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前橋育英が誇るユーティリティアタッカー。MF小池直矢は選手権での悔恨も糧に高校選抜で欧州への“再挑戦”を期す

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日本高校選抜候補MF小池直矢(前橋育英高3年)は相手に囲まれてもドリブル勝負!

[1.23 練習試合 日本高校選抜候補 5-1 U-17日本高校選抜候補 時之栖G]

 夏に経験した欧州のレベルをもう一度体感することで、自分の現在地を測りたい。ちゃんと成長できているのか。課題はどれぐらい克服しつつあるのか。そのためにも、このチームで挑む最後の大会まで、生き残る決意は何があっても揺るがない。

「コロナもあって、高校選抜はしばらくドイツでの大会で優勝していないという話も聞いたので、自分が試合に出ることでチームにしっかり貢献して、このメンバーと一緒に、ドイツで優勝したいと思います」。

 攻撃的なポジションならどこでも高次元でこなすことのできる、ユーティリティなアタッカー。MF小池直矢(前橋育英高3年)は主軸として、日本高校選抜の攻撃陣を牽引する覚悟を定めている。

「去年のメンバーとは違う人も多くて、それに合わせながら自分を出すのも楽しいですし、去年からいるメンツと一緒にやるのも楽しくて、気付いたら誰とでも喋っていますね。今回もここに来られて良かったです」。昨年のU-17日本高校選抜に続く、“2年目”の選抜活動も、持ち前の高いコミュニケーション能力で楽しめている。

 もともとこの合宿に向けて、選手権後も身体を動かしていたこともあり、初日のトレーニングでは手応え十分のパフォーマンス。2日目に行われた流通経済大との練習試合は左SHに入り、前橋育英のチームメイトでもあるMF徳永涼(3年)、MF根津元輝(3年)と一緒に中盤を構成しながら、自身も納得のいかない出来に終始したものの、翌日の日本体育大との練習試合では「結構周りも見えていて、守備も良かったと思います」としっかり復調してみせる。

 U-17日本高校選抜との試合が設定された最終日は、3本目に前日と同じ右SHで登場。最後のアピールチャンスに「ボールを持つための動き出しだったり、持ってからのドリブルだったり、パスの丁寧さを発揮して、相手にとって危ない選手になれるところが自分の持ち味だと思います」と自ら話した通り、攻撃面での特徴を随所に発揮しながら、守備での献身性もきっちり披露。30分間を3-1で勝ち切ったチームに、攻守両面で貢献してみせた。

 昨年のインターハイで日本一に輝いた後、小池は夏休みを利用してオランダの名門クラブ、フェイエノールトの練習に1か月ほど参加。「フィジカルとスピード感、プレーの強度は全然日本より上でした」と語ったように、欧州の基準を肌で感じる貴重な時間を得た。

 海外での経験を身体に刻み、夏冬二冠を掲げて臨んだ選手権では、一生忘れ得ない“アクシデント”が待っていた。1年前とまったく同じシチュエーションとなった、準々決勝の大津高戦。大会を通じて好調をキープしていた小池は、後半18分に2枚目のイエローカードを提示され、退場処分を余儀なくされる。

 もつれ込んだPK戦の末に、前橋育英はまたも大津の壁を乗り越えられず、ベスト8で敗退。試合が終わった瞬間、ロッカールームからピッチを見つめていた小池が頭を抱えて崩れ落ちる姿は、強い印象を見る者に残すこととなった。

「育英は後半の最後に強みがあったので、自分が退場していなかったら絶対勝っていたと思いますし、『自分のせいで負けたな』という想いは強いですけど、今から考えると、それも1つ良い経験ができたなと思います」。今ではすっかりチームメイトからも、あの一件をイジられるまでに。小さくない挫折を、次へと向かうパワーへ着実に昇華させているようだ。

 今回の選抜活動は、さらなるステップアップを狙う上でも大事な機会。「自分は2年生の時は追加という形で入っているので、今回の選抜には絶対入らなくてはいけないなと思っていますし、ここでしっかり結果を残していかないと、Jユースの選手も入ってくるU-18の代表にも残れないと思うので、このチームに選ばれ続けたいです」。

 もちろん見据えるのは、その先にある“未知との遭遇”だ。「ドイツには世界トップクラスのチームや選手が集まってくると思うので、1回オランダで経験してきた分、そこで世界の中で通用するかどうかという、現状の自分のレベルを知りたいなと思っています」。

 あの夏に味わった世界基準との邂逅と、最後の冬に突き付けられた悔恨と。さまざまな体験を力に変えてきた小池は、これからも自分が進むべき道を、自分自身で逞しく切り拓いていく。

(取材・文 土屋雅史)
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