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選手権へ向けた好バウト。地に足をつけて原点に立ち戻る実践学園の、チームの積み重ねを武器に3連覇を目指す堀越のいま

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堀越高は4ゴールを奪って実践学園高を撃破!

[10.2 高円宮杯東京1部リーグ第15節 実践学園高 2-4 堀越高]

 どちらも昨シーズンの全国大会を経験しているだけに、周囲からの期待も小さくないことは十分に理解している。だが、今年のチームは今年のチーム。もがいて、悩んで、それでも何とか前を向きながら、最後の大会へ向かって懸命に準備を整えている。

「今年のチームで全国に行こうという話はしていますし、そのためには目の前の試合を1つ1つ勝っていかなければいけないわけで、そこには練習でやったことがそのまま全部試合に出ると思うので、練習からしっかりやっていかないといけないと思います」(実践学園高・百瀬健)「もちろんプレッシャーはありますけど、目の前の試合が大事だとチームでも話しているので、チームとしては3連覇が一番の目標ですけど、まずは最初の試合を全員で見据えて、1試合1試合戦っていきたいと思います」(堀越高・吉年穣)。

 課題と収穫の混じり合ったナイトゲームはアウェイチームに軍配。2日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2022東京1部リーグ(T1リーグ)第15節で実践学園高堀越高が対戦。3点を先行された実践学園も2点を返したものの、最終盤に突き放した堀越が4-2で勝利。高校選手権前の最後の公式戦を白星で飾っている。

「前回の試合、前々回の試合と、入りの部分で先制点を獲られる形が多くて、その部分を改善しようと今週は守備を重点的にやってきました」とキャプテンのMF吉年穣(3年)が話した堀越は、ソリッドな4-4-2のシステムでバランスを堅持しながら、10分には素早いアタックからMF東舘大翔(3年)のスルーパスに、飛び出したMF小泉翔汰(1年)のシュートは右ポストにヒットするも、鋭いアタックを繰り出すなど、まずは丁寧にゲームを立ち上げる。

 一方の実践学園はチーム事情で数名のレギュラークラスを欠き、T1デビューの選手もいる中で、「こういう逆境でそれぞれの選手の働きがどれぐらい出てくるかなというところで、いろいろ試したところもありました」と鈴木祐輔コーチが話したように、新たな組み合わせに着手。11分にFW瀧正也(3年)のパスからMF福永翼(3年)が放ったシュートは、わずかに枠の右へ逸れるも好トライ。以降も縦に速い攻撃で相手ゴール前を窺う。

 31分は実践学園に絶好の先制機。MF松田昊輝(2年)が獲得したPK。キャプテンのDF百瀬健(3年)が右を狙ったキックは、堀越GK吉富柊人(2年)が横っ飛びでビッグセーブ。すると、逆に41分のチャンスを仕留めたアウェイチーム。MF日隠ナシュ大士(3年)を起点に東舘が左へ振り分け、小泉のグラウンダークロスに走り込んだMF中村健太(2年)のシュートがゴールネットを揺らす。完璧な崩しからの先制点。堀越が1点をリードして最初の45分間は終了した。

 後半に入ると「PKを止めてから自分たちのリズムになってきて、徐々にパスも繋がってという感じでした」と日隠も口にした堀越の勢いが鋭い。3分には「今日はまさに体育祭があって、アイツは200メートルを5,6本走ってここにいる感じです」と佐藤実監督も明かした中村がこの日2ゴール目を叩き出せば、22分には中村のCKから最後は交代で入ったばかりのFW田邉陽向(3年)もチームの3点目をゲット。着々と点差を広げていく。

 ただ、終盤にホームチームも吹っ切れる。流れを変えたのは交代カード。37分には右から百瀬が入れたクロスから、途中出場のMF古澤友麻(2年)が放ったシュートはクロスバーに当たるも、最後はFW牧山翔汰(3年)がプッシュして1点を返すと、45分にも投入直後のMF吉川大地(3年)が古澤のパスからフィニッシュ。こぼれをやはり途中出場のMF小熊快(2年)が押し込み、たちまち1点差に。「途中交代の選手が結果を出すということは今年のチームとして掲げていること」という百瀬の言葉を証明するような意地を見せる。

「去年の選手権ではうまく行っていた印象がある締めの部分も、今年はまだ全然ダメですね」と日隠も言及した“締め”の時間帯で2失点を喫した堀越は、それでも再び突き放す。45+3分。10番を背負う東舘が左へラストパスを通すと、小泉が確実に右スミのゴールネットへボールを送り届ける。最終盤に激しく動いたゲームは、4-2でタイムアップ。堀越がリーグ戦の連敗を2で食い止め、勝利の余韻を持って選手権へと歩みを進める結果となった。

「僕も今モチベーションビデオを作っていて、活躍しているいろいろな先輩たちからコメントをもらって、『3連覇だ』とか『そのプレッシャーを楽しんでやってくれ』とか他人事のように言っていますけど(笑)、それまでチームがバラバラだったとしても、そのまま空中分解しては終わらない感じが、最後のこのタイミングでカチッとハマってくるのが毎年実感としてあるんですよね」と話した堀越の佐藤監督は、続けてこういう話を口にする。

「自分たちでキッカケを作りながら、いろいろなことを繰り返しながら、99回大会も100回大会の時もハマってきたんです。そういうものが見えているのは先輩のおかげですし、積み重ねてきたモノがみんなで共有できているのかなと。やっていることは大して変わっていないんですけど、『ああ、今年はこういうことをやるんだ』ということは、ちょっと表現できるようになってきたかなと思います」。

 全国に出場した過去2年の選手権では、いずれの大会でもピッチに立った日隠は「先輩たちが残してくれたものもあるので、3連覇はしないといけないという想いはあるんですけど、メチャメチャプレッシャーがあるわけではないです」とリラックスした構え。キャプテンの吉年も「やっぱり選手権にはラストという緊張感と、やり切らなくてはいけないというプレッシャーはありますけど、楽しみではあります」とこちらも頼もしい言葉を残している。チームとしての積み重ねも武器に、ここに来ていよいよハマり出した堀越が同校初となる東京3連覇へ堂々と挑む。

 この夏には話題のWINNER’Sを決勝で倒し、ReelZ Championshipを制するなど、着実にチームとしての総和を大きくしてきた実践学園。「自分たちはWINNER’Sさんとの試合みたいに、大会になるとみんな1人1人が楽しむことはできると思いますし、まとまった時にはあの大会みたいに良い結果が出るような、流れが良くなればどんどん乗っていくチームだと捉えています」と話すのはキャプテンの百瀬。ただ、この日の堀越戦では少しギアの入る時間が遅く、悔しい敗戦を喫することとなる。

「本当にちょっとしたことで、今日も堀越さんの方が正確にクリアしていたり、ヘディングもウチは飛ばしているだけで、相手はちゃんと繋げていて、そういうところで『51対49』だった流れが、いつの間にか『60対40』になっているから、基本的なことだけしっかりやりましょうと。地に足をつけて戦う中で、サッカーの原点をしっかりやれるチームになろうねと話しています」とは深町公一監督。ここから改めて見直せるのはディテールの部分。意識の部分に訴えかけつつ、伝統のシンプルかつ力強いスタイルを突き詰めていくのみだ。

 チームの指揮を任されている鈴木コーチが「今年の3年生はこの夏で初めて宿泊形式で合宿したように、思ったようにサッカーができなかった世代なので、なおさら頑張ってほしいという想いはありますね」と語った言葉が印象深い。今年の代はなかなか結果に恵まれていないが、牧山がみんなの思いを代弁する。「選手権を獲れば自分たちも『良い代だったね』と言われると思いますし、今はみんな士気が上がっているので、日々の練習から頑張っていきたいです」。掲げる合言葉は『心で勝負』。5年ぶりとなる冬の全国へ。実践学園の飽くなきチャレンジはまだまだ続く。

(取材・文 土屋雅史)
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