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チェイス・アンリ世代の涙から1年。「本当にすげえ」と指揮官を感嘆させた尚志が4年ぶりのプレミア復帰!

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プレミアリーグ昇格を喜ぶ尚志高の選手たち

[12.11 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ2回戦 帝京長岡高 1-2 尚志高 エディオン]

 頼りない、とはもう言わせない。指揮官に叱責されてきた世代が大一番で逆境を跳ね返した。

 12月11日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 プレーオフ(広島)2回戦が行われ、尚志高(東北1/福島)が2-1で帝京長岡高(北信越1/新潟)を下し、2019年度以来となるプレミアリーグ復帰を決めた。

 1年前の出来事は今でも覚えている。昨季のプレーオフはあと1つ勝てば、昇格の権利が得られた。しかし、その一戦でPK戦負け。DFチェイス・アンリ(現・シュツットガルト)を擁したチームは涙を呑み、選手たちは途方に暮れた。

 あの借りを返すべく、挑んだ今回の参入プレーオフ。1回戦で岡山学芸館高を2-0で下し、昨年と同じ舞台に帰ってきた。対戦相手の帝京長岡も昨季のプレミアリーグプレーオフ2回戦で3-1から桐生一高(群馬)に逆転負けを喫しており、今年に賭ける想いは並々ならぬモノがある。

 そうした相手に対し、尚志は出鼻を挫かれてしまう。開始2分で帝京長岡FW堀颯汰(2年)に豪快な一撃を叩き込まれた。まさかの失点に気落ちしても不思議ではなかったが、8分に反撃する。FW鈴木虎太郎(3年)が最終ラインの裏に抜け出すと、GKとの1対1を制して同点に追い付いた。

 以降は一進一退の展開に。尚志は相手に好機を作られるシーンもあったが、粘り強く守って攻撃に転じる。前半19分に鈴木がヘディングでゴールを狙うなど、積極的にゴールを目指した。

 後半に入ってもスコアは動かず、オープンな展開が続く。その中で尚志に絶好の機会に訪れる。後半8分だ。前半終了間際に投入されたMF安齋悠人(2年)が仕掛けると、PA内でMF岡村空(3年)に倒されてPKを獲得する。しかし、これをDF白石蓮(2年)が決め切れない。嫌な雰囲気が漂うなか、21分に安斎が再びPKをゲット。今度はキッカーを代え、MF岡野楽央(3年)に想いを託す。だが、ボールは無情にも枠から外れ、またしても絶好機を逃してしまった。

「流石に焦る。良い雰囲気の中で2つのPKが巡ってきたので決めてくれると思ったんです。1本目は焦りにならかったけど、流石に2つ目が決まらなかった時はヤバいなと感じた」(主将・CB山田一景、3年)

 しかし、選手たちはめげなかった。諦めずに攻撃を繰り出すと、33分に敵陣の右サイドでFKを得る。サインプレーからキッカーの岡野がゴール前に蹴り込むと、ボールはファーサイドへ。ここにMF吉満迅(3年)が走り込み、逆転ゴールを決めた。

 リードを奪ってからは耐える時間が増え、帝京長岡のMF廣井蘭人(3年)らに決定機を作られてしまう。それでも、GK鮎澤太陽(3年)、CB山田を中心に粘り強く守って、得点を許さない。リードを守り抜いて終了のホイッスルが鳴ると、ピッチ内の選手たちは抱き合い、仲村浩二監督は喜びを爆発させた。

「今年は『PKを練習していたから勝てる!』と思っていたけど、(試合中に2つPKを外していたから)PK戦にならなくて良かった」と興奮気味に冗談を飛ばしつつ、「本当にすげえ」と昇格の権利を勝ち取った選手たちを労った。

 思い返せば、今年のチームは3年生が春先から頼りなく、2年生が存在感を示すケースも珍しくなかった。10月8日に行われたプリンスリーグ東北の最終節・青森山田高セカンド(青森)戦も3年生に甘さが出て、1-3で敗北。そうした状況を見た仲村監督が試合後に喝を入れた。

「3年生はなんとかなるだろうという気持ちがあった。青森山田のセカンドに対して僕は絶対に勝てると思っていたけど、運がなかったところはあるとはいえ、なんかふわっとしていたんですよね」

 指揮官の檄に3年生も応え、選手権予選中は主体的に動いてチームを牽引。迎えたプレーオフも粘り強く戦い、後輩たちの最高の舞台を残せた。

「めげずにやってきて結果が出て良かった」とは山田の言葉。29日に初戦を迎える選手権に向け、弾みが付く勝利になったのは確かだ。3年生を中心にもう一度一致団結し、徳島市立高(徳島)との初戦に備える。

(取材・文 松尾祐希)
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