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[新人戦]大一番で勝つために磨く多彩な攻撃。明秀日立が7-0で5年ぶりV:茨城

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4試合で38得点無失点。明秀日立高が圧倒的な強さで茨城県新人大会を制した

[2.1 茨城県新人大会決勝 明秀日立高 7-0 境高 ト伝ノ郷A]

 攻撃強化の明秀日立が7発V――。令和4年度茨城県高校サッカー新人大会は1日午後に決勝を行い、明秀日立高が5年ぶり3回目の優勝を果たした。昨年の関東高校大会優勝校・明秀日立は、決勝で公立の境高と対戦。7-0で快勝し、4試合38得点無失点で頂点に立った。

 明秀日立はこの日午前に予定されていた宿敵・鹿島学園高との準決勝が不戦勝に。第一学院高との激闘後に決勝を戦った境に比べ、コンディション面で優位だったことは否めない。それでも、新チームが目指してきた多彩なバリエーションの攻撃でゴールラッシュ。本格的なシーズン開幕へ向けて弾みをつける優勝となった。

 強風の中でスタートした前半、風上の境の入りも良かった。23年ぶりに決勝へ進出した境は、MF甲斐春太郎(2年)らが運動量を増やし、また奪ったボールを繋いで前進するなど強敵にチャレンジする。

 明秀日立はMF吉田裕哉(2年)がワンツーからシュート。また、181cmの大型左WB斉藤生樹(2年)がストライドの大きなランニングで攻め上がって来る。そして18分、斉藤がスピードに乗ったオーバーラップでDFの前に出て左足クロス。これをエースFW石橋鞘(2年)が頭で上手く合わせてスコアを動かした。

 明秀日立は連動したプレッシングからMF大原大和(2年)らがボール奪取。そして、斉藤のスルーパスなど中央、サイドから決定機を作り出す。対する境もセットプレーからチャンス。ゲーム主将・DF花島悠晟(2年)のヘッドが枠を捉えたほか、CKのサインプレーなどから相手ゴールを脅かした。

 明秀日立はこの日、注目の189cmGK小泉凌輔(2年)がコンディション面を考慮されてベンチ。だが、代わって先発したGK重松陽(1年)の鋭いセービングやゲーム主将のDF山本凌(2年)を中心とした3バックの好守などによって得点を許さない。境も相手FW柴田健成(1年)の決定的な右足シュートをDF花島のゴールカバーで防ぐなど食い下がる。だが、明秀日立は40+1分、敵陣で柴田がインターセプト。スルーパスに反応した右WB長谷川幸蔵(2年)が右足シュートをゴール左隅へ流し込んだ。

 声でチームを鼓舞する花島中心に我慢強く戦っていた境だが、この1点が痛かった。明秀日立は後半5分、絶妙なファーストタッチで前を向いた石橋がドリブルで中盤中央を独走。そのまま右足シュートをコースへ飛ばす。これはGKに阻まれたものの、後半開始から出場のMF尾上陸(1年)がこぼれ球を決めて3点目。6分にも斉藤の強烈な左足シュートのこぼれを尾上がプッシュし、4-0とした。

 この日、相手よりも1試合多く戦っている疲労も影響したか、境は集中力を維持することができない。畳み掛ける明秀日立は8分、柴田のループシュートで5点目。10分にも柴田の左クロスを長谷川が右足ダイレクトボレーで決めて6-0とした。

 さらに19分、吉田が獲得したPKを石橋が決めて7点目。3年間選手権から遠ざかっている明秀日立にとって、得点バリエーションの増加は壁を破るためにこだわっている部分だ。萬場努監督は「上手いけれど破れない、みたいなところから一個脱却したい。色々なバリエーションで点を取れるようにしないと、最後の最後接戦になった時に、『守れるけれど勝てない』『ボールを握れるけれど勝てない』という状況になっているので、ゴールをこじ開けるために色々な手を持つというのはやりたいと思っています」と説明する。昨年から活躍する石橋の鋭い動きや斉藤、長谷川の推進力を活かした崩しなど、強化してきたことが表現されての7発だった。

 一方、境にとって苦しいゲームとなったが、彼らは下を向かなかった。後半10分以降の30分間は、彼らのアグレッシブなビルドアップと守備が光る展開に。エースMF片野雅斗(2年)が強引にDFの前にもぐり込んでミドルシュートを放ち、準決勝のヒーローFW小竹涼斗(2年)が縦突破からクロスを上げ切る。

 境は今大会、DF杉本睦人主将(2年)を怪我で欠く中で躍進し、決勝も後半立ち上がりを除くと印象的な戦いを見せた。羽石直樹監督が特に評価していたのは、彼らの声。「収穫としては、チームとしてのまとまりというところ。(私学勢と)能力差がある中で、やっぱりグループとして、集団として、チームスポーツをやっている以上、そういうところで声を掛け合えたのは凄く良かったかなと思います」と頷いていた。

 明秀日立は7-0で5年ぶりの新人戦王者に。近年台頭してきたチームは昨年、一昨年と悔しい負けを経験しているが、着実に試合の質が高まり、全国上位のチームとの試合でも自分たちの強みを発揮できるようになってきている。主に伊藤真輝コーチが指揮を取った新人戦は、スタッフ含めてまたチームとして成長する大会に。萬場監督が「マジメです。凄くマジメ。誰が出てもパワーバランスを持ってやってくれる」という新3年生の世代はこれからより決め切る、勝ち切る力を磨いて新シーズンへ向かう。

 山本は「一つのタイトルとして自信がついた。関東も去年は優勝しているので、関東で優勝できるように全員で取りにいけるようにしたい。そして、インターハイは自分たちが絶対に勝って全国に行くこと。選手権もそのままの流れで全国に行けるようにしたい。(特に選手権予選は鹿島学園の連覇が続いているが、)ここで自分たちが取って次の代に引き継いでいけるように。全員で話し合っています」。伝統的な堅守に加えて、攻撃面も光る23年の明秀日立が茨城で勝ち続け、関東、全国で勝負する。

(取材・文 吉田太郎)

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