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2年生FW神田奏真が圧巻の1試合5発!後半に中盤の攻防で上回った静岡学園が東福岡に逆転勝ち!

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後半24分、静岡学園高FW神田奏真が頭でこの試合5得点目のゴール

[10.12 高円宮杯プレミアリーグWEST第8節 静岡学園高 6-3 東福岡高 時栖富士]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 WESTは12日、延期されていた第8節の暫定5位・静岡学園高対同4位・東福岡高戦を行った。2点ビハインドからFW神田奏真(2年)の5ゴールなど6得点を奪い返した静岡学園が、6-3で逆転勝利。静岡学園は順位を4位へ上げている。

 静岡学園は今季、9年ぶりにプレミアリーグ復帰。7月までは6勝2分3敗と好成績を残していたが、9月の再開後は2分2敗で、この日はU-18日本代表GK中村圭佑(2年)とU-17日本高校選抜MF白井柚希(3年)を欠く中での戦いだった。

 一方の東福岡は開幕7試合で3勝4敗だったものの、高体連屈指のGK須田純弥主将(3年)や10番MF下川翔世(3年)の復帰、より細部までこだわったチーム作りによって状態を上げ、8戦目以降は4勝2分と巻き返しに成功。10月に入ってからの2連敗を止めるべく、アウェーに乗り込んできた。

 前半は完全に東福岡ペース。コンパクトな陣形から連動したプレッシャーを掛けて相手をサイドへ追いやり、2人3人掛かりでボールを奪い取る。4-4-2システムを組んだ静岡学園は中盤が全く機能せず、ドリブルも前半存在感のあった東福岡CB園文来(3年)や右SB吉田大晃(3年)に封じられていた。

 逆に東福岡は右サイドから鋭く相手の背後を突くMF浦十藏(3年)が園の縦パス一本で抜け出すなど、圧倒的なスピードで脅威に。また、10番FW下川翔世(3年)がボールを収めて攻撃の起点となり、抜け出しから決定的なシュートも放った。連動したパスワークから得意のオープン攻撃を展開。静岡学園は何とか凌いでいたが33分、東福岡が先制点を奪う。

 下川が左サイド後方からFKを蹴り込むと、GKの前に飛び込んだ吉田が頭で合わせてリードを奪った。静岡学園の川口修監督は前半に関して、「(東福岡に)穴が無かった。強度も高かったし、ウチは中盤が無かった」と振り返る。失点後は全体的に前へ出る姿勢が出てドリブル突破、ワンツーにチャレンジ。だが、次の1点も東福岡が奪う。

 後半2分、東福岡はカウンターからMF楫山拓磨(3年)が左サイドを突き、PAへスルーパス。抜け出した下川がGKをかわして左足シュートをゴールへ流し込んだ。直後にも東福岡は前線からのプレッシングで相手を後退させ、GKに鋭く襲いかかる。

 だが、静岡学園GK山口航生(2年)が、切り返しでプレスを剥がしてグラウンダーの縦パス。紙一重の攻防から、ボールを味方に通したことで展開は一変する。静岡学園はここから素早くボールを運ぶと、左のMF寺裏剣(3年)がDFをドリブルで剥がしてクロス。ファーサイドの神田がダイビングヘッドで合わせて1点差とした。

 静岡学園は後半開始からMF西井大翔(3年)をトップ下へ投入。4-2-3-1へシステム変更したことが功を奏す。両校にチャンスが生まれる中、静岡学園は13分、10番MF高橋隆大(3年、G大阪内定)が自ら獲得したFKを右足で蹴り込む。これを神田が頭でゴール左へ沈めて同点。さらに17分、右SB森下蒼大(3年)からのパスを受けた高橋がタッチライン際でキープ力を見せつけ、ボールを繋ぐ。そして、オーバーラップした森下がクロスを上げると、ニアの神田が左足ダイレクトで合わせてハットトリックを達成した。

 前半とは全く異なる展開に。東福岡の森重潤也監督は「整理してみないと分からないですけれど」と前置きした上で、「(前半のように)相手にプレッシャーは掛けられていなかった」と指摘する。前半は前線の選手たちが勇気を持ってプレッシング。警戒していた高橋や寺裏にボールを触らせず、シュート1本に抑え込んだ。質と量で静岡学園のテクニックを凌駕。だが、後半は、中盤の枚数が増えた相手にパスを出し入れされたことでサイドの守りに遅れが生じてしまっていた。

 そして、3連続失点。それでも東福岡は19分、カウンターから吉岡が抜け出し、下川がCKを獲得。この左CKを下川が蹴り込むと、ニアのCB井上碧斗(2年)が頭でファーのネットへ決めて3-3とした。

 だが、後半の静岡学園、FW神田のプレーは圧巻だった。失点から1分後の20分、静岡学園は右サイドを突破した高橋がPAの西井へパス。そして、左の寺裏が1タッチでゴール前に浮き球を入れる。これを胸コントロールした神田が左足シュートを叩き込み、再び勝ち越した。

 静岡学園はさらに24分、高橋が右サイドから仕掛けてクロス。これをファーの神田が豪快なジャンプヘッドで決め、1試合5得点を記録した。神田は「今日勝たないと、というのはみんなありましたし、FWが点を決めるというのはそれが仕事だと思うので、点決めれて良かったです」。この後も静岡学園は切り替えの速い守備でボールを奪還。サイド攻撃やセットプレーで決定機を作り出す。

 26分には、高さを発揮し続けていた名古屋内定CB行徳瑛主将(3年)がゴール至近距離からヘッド、31分にも神田のヘディング弾がゴールを捉える。だが、東福岡GK須田がいずれも驚異的な反応でセーブ。世代屈指の守護神が意地を見せたが、東福岡は雰囲気を変えられなかった。

 森重監督は「(雰囲気を変えるような)メンタルだけじゃなく、技術も、球際も」まだまだであることと指摘する。一方の静岡学園は45分にも高橋の右CKをニアの神田がそらし、最後は森下が右足でダメ押しゴール。静岡学園の川口監督は、後半に中盤の攻防で上回ったことを勝因に挙げる。

「(システムを変えた後半は、)中盤でパスコースがたくさん増えてボールの出し入れをするようになった。(中盤で)タメることができるようになって、サイドも空いたから。中盤がボールを拾える、繋げる、配球できるようになったから流れが変わった。苦しいところがあったけれど、システム変えて後半は中盤でウチが上回ったかな」とコメント。ダブルボランチのMF保竹駿斗(3年)とMF高野仁(3年)、トップ下の西井の3選手が積極的にボールを引き出してリズムを作り、果敢な仕掛けを繰り返したサイドプレーヤーが活躍、そして2年生FW神田の得点力が爆発した。

 エース高橋は気持ちの部分の変化も強調する。「(後半、)マジで気持ちをグッと入れた。気持ちがあればこれくらいの試合ができるポテンシャルのあるチームやと思うんですけれども、やっぱ一人でもヌルいのがいたらできないですし、それが後半はしっかりファイトしたので(勝因は)気持ちのところかなと」。静岡学園は今後に繋がる後半戦初白星。この後、C大阪U-18戦、東福岡戦と続くプレミアリーグでも静学らしいテクニックと強い気持ちを発揮し続けて選手権予選を迎える。


(取材・文 吉田太郎)
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