beacon

志願して背負う9番のプレッシャー。FC東京U-18FW山口太陽は「アイツがストライカーだな」と認められる存在へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

新シーズンの9番を背負うFC東京U-18FW山口太陽

[1.29 東京都CY U-17選手権決勝L FC東京U-18 1-0 横河武蔵野FC U-18 東京ガス武蔵野苑多目的G]

 その背番号は、自ら希望した。もちろんプレッシャーがないはずはないけれど、それぐらい今年の1年に未来を懸けている。求められるものも、目指すものも、過不足なく一致する。ストライカーならば、何を差し置いても、ゴール。それだけだ。

「それこそ熊田さんを超えたいなという意味でも、ストライカーとしてたくさん点を獲りたいという想いも込めて、9番を自分から希望しました。周りから見れば学年は関係なく、背番号だけで判断されると思うので、2年生だからとかではなくて、ストライカーとしてチームのために活躍したいですし、周りからも『アイツがストライカーだな』と認められるような選手になりたいです」。

 ブレイク間近のレフティストライカー。FC東京U-18の9番を新たに託されたFW山口太陽(1年=FC東京U-15むさし出身)は、偉大な“先輩”を超えるために、さまざまなものを背負うシーズンへと歩み出す。

 新チームが立ち上がってからは初となる公式戦。東京都クラブユースサッカーU-17選手権の初戦、横河武蔵野FC U-18戦に山口は右ウイングとしてスタートからピッチに解き放たれる。

 本人も「右ウイングだとクロスというよりは、ドリブルで縦に仕掛けたり、中にカットインしたりということは考えています」と話した通り、ボールが入るとまずは勝負。前半22分にはMF伊藤ロミオ(2年)の縦パスを受け、カットインからフィニッシュまで。ボールは枠を越えたものの、果敢な姿勢を打ち出すと、45分には左からDF平澤大河(2年)が上げたクロスに、完璧なヘディング。GKを破ったボールは、カバーに入ったDFのスーパークリアに阻まれるも、ゴールの香りを漂わせる。

 後半は開始からセンターフォワードへスライド。「得点は獲りたかったですけど、奥原監督も『チームのために』ということを掲げているので、クロスにニアでつぶれたり、味方が上がってくるために時間を作ったり、チームのために行動できたかなとは思います。でも、最後のシュートの部分でもっとチャンスを増やしたかったですね」。ややチーム優先のプレーに徹した感もあり、試合は1-0で勝利したものの、山口に得点は生まれなかった。

 昨シーズンのプレミアリーグでは、6試合に出場して1得点。1年生ということを考えれば悪い数字ではないが、自身の中では手応えを掴むまでには至らなかったという。「熊田くんという凄い先輩がいたので、自分は右ウイングで出ることが多くて、フォワードで出たい想いはあったんですけど、先輩のプレーを見て、自分はどう点を獲るかをいろいろ考えながらプレーできた年だったと思います。でも、もっと前期からプレミアに関わりたかったですし。後期でやっと試合に出られるようになりましたけど、それでシーズンが終わってしまった感じだったので、もっと得点にも試合に絡んでいきたかったです」。

 やはり意識せざるを得ないのは、同じレフティのストライカーとして昨シーズンのプレミアを席巻し、トップチームへと昇格したFW熊田直紀だ。「中学生の時もむさしでずっと試合や練習を見てきて、『あの人を超えたい』とはずっと思っていて、もちろんまだまだ足りないですけど、しっかり超えられるように、今年の1年も来年も日々頑張りたいという目標はあります」。基準はハッキリしている。9番の前任者でもあるあの人を超えられれば、プロサッカー選手としての未来だって大きく開ける。簡単でないことは百も承知だが、そこにチャレンジするだけの価値があることもまた間違いはない。

 さらに今年は、以前から目標にしてきた大きな舞台が待っている。「自分の中でもU-17のW杯には絶対に出たいと思っています。ただ、高校に入ってから代表の活動に選ばれていないので、そこに出るために逆算して、今からできることをやりたいですし、まず選ばれるためには試合で絶対に活躍することを考えながら、今の自分がどうW杯で活躍できるかということに対して、足りない部分を練習していきたいです」。世界との邂逅へ。そのために、今できることを、1つ1つ積み上げていく。

 だからこそ、日常となるプレミアのステージで、個人もチームも明確な結果を出すことには、強い意欲を隠さない。「去年の先輩方は本当に凄くて、十分に優勝を狙えるチームだったんですけど、今年はさらにみんなが団結して、まず一戦一戦を大事にしていきたいということはチーム全体で考えていて、最初から優勝を狙うというよりは、1試合1試合大事にした後に優勝が付いて来ればいいかなと思っていますね。個人でもプレミアではチームで一番点を獲って、得点王を狙いたいです」。

 青赤の9番は、オレの色に染める。期待せざるを得ない抜群のポテンシャルを有したストライカー。山口が抱える決意は、ゴールという結果で証明され続けていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

TOP