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[NB CHAMPIONSHIP U-16]矢板中央が初優勝!団結力と伝統の堅守、練習重ねたテクニックも勝因に

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矢板中央高が“全国大会級”のU-16フェスティバル、「newbalance CHAMPIONSHIP U-16」で初優勝

[9.19 NB CHAMPIONSHIP U-16決勝 流通経済大柏高 0-1 矢板中央高 時之栖うさぎ島G]

 U-16(高校1年生)の強豪32チームが優勝を争う“全国大会級”のフェスティバル、「newbalance CHAMPIONSHIP U-16」(静岡県御殿場市・裾野市)は19日、決勝を行い、ともに初優勝を狙う流通経済大柏高(千葉)と矢板中央高(栃木)が激突。矢板中央が1-0で勝ち、初優勝を飾った。大会MVPは準決勝、決勝で連発した矢板中央MF田中晴喜が選出されている。

 矢板中央は全国高校選手権で4度3位になっているが、日本一の経験はまだない。そのチームが決勝で対戦した流経大柏や青森山田高(青森)、前橋育英高(群馬)、市立船橋高(千葉)、静岡学園高(静岡)というプレミアリーグ勢や、帝京長岡高(新潟)、東山高(大阪)、米子北高(鳥取)、興國高(大阪)などの強豪校が出場した「newbalance CHAMPIONSHIP U-16」を7戦無敗で駆け抜けた。

 ゲーム主将のCB川隅雄哉は、「これまで個でやっている感じが見られて『団結力を作って行こう』という話があって、練習で走りとかキツイことをみんなで励まし合って練習してきました。前後半メンバー入れ替わりでも、ベンチのメンバーも出ている選手のために頑張る、声出しをする、ということを意識して変わって行って、ニューバランスカップもできたと思います」と頷く。味方のゴール、好プレー、勝利を全員で歓喜。表彰式後には全員で手を繋いで円陣を組み、「カンピオーネ!」の大合唱で感情を爆発させていた。

 試合は開始5分に動いた。矢板中央は左CKにCB永井陽太朗が飛び込む。相手GK、DFと競ったボールはゴール方向へ。これを田中が頭で押し込み、矢板中央がリードを奪った。追う展開となった流経大柏は8分、左サイドをMF堀川由幹とMF坂井伯で崩し、ラストパスをファーのMF奈須琉世が右足シュート。だが、矢板中央左SB手嶋飛燕がブロックする。

 強い向かい風の中で前半を戦う矢板中央だが、守り一辺倒になることなく、田中の左足ミドルなどで2点目を狙う。攻め込まれても慌てずにパスやクリア。前線のFW加藤神人やFW坂井礼努、田中にボールが収まるため、流経大柏に連続攻撃を受ける回数が少なかった。

 矢板中央は堅守速攻のイメージが強いが、金子文三コーチは前日の試合後、「守備頑張れば、全国3位まで行ける。(その上に行くためには)攻撃でプレッシャーを掛けられるチームにならないといけない」と語っていた。この1年生の代はドリブル、リフティングなど個の技術力強化を徹底。MVPの田中もその成果を口にしていた。

 一方でやはり光ったのは堅守。MF齋藤煌耀のシュートブロックや永井、川隅の身体を張ったクリアなど、最後の局面で“矢板中央”らしさを発揮していた。攻撃陣のタレントが多い一方、トップチーム帯同のCB清水陽やGK3人不在の守備面は危惧されていたが、集中した守りによって前半を1-0で折り返して見せる。

 矢板中央はこれまでの試合同様、後半開始から11人をチェンジ。流経大柏は準々決勝、準決勝でファインゴールを決めている注目FW山野春太を投入した。後半開始直後、流経大柏にチャンス。左CKのこぼれを拾った奈須が個人技からシュートへ持ち込むも、矢板中央GK鈴木晴登がストップする。

 メンバーが入れ替わっても矢板中央の守りは強固。クロスやFKを蹴り込むだけでは得点には結びつかない。後半、グラウンダーで攻める意識を高めた流経大柏は、CB佐藤夢真がドリブルで大きく持ち運ぶなど、DF、ボランチのところでプレスを打開して前進。だが、朝方の大雨の影響で水を多く含んだピッチではパスが失速し、MF外山瑛人やCB佐藤快風らが狙いを持って守る矢板中央をなかなか攻略することができない。

 流経大柏の榎本貴士コーチは「引かれた相手にどう動かして入っていくかは課題」。リードされていることもあってか、慌ててしまう部分も散見され、山野までボールが届かない。19分、堀川の右クロスのこぼれに交代出場FW中野万輝斗が反応。決定的な形で右足を振るも、再びGK鈴木のビッグセーブに阻まれ、セカンドボールもMF井内哲心にかき出されてしまう。

 矢板中央は、後半から出場のFW渡部嶺斗とFW加藤直輝の2トップも力強い。彼らを中心に高い位置で起点を作ることで、自分たちのゴールから相手を遠ざけた。27分には俊足MF石塚遥真がカットインから右足シュート。こぼれ球を渡部が押し込みに行くが、これはポストを叩いた。それでも、最後まで1点リードを守り抜き、1-0で勝利。“全国大会級”のU-16フェスティバルで頂点に立った。

 この日、所用で栃木へ戻っていた矢板中央の金子コーチは、「『テクニックを身につけて駆け引きを覚える。そうする事で、守備でプレッシャーを与えるチームから攻撃でプレッシャーを与えるチームに成長できる』とジュニアユースの指導者の方々から学びました。ジュニアユースの指導者の方々に優勝の喜びと感謝を伝えたいです」とコメントした。興國、帝京長岡、流経大柏を無得点に封じた堅守と団結力。まだまだ十分ではないものの、中学年代の指導者の影響を受けてテクニック強化に力を入れて来たことも勝因となった。

 この日、ベンチ入りした白石康之顧問は「攻撃も、守備もみんなで良く戦った」とコメント。選手たちは歓喜を爆発させた後、その白石顧問の携帯電話を通して、担当の金子コーチから「過信せずに磨いて行け」とメッセージを受けていた。

 川隅は「一人ひとりがこの団結力、人のためにということを忘れずに、2年後、みんなで団結力のあるチームにしていきたい」と語り、田中は「2年後も(全国大会で)優勝したい」と誓った。U-16で一つ大きな結果を残したが、勝負はこれから。高橋健二監督らコーチングスタッフの指導の下、地元・栃木に残っていた同級生、また先輩や来年以降加入してくる後輩たちとともに努力を続けて次は、公式戦で歴史を変える。

(取材・文 吉田太郎)

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