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確かな野心を秘める突破者。FC東京U-18MF俵積田晃太が歩む青赤の未来を担うドリブラーへの道

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FC東京U-18のキレキレドリブラー、MF俵積田晃太

[10.1 高円宮杯プレミアリーグEAST第16節 横浜FMユース 2-2 FC東京U-18 横浜国立大学フットボール場]

 ドリブルの切れ味はタレントひしめくプレミアの中でもトップクラス。勝負の1年となるアカデミーラストイヤーの前半戦は、なかなか思うようにプレーできなかっただけに、今まで以上にチームの勝敗を担える選手としての自覚は、増し続けている。

「もうチームを引っ張っていかないといけない存在なので、みんなを引っ張っていこうという気持ちで毎日やっていますし、プレミアでもまだ全然優勝のチャンスはあると思っているので、そのチャンスを逃さないように、みんなで一致団結して勝っていきたいです」。

 トップチーム昇格の決まったFC東京U-18(東京)のキレキレドリブラー。MF俵積田晃太(3年=FC東京U-15むさし出身)が前へと挑み続ける推進力は、そのままチームをより高い場所へと連れて行くための推進力とイコールである。

 いろいろな意味でスペシャルなゴールだった。横浜F・マリノスユース(神奈川)と対峙したプレミアのアウェイゲーム。前半に2点を先制された一戦は、FW熊田直紀(3年)の超絶ゴラッソで1点を返したものの、なかなか次の得点に届かない。だが、敗色濃厚の後半45分に11番の左足が火を噴く。

 右サイドから蹴り込まれたクロスに、ファーで待っていた俵積田の腹は決まっていた。「クロスを上げる時は逆サイドの選手が入るということはチームの約束なので、そこで入れば何かが起きるということを考えて走りました」。全速力でファーサイドへ突っ込むと、躊躇なくダイレクトボレーで左足一閃。ボールはゴールネットへ鮮やかに突き刺さる。

「正直に言うとあそこまで良いシュートになるとは考えていなかったんですけど、とにかくあの時間だったらシュートを打たないといけないので、左足に当ててゴールの枠に入れれば、キーパーが弾いてこぼれ珠になるかもしれないですし、そのままゴールに入るかもしれない、という想いで打ちました」。終了間際に飛び出したスーパーゴールが、チームに貴重な勝ち点1をもたらした。

 実はこの1点は今シーズンのプレミア初ゴールだった。新チームが立ち上がって程なくしたタイミングで、俵積田は鎖骨の骨折に見舞われてしまう。「今年はプレミアでやってやろうという気持ちも強かったですし、一番大事なトップ昇格を考えても重要な時期だったので、『一番嫌な時期にケガしちゃったな』と思っていました」。4月のリーグ開幕にも間に合わないような重傷だった。

「その頃は焦っていましたね。『早くコンディションを戻さなきゃな』とか、『チームのみんなに置いていかれないようにコミュニケーションを取らなきゃな』とか、いろいろと考えることがいっぱいあって、混乱していた時期だったかなと思います」。それまでであればボールを蹴って解消していたような“モヤモヤ”も、ピッチに立てないがゆえに晴らすこともできない。難しい状況に置かれていた18歳を支えていたのは、やはり家族の存在だったという。

「その頃の支えとしては、家族の存在が大きかったかなと思います。ケガしていた時に親が凄く丁寧に栄養管理をしてくれたり、『最近の調子はどう?』とかいろいろ話してくれて、それがとても励みになりました」。はやる気持ちを抑えつつ、復帰の時に向けて丁寧に時間を積み重ねていく。そして、ようやく戦線復帰を果たすと、クラブからもトップチームへの昇格が俵積田へ告げられる。

「いろいろな感情が来ましたね。ホッとしましたし、メチャメチャ嬉しかったですし、感謝の気持ちもありましたし、いろいろな気持ちがごちゃ混ぜになっていました」。離脱していた期間が長かったからこそ、より気付いたこともある。家族。チームメイト。チームスタッフ。多くの人の支えがあって、自分はサッカーを続けて来られたのだと。そういう意味では、苦しい経験も自身の成長には必要なものだったと言えるだけの時期を過ごしてきたこともまた間違いない。

 6年間を過ごしたアカデミーを卒業し、FC東京でプロサッカー選手のキャリアをスタートさせる俵積田にとって、もうそのステージは憧れの場所なんかではない。「プロになってからはまずスタメンを獲って、若い選手の中でもずば抜けた存在になっていきたいですし、FC東京はまだJ1の優勝がないと思うので、自分がそこで主力になって優勝したいです」。

 圧倒的な切れ味のドリブルを搭載した、確かな野心を秘める突破者。青赤の未来を逞しく担う覚悟が、いよいよ俵積田に備わりつつある。



(取材・文 土屋雅史)
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