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大津が東福岡を2-0で破り、プレミア5連勝!「ちょっとしたところ」で上回り続けて選手権で舞う

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後半16分、大津高FW山下基成が先制ゴール

[11.19 高円宮杯プレミアリーグWEST第20節 大津高 2-0 東福岡高 大津町運動公園球技場]

“公立の雄”が止まらない。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 WESTは19日、第20節1日目を行い、大津高(熊本)対東福岡高のライバル対決は大津が2-0で勝利した。

 公立校の大津が“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグWESTで5連勝。そして、選手権へ弾みをつける1勝だ。序盤は互いに後方でのパス回しからロングボールを交えた攻撃。その中、先週に選手権出場を決めている大津は、CB野田翔升(3年)、U-17日本代表CB碇明日麻(2年)の両DFの正確なフィードを起点とした攻撃からゴール前のシーンを作り出す。

 この日、大津は主力ダブルボランチが怪我で不在。だが、平岡和徳総監督が才能に注目するMF嶋本悠大(1年)がスムーズにボールを動かし、好パス、飛び出しでチャンスに絡む。またMF坂本龍之介(3年)も守備面などで貢献。その大津は右の10番、U-17日本高校選抜MF田原瑠衣(3年)が縦へ切れ込み、時間をかけずにクロスを上げ切るなど、サイド攻撃で相手にプレッシャーを掛けた。

 一方の東福岡も神戸内定MF浦十藏(3年)やCB陣を欠く中での戦いだった。選手権予選決勝での敗戦から切り替えて戦う東福岡は、10番CF下川翔世(3年)が最前線で気迫十分の動き。前線でボールを幾度も収めてチャンスの起点になり、またFKを獲得していた。CB吉田大晃(3年)らの的確な守りでボールを奪い返すと、注目GK須田純弥主将(3年)からビルドアップ。MF西田頼(2年)の展開を変えるパスやサイドからの崩しで攻め返す。

 互いに切り替えが速く、攻守が激しく入れ替わる。徐々に押し込む時間帯を増やした大津は、36分に右CK後の混戦からゴールをこじ開けようとするが、東福岡DF陣が執念の守り。大津は44分、左SB田辺幸久(2年)の絶妙な左クロスをU-19日本代表候補FW小林俊瑛主将(3年)が頭で合わせる。だが、シュートはわずかに右へ外れてしまう。

 後半立ち上がりは東福岡の仕掛ける回数が増加。大津は受けてしまうシーンが幾度かあり、ベンチの山城朋大監督から「ちょっとしたところが弱い!」と声が飛んでいた。後半13分、東福岡は両SHを交代し、ギアを上げる。だが、この日の大津で特に光ったのが右SB坂本翼(3年)と左SB田辺の両DFの守り。東福岡の強みであるサイドの仕掛けを1人で止め、速攻の起点となるなど相手を上回るポイントになっていた。

 後半16分、大津が変化をつけた攻撃で先制点を奪う。右に張ることが多かった田原が中へポジションを取り、そこへ縦パスが入る。そして、田原はコントロールからタイミングをズラしてループでのスルーパス。これで抜け出したFW山下基成(3年)が右足シュートをねじ込んだ。山城監督が「(コーチ陣から厳しく指摘される中)ゴールへのこだわりを練習から追求していて、自分の中でフィードバックしてどんどん良くなっている」という3年生ストライカーのゴールで1-0。この後、オープンな展開となる中、互いにチャンスを作りあった。

 大津は田原のカットインシュートや山下の抜け出しからのシュート。だが、東福岡はGK須田が素晴らしい反応で阻止するなど2点目を許さない。東福岡もオープン攻撃から下川がミドルシュートを放つなど反撃。35分にはFW阿部来紀(2年)の突破を起点とした攻撃から右クロスにMF保科鉄(2年)が飛び込み、43分には左クロスをMF植田稔真(3年)が頭で合わせる。

 だが、精度を欠いたり、DFに体を寄せられるなど大津GK西星哉(3年)を脅かすことはできない。逆に大津は後半45+1分、オフサイドギリギリで抜け出した小林が豪快な右足シュートで好守連発の須田を攻略。大津は前線でボールをロストする部分や、守備対応が遅れる部分など課題もあったが、2-0で勝利し、5連勝とした。

 大津は、準々決勝で敗れたインターハイの課題を「9月以降に持ち越さないように」(山城監督)、チーム全体で共有。サイド攻撃の徹底、またSBの守りの強化に取り組み、それが成果として現れている。

 この日の試合中も山城監督は指摘していたが、これから重視していくのは「ちょっとのところで勝つ」ことだ。昨年度の選手権決勝で敗れた青森山田高は、常に相手よりも速く反応してこぼれ球を拾い、攻撃ではクロスを上げ切り、ゴール前でまた先にボールに触れる。そのような「ちょっとのところ」で上回り続けての全国制覇だった。

「ちょっとしたところで先に触るとか、ちょっとしたところでマイボールにするとか、そこを勝ち続けることが大事かなと思っています」と山城監督。田原とMF香山太良(3年)やMF中馬颯太(3年)、MF岩崎大翔(3年)の両翼がサイドの攻防で常に優位性を保ち、拾い合いで勝ち、自陣ゴール前でも碇らが先に触る。この日はSBの守備やゴール前の「ちょっとのところ」の攻防で強敵・東福岡を上回っての勝利。プレミアリーグで5連勝の大津は、今後のプレミアリーグ、そして日本一を目指す選手権で仮に悪い内容の試合があっても「ちょっとのところ」で常に上回って勝つ。

 チームのテーマは昨年度のチーム力、成績を「超越」することだ。小林は「高校屈指のプレミアリーグでこういう5連勝ができているということは自分たちの自信にもなっていると思う。日本一を目指せる、日本一になれるチームだと思っています。県大会やプレミアリーグで出た課題を少しでも改善しなければいけないですし、ゴールのところでももっと貪欲にならないといけないと思うので気持ちのところでもしっかりと整理していきたい」。インターハイの悔しい敗戦から「変わらないといけない」(小林)と取り組んできた“公立の雄”。好調が続くが、全国制覇のためにもっともっと突き詰め、成長を続けて選手権で舞う。

(取材・文 吉田太郎)
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