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23年ぶりの茨城決勝は連戦で苦闘も、「何か自分たちで挑戦して、成長して、得て、帰ろう」。公立の境が見事な戦いで準優勝

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公立の境高が躍進。23年ぶりの茨城新人戦決勝進出を果たした

[2.1 茨城県新人大会決勝 明秀日立高 7-0 境高 ト伝ノ郷A]

 かつて3度インターハイに出場した歴史を持つ公立校が躍進を遂げた。準決勝(対第一学院高、1-0)は試合終了間際に決勝点を挙げ、23年ぶりの新人戦決勝進出。3度目の新人戦制覇には届かなかったものの、「地元の中学とかから集まったメンバーだから、どのチームよりもスキルとかがないから、どうやって束になって戦うか練習から意識していて、それで自分が味方と信頼しあって最後気持ちだとやっていました」(DF花島悠晟、2年)という境高が、プレー面も、気持ちの面でも、印象的な戦いを見せた。

 準決勝の激闘から約2時間30分後に始まった決勝は、0-7で敗戦。この日2試合目だった境に対し、準決勝不戦勝の明秀日立高はこの日1試合目で体力面の差は大きかった。だが、境は風上の前半、入り良く試合を進める。運動量を増やし、チャンスがあればボールを繋いで攻める姿勢も見せていた。0-1の前半29分には、DF安田渚(2年)の左足FKから花島が決定的なヘッドを放ち、30分にはデザインされた右CKから10番MF片野雅斗(2年)の上げたクロスが相手DF陣を脅かす。

 今大会は守りの要・DF杉本睦人主将(2年)を欠く中での戦いだった。だが、決勝でも3バックの中央に入った花島が、ゴールカバーで相手の決定的なシュートをクリア。ピンチも多かったが、境は各選手の守備意識が高く、カバーリングを徹底するなど2点目を許さない。逆にセットプレーの流れからMF小貫幸勇(2年)が右足を振り抜くなど同点のチャンスを作っていた。

 だが、前半終了間際に痛恨の2失点目。すると、疲れもあったか集中力を維持できなかったチームは、後半5分からの6分間で4連続失点を喫してしまう。それでも、羽石直樹監督が「メンタルモンスターだと思います」と評する花島がチームを鼓舞するなど、ここから各選手が声を掛け合い、点差を感じさせないようなアグレッシブな戦いを見せた。

 花島は「何か自分たちで挑戦して、成長して、得て、帰ろう、とみんなで話していました」と振り返る。エースMF片野が気迫十分の動きで前へ。個人でシュートへ持ち込んだほか、MF津佐昭道(2年)や交代出場の選手たちもフィジカル面で上回る明秀日立に食い下がり、マイボールにしてみせる。そして、相手の状況を見ながらボールを動かし、ゴールへ向かうなど、選手たちは大舞台から何かを得ようとしていた。

 ベンチからも「(得点)1か、0じゃ全然違うぞ!!」という声が飛ぶ中、諦めずに前へ。得点することはできず、0-7での敗戦となったが、見事な戦いだった。花島は「点差が開いて『境は弱い』みたいな感じになっちゃうかもしれないですけれども、自分たちもここまでやれてきたのも凄く自信に繋がったし、これからも頑張っていきたい」と前を向く。そして、「攻守で活躍できるようになりたいです」と個人としても成長することを誓っていた。

 羽石監督は「コミュニケーションのところでもうちょっと具体的な立ち位置や、いつ出るか、というところや、誰がどこでという、サッカーって守備も攻撃もタイミングだと思うので、もう少しやっている子たちで修正できるようになってくれば、自分たちでゲームの中で成長できるのかなと思います」と期待する。

 その指揮官も「間違いないです」と語ったように、ファイナリストになった経験は非常に大きい。決勝まで勝ち上がった自信と、敗れた悔しさを持って次へ。花島は「結果的にあと1個というところだったので、ここを勝ち切れば全国もあると思う。関東、インハイ、選手権とあるので、ここで調子に乗るんじゃなくて、もう一回締めてやっていきたい」と力を込めた。将来のJリーグ参入を目指す境トリニタスが関東2部リーグへ昇格するなどサッカー、スポーツへの熱もある街の公立校。私学勢の壁は厚いが、今大会同様、自分たちに自信を持ってチャレンジするだけだ。地元の中体連出身プレーヤー中心に可能性を秘めた境が、成長を続けて目標の全国切符を掴み取り、地域を盛り上げる。

境高のゲーム主将、DF花島悠晟はチームを後方から後押し

(取材・文 吉田太郎)

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