのチームの輝きを取り戻すために、もっと大きな空へと高く高く羽ばたくために、この道を突き進んでいくのだと、改めて覚悟を決めたのだ。

「昔のイメージでは北信越と言ったらアルビだったわけで、全国に出て行ってもやれるし、選手もトップチームに入っていって、他のチームに行ってもやれるという土台はあるので、それをもう1回何とか取り戻したいと思っています。高体連も含めて北信越自体のレベルもかなり上がってきているので、そこで切磋琢磨しながら、もう1回その中心にいられるようになっていかないといけないんじゃないかなって」(新潟U-18・熊谷浩二監督)。

 ホーム最終戦で若き白鳥、躍動。10日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープリンスリーグ北信越第15節、アルビレックス新潟U-18(新潟)とツエーゲン金沢U-18(石川)が激突したJユース勢同士の対戦は、前半37分にMF長谷川紡(2年)がゴラッソを叩き込めば、後半2分にはFW森田翼(3年)も念願の今季公式戦初ゴールを記録した新潟U-18が2-0で快勝。大きな勝ち点3を奪い取っている。

 立ち上がりは金沢U-18の勢いが鋭い。2分には右サイドで得たCKをレフティのDF山下莉人(3年)が蹴り込むと、こぼれに反応したMF高橋祐翔(2年)のシュートは寄せた新潟U-18ディフェンスがブロック。4分にも山下のピンポイントクロスに、飛び込んだFW中川豪(3年)が完璧なボレーで合わせるも、ここは新潟U-18GK内山翔太(1年)がビッグセーブ。

 13分にも左サイドをMF宮前享真(3年)が抜け出すと、内山が果敢に飛び出してクリアしたものの、守備でも右からDF北啓佑(3年)、DF岡本翼(3年)、DF上多快生(3年)、山下で組んだ4バックが安定感を打ち出すアウェイチームに、得点の香りが漂い続ける。

 ただ、「相手が背後を狙ってきていたので、背中を取られないようにラインをコントロールしたり、セカンドボールの球際はみんなで声を掛けてやっていました」とディフェンスリーダーのDF丸山嵩大(3年)が話したように、新潟U-18は前半の飲水タイムで修正を図ると、その丸山とDF河田波大(3年)の両センターバックを中心に、徐々に守備の強度とアラートさが増していく。

 すると、スーパーな一撃を披露したのはオレンジの右サイドバック。37分。右サイドでMF芹澤飛勇(1年)が時間を作って外へ付けると、駆け上がってきた長谷川は躊躇なく右足一閃。軌道は一直線に左スミのゴールネットへ突き刺さる。「持ち味はああいう攻撃の良さですけど、あんなゴールは僕も初めて見ました(笑)」と熊谷監督も驚く貴重な先制弾。新潟U-18が1点をリードして、最初の45分間は終了した。

 次に煌めいたのは悩めるストライカーだ。後半2分。新潟U-18はスムーズな連携で相手陣内まで攻め入ると、「本間至恩さんは意識しています」という10番と左サイドハーフを任されたMF石山青空(2年)とMF大岩徹平(3年)が繋いだボールは森田の足元へ。「練習からもう『力を抜いてシュートを打て』とコーチから言われていた」という9番が、粘り強く反転しながら打ち切ったシュートはゴールネットへ吸い込まれる。今季のリーグ戦初ゴールとプリンスリーグ初ゴールを同時に手にして、力強く咆哮する森田に笑顔で駆け寄るチームメイト。2-0。点差が開く。

 小さくないビハインドを負った金沢U-18も、反撃の手を繰り出す。8分には右サイドをFW平川稜(3年)が切り裂き、MF松浦魅空(3年)が枠へ収めたシュートは内山がキャッチ。23分にも高橋、松浦と回したパスから、中川が放ったシュートはここも内山がセーブ。ゴールが遠い。

「チーム全体で『ここは統一しよう』という意識を持ってやれたので、そこは良かったかなと思います」とキャプテンマークを巻くMF山根成陽(3年)も話した新潟U-18は守備も安定させながら、右は長谷川と芹澤、左はDF高野秀哉(3年)と石山の縦関係でサイドアタックからさらに狙う追加点。29分と36分には途中出場のMF丸山皓己(2年)が決定機を掴み、ここはともに金沢U-18のGK浦理貴弥(3年)がファインセーブで応酬したが、攻める意識を緩めない。

「立ち上がりや終盤に点を獲られて、ビハインドの状態でリスクを掛けて、という試合が今までずっと続いていたので、そこはきっちりコントロールしていこうという課題を持って夏ぐらいからずっとやってきたんですけど、今日はそれが上手く行き過ぎるぐらい上手く行った感じだと思います」と指揮官も笑顔を見せたように、ホームチームはゲームクローズにも思い通りに着手。最終ラインにはDF野村俊瑛(3年)を投入しつつ、前線にFW棚木晴斗(1年)とFW杉浦由泰(1年)を送り込み、前からのプレスを再度徹底させる。

 そして、5分間のアディショナルタイムが終わり、スワンフィールドにタイムアップのホイッスルが。「素直に嬉しいですし、練習から守備の仕方をみんなで徹底したことが勝利に繋がったと思うので、そこをブラさずに90分間できました」(丸山嵩大)「サッカーのゲームを90分間どう続けるか、どうコーディネートしていくかという部分は、凄くみんなで意識してきた中で、今日はこういう形で良い状態に持ってこれて勝てたので、凄く良かったです」(山根)。新潟U-18が4試合ぶりの白星を手繰り寄せ、オレンジの歓喜を爆発させる結果となった。

 今シーズンから新潟U-18の指揮官には熊谷監督が就任した。2014年から18年までは鹿島アントラーズユースを率いて、プレミアリーグでの日本一も経験している名将は、外から来たからこそ、今の選手たちの現状を冷静に把握している。

「環境は他のJクラブに負けないようなものがあるんですけど、正直目標や目的意識がちょっと低いので、『プロを目指せるところにいるんだよ』というところをもっと真剣に捉えられるように、まずは意識改革しないといけないかなという想いがあります。やっぱり1つ1つのプレーや勝負のところはもう少し意識してやらないと、何となく試合をやって、何となくプレーしてということで、やっぱりサッカーに対しての準備や想い、勝負に対するこだわりが比較的少ないかなと。ただ、ちょっとずつそういう意識のある選手も出てきたので、これが良い方向に回っていくことで、今が“土台作り”とは言わないですけど、来年、再来年とそういう意識が変わっていけばいいなと思っています」。

アルビレックス新潟U-18を率いる熊谷浩二監督


 U-18から新潟にやってきた、埼玉のGRANDE FC出身の山根は「僕は小学校5年生ぐらいの時にアルビを知って、そこからアルビはアカデミーもずっと強いという認識があった中で、自分がここに来た時はその立ち位置にいられなかったところで、3年目こそは『強い新潟を取り戻したい』と思っていたんですけど、そこがまだうまく行っていないですね」と話しつつ、こう言葉を続けた。

「時間を守る、時間に余裕を持って行動する、忘れ物をしないとか、まずピッチ外のことができないと、ピッチ内にも影響が出ると思うので、それはずっとクマさんにも言われていますし、自分は特にそこを考えています。寮でのルールを作ったり、各担当を作って責任を持たせるとか、そういうところでピッチ外で積み上げていくものがだんだん増えていけば、ピッチ内もどんどん良くなって、強い新潟が戻ってくるんじゃないかなと思ってますし、そこに対しての意識はある程度できてきているので、そこを後輩が上手く続けてくれれば、ユースも良くなっていってくれるかなと思います」。

アルビレックス新潟U-18のキャプテンを務めるMF山根成陽


 熊谷監督が束ねていた鹿島ユースも、挨拶も含めてしっかりした行動を取れる選手が非常に多かった。オン・ザ・ピッチでやり切るのは当たり前。その上でオフ・ザ・ピッチの充実で養う人間性が、サッカーに繋がっていくことを熟知している指揮官の元、若きアルビの希望たちも、少しずつ日常から自分たちの意識を変えつつあるようだ。

 この日の試合前、山根はチームメイトにこういう言葉を投げ掛けたという。「残留争いをしている状況で、絶対に勝ち点1、勝ち点3が必要になってくる中で、『この1分1秒を大切にして、この試合は絶対勝ち切ろう』ということは伝えました。結果的にあの2人が点を獲ってくれて、勝てたことは凄く嬉しかったです」。

 再び北信越の圧倒的な主役へ返り咲くため、情熱の監督が求める人間力も身に付けながら、新潟U-18はオレンジ色に輝く未来を信じ、1分1秒を大切に、前へとひたすら突き進んでいく。



(取材・文 土屋雅史)
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