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逆転V信じて戦い抜いた神戸U-18が最終節白星。得失点3差で涙も「本当に良い集団」は堂々の2位

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前半43分、ヴィッセル神戸U-18はMF坂本翔偉が左足で先制ゴール

[12.4 高円宮杯プレミアリーグWEST第22節 静岡学園高 1-3 神戸U-18 エスプラットフジスパーク]

 神戸U-18は最終節で素晴らしい勝利も、涙の準V――。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 WESTは4日、最終節を行った。逆転優勝を狙う2位・ヴィッセル神戸U-18(兵庫)はアウェーで4位・静岡学園高(静岡)と対戦。3-1で勝ち、首位・サガン鳥栖U-18(佐賀)と同じ勝ち点43としたが、得失点差で3点届かず、2位に終わった。

 試合終了後、涙の神戸U-18イレブンを前に安部雄大監督は、「本当によく頑張った。オマエたちは本当によく頑張った。胸を張ってくれ。誰も下を向く必要はない」とメッセージを送った。指揮官が「本当に楽しかった」「幸せだった」という1年間。「このチームであと1試合戦う」ことを目指して最終節に臨んだ神戸U-18は、見る人の心を打つような戦いを見せた。

 対戦した静岡学園は選手権予選で敗退しているため、勝っても負けてもこの試合がラストゲーム。セカンドチームの仲間たちも応援に駆けつける中、“静学らしい”90分間を演じて見せる。序盤から静岡学園がボールを保持する展開。MF白井柚希(3年)、MF保竹駿斗(3年)のダブルボランチが前向きにボールを動かし、サイドからの崩しにチャレンジする。

 それに対し、リーグ最少失点の神戸U-18守備陣は相手が中央に入ってくることを許さない。また、前線から追い込んで相手のパスコースを限定。切り替えの速い攻撃からDF背後を狙う。

 トップ昇格内定のMF安達秀都(3年)が正確にボールをさばき、右SB本間ジャスティン(2年)、左SB村井清大(3年)の推進力ある動きやMF蘓鉄航生(3年)の仕掛けを交えた攻撃。37分には、クイックリスタートから前線で精力的な動きを見せていたFW冨永虹七(3年、トップ昇格内定)が左へ抜け出し、ラストパスをMF坂本翔偉(2年)が1タッチで狙う。そして43分、10番MF永澤海風(3年)が奪い返しから浮き球のスルーパス。これに走り込んだ坂本が左足ボレーでゴールに突き刺した。

 試合開始時点での神戸U-18と鳥栖U-18との得失点差は1。前半終了時にその得失点差は2へ開いていたが、CB寺阪尚悟主将(3年、トップ昇格内定)は「自分たち信じて自分たちのサッカーをやって、今まで通りやるしかないと言っていた」。自分たちがやるべきことを再確認して、ラスト45分へ向かった。

 その後半は静岡学園が怒涛の攻撃を見せる。7分には左クロスからCB行徳瑛主将(3年、名古屋内定)が決定的なヘッド。これは神戸U-18GK田村聡佑(3年)にセーブされたものの、前半はやや仕掛ける回数の少なかったMF寺裏剣(3年)とMF高橋隆大(3年、G大阪内定)の両翼が幾度もドリブルにチャレンジし、DFを振り切り、ラストパス、シュートへと持ち込んでいく。

 特に高橋は圧倒的なパフォーマンス。独特のテンポのドリブルは、DF2人がかりでも止まらなかった。そして、左足シュートやMF福地瑠伊(2年)へ決定的なクロス。また、各選手が抜群のキープ力を発揮してドリブル突破し、左SB鈴木新(3年)も2度3度とゴール前へ侵入していた。

 神戸U-18は後半立ち上がりに冨永が負傷交代しており、我慢の展開となった。だが、「みんな最後まで身体を張っていたし、そんなにやられる気はしなかった」と振り返る寺阪や、CB横山志道(3年)、MF田代紘(3年)らが最後まで足を伸ばしてシュートコースを消し、ボールを足に当てるなど得点を許さない。

 迎えた38分、神戸U-18が待望の追加点を奪う。交代出場MF今富輝也(1年)の右CKを永澤が右足ダイレクトボレーでゴール左へ突き刺して2-0。好セーブを連発していた相手GK中村圭佑(2年)をようやく攻略したチームは、40分にもDF背後へ抜け出した交代出場FW有末翔太(2年)が右足ループシュートを決めて3-0とする。

 鳥栖U-18は最終節のスコアを4-0としていたものの、得失点差はまだ2。神戸U-18は連続ゴールで一気に勢いづいた。逆転を信じて各選手がよく走り、身体を張った攻守。ベンチ、応援席も含めて一体となって次の1点を目指した。だが、ラストゲームに懸ける静岡学園も譲られない。連続失点もそれ以上は崩れず、また相手ゴールを目指してドリブルとパス交換。そして、45+6分、保竹の左クロスをCB黒澤翔太(3年)が頭でゴールへ叩き込んだ。直後に試合終了の笛。勝った神戸U-18の選手たちがピッチに崩れ落ちた。

 神戸U-18は得失点差で3点届かずに準優勝。優勝し、12月11日のプレミアリーグファイナル(国立)を戦うという夢は潰えた。安部監督は1年間で差となった「得失点3差」を受け止めた上で、「きょうの試合に関しては3年生が可能性を疑わずにやってくれたのは本当に感謝したいと思います。我々として出し切ったので悔いはないというか……。ただ、彼らを国立に立たせたかったのはありますね。それを叶えてあげられなかったのは申し訳ないなと思います」と言葉を詰まらせながらコメント。それでも、昨年は7位残留で喜んだチームが1年後、2位で悔し涙を流すまで成長した。

 寺阪は今年の3年生について、「本当に仲が良くて喧嘩することもあるんですけれども、尊重し合っていて、凄く良い集団だったし、サッカーだけでなくてプライベートでもみんなで遊びに行ったり、厳しくするところは厳しくして、本当に良い集団だったなと思います」と説明する。

 このチームで優勝したかった。あと1試合を戦いたかった。それを実現することはできなかったが、寺阪は「(このチームの主将ができて)本当に幸せだったし、チームメートだけでなく、スタッフの皆さんも本当に僕たちが優勝するためだけにサポートしてくれていたし、本当に一丸となって優勝を獲りに行くという気持ちが試合で表せたので本当に良かったと思います」とチームに感謝。そして、「僕たちには全然負けない後輩たちばかりなので、来年こそは僕たちのリベンジ果たして、そこで勝って日本一ということを何とかスタッフと目指して欲しいなと思います」と期待した。今季は開幕6戦目まで2勝4敗も、そこから11勝4分1敗でフィニッシュ。ラストマッチも印象的な戦いを見せ、「本当に良い集団」神戸U-18は22年シーズンを終えた。



(取材・文 吉田太郎)
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