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[MOM4120]川崎F U-18FW五木田季晋(3年)_苦しい時期を過ごした献身と思考のストライカーが「オレのゴール」で優勝を引き寄せる!

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貴重な決勝ゴールでチームに優勝をもたらした川崎フロンターレU-18FW五木田季晋

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.20 高円宮杯プレミアリーグEAST第20節 川崎F U-18 1-0 FC東京U-18 神奈川県立保土ヶ谷公園サッカー場]

 決して自分だけが目立とうとするタイプではない。副キャプテンを託されているだけあって、常に調和を重んじるプレーが、チームの歯車を円滑に回していく。それでも、9番だ。ストライカーだ。ゴールが欲しくないはずがない。それを重ねることでこの世界を生き抜いてきたのだから。

「今日は個人的にもチーム的にも上手くいかないことの方が多くて、個人的なところで言うと本当に何もさせてもらえてなかったので、『何とか1点獲ってチームを勝たせたいな』という想いでいた中で、最後に1点獲れたのは良かったと思います」。

 献身と思考のナンバー9。川崎フロンターレU-18(神奈川)不動のストライカー。FW五木田季晋(3年=川崎フロンターレU-15出身)が一番大事な試合で、一番大事なゴールを泥臭くさらっていった。

「シーズンの始めに9番をもらった時に、『自分が点を獲ってチームを勝たせたい』という気持ちがありました。でも、点を獲れない時期に自分の責任を感じて、自分の力不足をずっと感じながらやってきた1年間でもあったんです」。

 ストライカーは苦しんでいた。夏前まではコンスタントに得点を奪ってきたものの、チームの結果が停滞したタイミングで、自分のゴールもピタリと止まる。同時期にはSBSカップに出場するU-18日本代表にも選出。世代トップレベルの選手たちと刺激的な時間を過ごしたが、それも自身の結果には繋がらない。

 だが、安易な道へ逃げるような男ではない。それまで以上にベクトルを自分に向け続ける。「あの時期もゴールを獲れてはいなかったですけど、長橋さんのアドバイスを自分のトレーニングに入れていきながら、自分の積み重ねてきたものには自信があったので、そこだけを信じてやってきました」。

 10月15日。3500人を超える観衆を集めた、等々力開催の横浜FCユース戦。五木田は後半のアディショナルタイムにダメ押しゴールを記録する。プレミアでは実に6試合ぶりの得点。ようやく重圧から解き放たれたストライカーは、そこから3戦連発。「積み重ねてきたもの」は自分を裏切らなかった。

 勝てば優勝というシチュエーションで迎えた、この日のFC東京U-18戦。劣勢のチームの中で守備に奔走する時間も長かったフォワードへ、チャンスは一向に巡ってこない。スコアは0-0で終盤まで推移していく。おそらくその機会は一度あるかないか。とにかく神経を研ぎ澄ませる。

 後半39分。左サイドでDF柴田翔太郎(1年)が、後方のDF土屋櫂大(1年)へボールを戻す。「土屋があそこでボールを持った時に、クロスが来るというのは練習の中でもずっとやっているので、『あそこに来るだろうな』と思って」夢中で飛び込んだポイントへクロスが入ってくる。懸命に身体を投げ出すと、次の瞬間には視界の先に、ゴールの中へ転がり込むボールが見える。

 ゴール裏に詰め掛けた水色のサポーターと歓喜を分かち合う9番とチームメイト。優勝を手繰り寄せた、魂と執念の決勝点。「自分が打って、それが相手に当たって入ったのかなと思います。まあ、自分のゴールだと思います。もう見えなくて、自分に当たって、気付いたらゴールに入っていたので、まあ、オレのゴールかなと思います。最初は僕も大関のゴールなのかなと思ったんですけど、喜びに行った時に『誰のゴール?』って聞いたら僕だと言っていたので、『ああ、オレのゴールだな』と思いました」。珍しく主張し続けた『オレのゴール』に、ストライカーの矜持が滲んだ。

 “見せ場”は試合後にも待っていた。まずはこの日のキャプテンマークを巻いたMF大関友翔(3年)が掲げた“優勝フロ桶”が、五木田の元へ回ってくる。流れは明らか。本人も役割は理解していたようだ。「いつもは松長根の役割なんですけど、順番的に自分になっちゃったのかなという感じでしたね(笑)」。1度。2度。3度。全力で“フロ桶”を掲げるものの、後ろの選手たちはノーリアクション。仕事完遂。しっかり次の長橋康弘監督へとバトンを繋ぎ切った。



 シーズンはまだまだ続く。リーグ戦の2試合を戦い終えた先には、大事な1試合が彼らを待っている。「この最高の仲間とやれる試合はあと3試合しかないので、とにかく勝ちながら、最高の思い出を作れるように、強いフロンターレをまた後輩たちにも見せていけるように、頑張りたいなと思います。国立競技場という舞台でできることは凄く光栄ですし、あの舞台で点を獲りたいです」。

 献身と思考のナンバー9。ヤングフロンターレが願い続けてきた日本一の栄冠を手にするためには、「どの試合も自分が主役になるつもりでやっている」ストライカーのゴールが、絶対に欠かせない。


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(取材・文 土屋雅史)
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