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[プレミアリーグWEST]「自分たちはアグレッシブか?」。新システムで躍動した磐田U-18はG大阪ユースを下して連敗を3でストップ!

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ジュビロ磐田U-18ガンバ大阪ユースを下して連敗を3でストップ

[9.18 高円宮杯プレミアリーグWEST第15節 G大阪ユース 1-3 磐田U-18 OFA万博フットボールセンター グラウンドB]

 指揮官がよく口にするのは『アグレッシブに戦うこと』。積極的に、能動的に、自分たちからアクションを起こして、相手を飲み込んでいく。そのためにはシステムを変えることもあれば、メンバーを代えることもある。だから、ピッチの選手たちは難しく考えず、そのことを軸にプレーすればいい。『自分たちはアグレッシブか?』。

「攻守において、よりアグレッシブに、積極的にプレーする時間を伸ばしたいと思った時に、いる選手を見て、3バックの方が前も後ろも攻守でうまく行くのかなとトライさせてもらいました。前節は結果が出なかったですけど、今節はトライしていることが結果に結び付いたので、これで選手たちもより積極的にトライしてくれるかなと。そういう意味では大きな1勝かなと思います」(磐田U-18・前田遼一監督)。

 連敗のトンネルを抜ける快勝劇。18日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第15節、ガンバ大阪ユース(大阪)とジュビロ磐田U-18(静岡)が対峙したゲームは、DF松田和輝(3年)とDF李京樹(2年)で組んだ右サイドが全得点に絡んだ磐田U-18が、G大阪ユースの反撃をFW南野遥海(3年)の1点に抑え、3-1で勝利。リーグ戦では4試合ぶりとなる、再開後の初白星を挙げている。

 勝利から少し遠ざかっているチーム同士の一戦は、やや静かな展開で立ち上がったが、先にリズムを引き寄せたのはアウェイチーム。「今日のミーティングでも『3バックもチャンスがあったらどんどん攻撃参加していい』と監督からも言われていた」と話した右の松田、左のDF御船晴斗(3年)が起用された3バックの両脇も果敢に攻撃参加。ここにDF伊藤稜介(2年)を左に、李を右に配したウイングバックも関わることで、サイドアタックの迫力が増していく。

 すると、先制点はやはりサイドの連携から。21分。右サイドで李が時間を作ると、駆け上がった松田に優しくパス。「あの角度は結構自分の中でも良いイメージを持っていたので、とにかく枠に向けて振り抜いた感じです」という7番の豪快なシュートが、“ニア上”へ突き刺さる。まさに狙い通りのアグレッシブな攻撃参加が呼び込んだ一撃。アウェイチームが1点のリードを手にした。

 サックスブルーの勢いは止まらない。続く攻勢の中で迎えた35分。ここは中央に絞っていた李が、縦へ短く出したラストパスに反応したFW舩橋京汰(2年)は、斜めに走り込みながら右足一閃。ボールは左スミのゴールネットをきっちり揺らす。「本当に選手たちが頑張ってくれて、良い時間帯が前半は特に長く続いたのかなと思います」とは前田監督。2-0で試合はハーフタイムへ折り返す。

「後半はもっと人にタイトに、リスクを冒してでも攻守に行くところを、ちょっと変えました」と明神智和コーチも明かしたG大阪ユースは、ハーフタイムを挟むとようやく積極的なプレーが増加。「前からマンツーマン気味にハメにいった結果が、ミスを誘発してマイボールが増えましたし、相手の流れも悪くなってきましたね」とは南野。高まる反撃ムード。漂うゴールの香り。

 ゲームリズムを失い掛けていた中で、煌めいたのはまたも“ジュビロの右”。後半17分。ボランチのMF亀谷暁哉(3年)がサイドへ展開すると、ここにもオーバーラップしてきた松田は「自分で中に切れ込んでも良かったんですけど、京樹が先制点の時にパスを出してくれたので、恩返しですね(笑)」とラストパス。李の左足シュートはパーフェクトな軌道でゴール左スミへ吸い込まれる。3-0。さらに点差が開く。

 G大阪ユースもチャンスは作り出す。27分にはMF吉原優輝(3年)の浮き球パスから、走ったFW日笠蓮康(2年)のシュートは枠の左へ。34分にも右サイドへドリブルで流れた吉原が、そのまま放ったシュートは、しかしゴールの右へ。「後半は前半より流れは良かったんですけど、最後の質のところで決め切れなくて……」(吉原)。どうしても1点が遠い。

 意地を見せたのはトップ昇格が発表されたばかりのストライカー。45分。MF田中彪雅(2年)のパスを受けた南野は、右から切れ込みながらフィニッシュ。いったんは磐田U-18の守護神であり、G大阪ジュニアユース時代のチームメイトでもあるGK森脇勇人(3年)のファインセーブに遭ったが、こぼれを自ら拾って得意の左足でゴールへ突き刺す。

「サポーターも応援してくれている中で、少しでも見てくれている人への感謝の気持ちを出すことが選手の仕事だと思うので、最後まで諦めない気持ちを持ってやりました」という9番のゴールでホームチームが一矢を報いるも、ファイナルスコアは3-1。「1点は獲られましたけど、3点獲って連敗脱出できたのはメチャクチャ大きいですし、今後の優勝争いに勢いが付くんじゃないかなと思います」と森脇勇人も口にした磐田U-18が、連敗を3でストップ。暫定2位へと浮上する結果となった。

 前述したように磐田U-18は前節から3バックを採用しているが、そのゲームでは名古屋グランパスU-18に1-4と大敗。選手たちも新システムに戸惑いを隠せず、アグレッシブさを出せないままに失点を重ねてしまったという。

 だが、この日のピッチに立った選手は次々に手応えを口にする。「新しいシステムになって、自分もやり方がイマイチわかっていない状況やったんですけど、今日は長いボールを使えたり、近くを使えたり、自分の特徴もがっちりハマるなという感じで自信になりました」(森脇勇人)「先週はまだ初めてで、守備でも攻撃でも迷いながらやっていたプレーも多かったんですけど、上手く練習から調整して、今日は違和感なくできるようにはなったと思います」(伊藤)。

 印象的だったのは7番の躍動だ。名古屋U-18戦ではスタメンから外れ、「今週の1週間はとにかく集中して、元々出ている選手よりもいろいろな面で熱量を持ってやることを意識していました」という松田は、前節から7人のスタメンが入れ替わったこの一戦でキャプテンマークを巻き、アグレッシブな攻撃参加で1ゴール1アシストを記録してみせた。

 その松田が試合後に「みんな練習の中でもうまく行かなかったことを話し合ったり、3バックでも4バックでも、どっちになっても対応できるような形で取り組んでやっているので、完成形ではないですけど、たぶんこのチームならどっちもやれると思います」と語っていた通り、おそらく指揮官にシステムへのこだわりはない。

「選手にはどんどんチャレンジしてほしいということを伝えているので、僕自身もそういう姿を見せていけたらいいなと思っています」と話す前田監督の基準は明確。『自分たちはアグレッシブか?』。それは言うまでもなく、コーチングスタッフにも当てはまるようだ。

 加えて、他のコーチやアスレティックトレーナーに任せることなく、この日は出場機会を得られなかった選手の“居残りダッシュ”を自ら主導していた監督の姿を、他の選手たちが見ていないはずがない。

「今日は勝てましたけど、うまく行かなかったことももう1回チームの中で内省して、課題を直していければ、このチームなら絶対勝てると思うので、誰が出ても勝てるようなチームになれるように、高い意識を持って練習から取り組んでいきたいです」(松田)。

 首位のサガン鳥栖U-18との勝ち点差は、1試合消化が少ない状況で7ポイント。クラブのレジェンドに率いられたサックスブルーの若武者たちが、真剣に頂点を狙うだけのチーム力を纏いつつあることに、疑いの余地はなさそうだ。

(取材・文 土屋雅史)
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