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最終節で13戦ぶり勝利のC大阪U-18は残留を懸けたプレーオフへ!清水ユースは無念のプリンス初降格…

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セレッソ大阪U-18が大一番を制してプレーオフへ!

[12.4 高円宮杯プレミアリーグWEST第22節 清水ユース 1-4 C大阪U-18 アイスタ]

 可能性を繋ぐためには、もう勝つしかなかった。だが、夏場以降のリーグ戦は12試合も白星から見放されていたチームにとって、この試合の勝利がそんなに簡単なミッションではないことは、誰もが理解していたことだろう。それでも、やるしかない。負けたくない。落ちたくない。若き桜の戦士たちは、土壇場の土壇場の土壇場で、腹を括ったのだ。

「夏が終わってから1回も勝てていなかったので、崖っぷちになった状況で最後に勝てたことは素直に嬉しかったですし、ホッとしています。何とかこの舞台を後輩に残すために、次に繋げられるステージに進むことができたことは良かったですし、ここまで来たからには全員でやるしかないということを、出発前にここに来ていないメンバーも含めて話し合ったので、そこはみんな表現してくれたかなと思います」(セレッソ大阪U-18・川合陽)。

 苦しんで、苦しんで、ようやく掴んだ13試合ぶりの勝利は、広島決戦への力強い前奏曲。4日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグWEST第22節、プレーオフ圏の10位に付ける清水エスパルスユース(静岡)と、自動降格圏に沈む11位のセレッソ大阪U-18(大阪)がIAIスタジアム日本平で激突した最終節は、清水ユースが先制したものの、後半開始早々に逆転したC大阪U-18が、終盤にも2点を追加して4-1で快勝。順位を入れ替え、プレミア残留を懸けたプレーオフへと回っている。

 電光石火の先制劇はホームチーム。前半6分。右サイドでFW田中侍賢(2年)のパスを受けたMF渡邊啓佳(3年)は完璧なクロスを中央へ。ここに飛び込んだDF石川晴大(3年)のヘディングはDFも掻き出せず、ゴールネットへ到達する。今季のチームを支えてきた2人のウイングバックが大仕事。「このアイスタで戦う意味も選手は感じながら戦ってくれました」と澤登正朗監督も話す清水ユースが、早くも1点をリードする。



 だが、アウェイチームもすぐさま反撃。12分。CBの和田健士朗(3年)が右サイドへ送ったボールから、抜け出したFW金本毅騎(3年)はシュート性のボールを中央へ。「ボールが来ることを信じて中に入っていたので、パスは速くて難しかったですけど、合わせられて良かったです」というMF木實快斗(1年)が合わせたシュートは、ゴール左スミギリギリに吸い込まれる。「外したと思って『あ、ヤバい』と思ったんですけど、入ってとても嬉しかったです」と笑った1年生レフティの貴重な同点弾。あっという間にスコアは振り出しに引き戻された。

 以降はお互いにゴール前を探り合う一進一退の展開。22分は清水ユース。ボランチのMF矢田龍之介(1年)が裏に落とし、右サイドに走った田中のカットインシュートは枠の右へ。45分はC大阪U-18。MF伊藤翼(3年)との連携から、MF皿良立輝(2年)が枠へ収めたシュートは、清水ユースのGK北村風月(2年)がファインセーブ。前半は1-1のままで45分間が終了した。

 後半は開始からC大阪U-18が動く。守備で奮闘したDF長野太亮(3年)に代えて、MF中山聡人(1年)を右サイドバックに投入する積極的な采配を振るうと、その瞬間は後半6分。「島岡さんが監督になるまでスルーパスはスペースに出す感覚でやってきたんですけど、スルーパスも足元に出すというところは去年から意識してやってきました」というMF清水大翔(2年)は、言葉通りの“スルーパス”を木實の足元へグサリ。「足元に良いボールが入ってきたので、あとは自分が決めるだけでした」という13番は利き足とは逆の右足で鮮やかにゴールネットを揺らしてみせる。2-1。C大阪U-18が試合を引っ繰り返す。



 負ければ降格が決まる清水ユースも、交代の切り札を相次いで投入。11分にはトップ昇格内定のMF安藤阿雄依(3年)、31分にもMF加藤大也(2年)とMF小竹知恩(1年)を同時にピッチへ解き放ち、踏み込むアクセル。34分にはMF星戸成(2年)の左FKから、こぼれを叩いた矢田のシュートはゴール左へ外れたものの、あわやというシーンを創出。一方のC大阪U-18も何度か決定機に近いチャンスを迎えながら、追加点は奪えない。

「決めるところを決められなくて1点差が続いていたので、前回も逆転で負けましたし、『このままでは危ないな』という想いはありました」(末谷)「1点差は怖かったですね。セットプレーが一番怖いので『与えんとこう』と言っているんですけど、やっぱり難しかったです」(伊藤)「もう1点差には嫌な記憶しかないので、心臓が持たないような感じでした」(川合)。

 粘る。とにかく粘る。左サイドバックのMF藤井龍也(1年)が身体を張り、和田とキャプテンを務めるDF川合陽(3年)のCBコンビが全体を落ち着かせ、GKの春名竜聖(3年)が最後はゴール前に立ちはだかる。「ピッチサイドから『ナイス!』とか言ってくれるのが嬉しかったです」とは伊藤。ベンチメンバーも大声をピッチに送り続ける。

 43分。木實からボールを受けた清水のスルーパスが、FW末谷誓梧(3年)の足元へ届く。「かなり冷静に周りは見えていました。今日は調子が悪かったですし、『ここで決めないとな』って」。右足を振り抜くと、直後に桜の歓喜が爆発する。



「夏以降は全然点を獲れていなくて苦しい想いをしてきたので、今日は『絶対に決めたい』と思っていました」と口にした末谷の大きな、大きな、追加点。さらに45+3分にも「もう寸分の狂いもなく、そこに合っていましたよね」と島岡健太監督も称賛した清水が三たびスルーパスを繰り出し、途中出場のMF首藤希(1年)がダメ押しの4点目を記録する。

「自分たちの技術を発揮できたことはもちろんですけど、1年生も本当にチームを盛り上げてくれましたし、そういうところが今日の試合は今まで以上にあったので、本当にチームが1つになってやれたことが大きいと思います」(伊藤)。負ければ終わりの大一番を逞しく制したC大阪U-18が10位に滑り込み、プレミア残留を巡るプレーオフを戦う権利を勝ち獲る結果となった。

「毎週負けていたので、次の週の練習から雰囲気を良くしようとずっと思っていたんですけど、なかなか良くならずにズルズル来てしまいました」(川合)「プレミアの後期が始まってから全然勝てなくて、自分たちのサッカーはやり続けていたんですけど、だいぶ苦しい状況でしたね」(伊藤)。求めても、求めても、付いてこない勝利。近付いてくる降格圏。C大阪U-18の選手たちは不安に苛まれていた。

「『あそこのチームどうやった?』みたいな話が耳に入ってくるようになったので、『そこを気にし出したら、どんどんそっちにしか意識が向かなくなってくるよ。案の定、こうなったやろ。だから、一切その話はするな』と言っても、やっぱりどうしても気になるから、なかなか難しかったなと。もちろん自分の技術を上げることを考えていても、どこかそっちに引っ張られているという感じで、選手もロボットじゃないから、人間味があると言えばあるんでしょうけどね」(島岡監督)。気付けば最終節を目前に、順位は自動降格圏の11位。極限まで彼らは追い込まれる。

 末谷はあることを明かす。「今週に陽と竜聖を中心に、1年生から3年生までメンバー外の選手にも、今の状況をどう思っているのかということを全体に聞くようなミーティングがあったんです」。キャプテンの中には確かな感触があったという。「『悔いを残さないように練習からやっていこう』と話して、初めはあまりうまく行っていなかったんですけど、やっと昨日一昨日ぐらいから『もうやるしかない』と全員が思えたので、チームがまとまったと思います」(川合)。

 4か月近く勝っていないチームが、それだけで結果を出せるほど、もちろんサッカーは甘いものではない。ただ、事実として彼らは重要な一戦で13試合ぶりの白星を手繰り寄せた。この成功体験を小さくない自信として、最後の勝負に臨めることはあえて言うまでもないだろう。

「今の1,2年生のためにも、今まで先輩が残してきてくれたこの舞台を次に繋げるためにも絶対に勝って、残留したいです」(伊藤)「お世話になった3年生のためにも勝ちたいですし、来年もプレミアでやるためには絶対に勝たなくてはいけない状況なので、僕が勝たせられたらいいなと思います」(木實)「プレーオフも絶対簡単じゃないと思いますけど、自分たちだったら絶対にやれる自信はありますし、またこの1週間も1日1日を大切にしていきたいです」(末谷)「プレーオフに負けたら今日の勝ちも意味がないので、あと1週間、もう1つチームとしてまとまって、強くなって、来週に臨みたいと思っています」(川合)。

 季節外れの桜は、12月の広島を彩るか。C大阪U-18の2022年はまだ終わらない。



(取材・文 土屋雅史)
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