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2冠へ向けてプレミアで積み重ねる前橋育英。雨中のアウェー戦、市船の勢いに屈せず前向きドロー

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後半5分、前橋育英高MF大久保帆人が右足で同点ゴール

[11.23 高円宮杯プレミアリーグEAST第13節 市立船橋高 1-1 前橋育英高 グラスポ]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 EASTは23日、延期されていた第13節の市立船橋高(千葉)対前橋育英高(群馬)戦を行い、1-1で引き分けた。市立船橋は残留圏9位浮上。前橋育英は7位で残り2節へ向かう。

 選手権出場を決め、インターハイに続く全国2冠に挑戦する前橋育英と、選手権千葉県予選決勝で敗れた市立船橋。状況は異なるものの、目の前の一戦に懸ける思いは同じだ。特に市立船橋の気合は十分。選手権予選敗退後の2試合を連勝している勢いそのままに、選手権の優勝候補・前橋育英に襲いかかった。

 序盤から守備のアプローチが鋭く、球際ではガツッと厳しい。奪ったボールを素早く相手の背後へ入れ、そこへプレッシャーを掛けていく。また、球際で上回ったり、相手の攻撃を跳ね返すたびにホームの観衆が大いに沸いていた。

 立ち上がりを過ぎると、前橋育英がU-18日本代表MF徳永涼主将(3年)中心にボールを落ち着かせて、スペースを見つけながらビルドアップ。また、U-17日本代表FW小池直矢(3年)が制空権を握って見せる。ゴール前のシーンも徐々に増やし、20分には奪い返しからMF大久保帆人(3年)が1タッチパスをPAへ入れ、FW高足善(3年)が走り込む。加えて、MF青柳龍次郎(3年)がワンツーでPAへ潜り込むシーンもあった。

 ただし、市立船橋はCB藤田大登(3年)とCB大塚清瑚(3年)、ゲーム主将のMF北川礁(3年)が中心になってゴール前へのボールを先に触り続ける。すると32分、MF太田隼剛(2年)のループパスに反応したU-17日本代表FW郡司璃来(2年)がオフサイドギリギリのタイミングで抜け出す。GKをかわした郡司が左足シュートをゴールへ流し込んで1-0。前半唯一のシュートを見事得点へ結びつけた。

 前橋育英は選手権へ向けて、目の前の一試合一試合に集中しながら積み上げている最中。前節は大学受験のために主力の多くを欠きながらも流通経済大柏高に勝利し、徳永は「流経戦の勝ちが凄くデカくて、自分だけじゃなくて全員が声を出す集団になってきて、チーム力が一個レベルが上がったと感じています。(出場時間の少なかった)福永(竜也)とかも出て凄く良いプレーしてくれて、士気が上がって雰囲気が良い」という。

 この日は降格圏脱出のため必死の思いが伝わるような戦いを見せる市立船橋と、水たまりのできたピッチに苦戦。だが、その中で改善し、後半は距離感の良いパスワークでゴールへ迫る回数を増やした。また、リーグ戦のアウェーゲームについても山田耕介監督は、「きょうみたいなアウェーの戦いは選手権の雰囲気に似ていると思う。そういう意味では(選手権へ向けて)一試合一試合大事になると思います」とコメントする。

 その前橋育英が後半立ち上がりに追いつく。左サイドから逆サイドへボールを動かしてからアタック。守備がやや後手になった市立船橋に対し、前橋育英は高足が右中間へ深く切れ込んでラストパス。ニアで小池が潰れ、その後方から走り込んだ大久保が右足シュートをゴールへねじ込んだ。
 
 前橋育英は左SB山内恭輔(3年)、日本高校選抜の右SB根津元輝(3年)が積極的に前へ出て、攻撃に厚みを加える。また、飛び込んでくるDFを冷静に見て、1タッチのパスなどで剥がしてクロスまで持ち込む巧さも表現していた。

 それでも市立船橋は後半16分、ルーズボールの攻防から力強くPAへ飛び出した左SB内川遼(2年)がPKを獲得する。キッカーはエース郡司。だが、前橋育英は迷わず右へ跳んだGK雨野颯真(2年)がPKを完璧にストップする。この試合最大のビッグプレー。市立船橋は22分にも左FKをそらし、ファーから飛び込んだ大塚がゴールネットを揺らしたものの、オフサイドの判定でスコアを動かすことができない。

 一方の前橋育英は、ボランチへポジションを上げた根津の推進力あるドリブルや交代出場の左SH福永竜也(3年)のロングスローなどで勝ち越し点を狙う。一方の市立船橋も徹底した攻撃でFK、CKを獲得。また、ロングボールを入れていたが、前橋育英は空中戦で強さを発揮し続けたCB齋藤駿(3年)とCB杉山陽太(3年)中心にシュートを打たせない。前橋育英は終盤のチャンスを活かしきれずに1-1で引き分け。選手たちは勝ち切れなかったことを悔しがる一方、ドローを前向きに捉えていた。

 徳永は「正直、相手の土俵のゲームだったと思うんですけれども、そこで雨野が一本止めて引き分けに持ち込めたことで、さらにチームの雰囲気というのと団結力が上がったと思います」とコメント。そして、「選手権へ向けて修正できるのがプレミアリーグの残り2試合なので、まずはプレミアリーグでしっかりと残留してというところがあっての選手権だと思うので、目先の準備をしたいです」と語った。

 プレミアリーグでの1試合1試合の積み重ねが選手権に繋がる。今秋には3試合連続0-1で敗れるなど、上手く行かなかった時期も。その中で意見を出し合いながら改善を繰り返してきた。徳永は「正解は本当に見つけるのは難しくて、当たって砕けろみたいな感じでその都度自分たちが悪いなと思ったら直して、また新しいものを見つけてみたいにやっている。雰囲気は良いです」。残り2試合で結果を残すとともによりチーム力を引き上げて選手権へ向かう。

 小池は「去年ベスト8で終わって非常に悔しい思いをしたので、(選手権は)絶対に勝ちたいと思いますし、あとは昌平もいて厳しいブロックというのは分かっているんですけれども、みんなが一丸となればできると思うので、頑張っていきたい」。夏の王者は冬も決勝まで積み上げ続けて2冠を達成する。

(取材・文 吉田太郎)
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