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[MOM4212]桐生一MF小野剛史(2年)_チームきってのムードメーカーが「1年温存した」ゴールで「22試合分の歓喜」爆発!

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「1年温存した」ゴールで優勝の立役者になった桐生一高MF小野剛史

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[2.5 群馬県新人大会決勝 桐生一高 2-0 共愛学園高 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

「小野くんが待望のゴールを決めてくれました。あれだけチャンスメイクもしてくれて、ハードワークもしてくれるので、大事な選手なんですけど、いかんせんゴールに見放されていて(笑)」。そう話したのは桐生一高を率いる中村裕幸監督。不思議なくらいゴールから見放されていたのが、“小野くん”ことMF小野剛史(2年=伊丹FC出身)だ。

 本人も共愛学園高と対峙する群馬県高校新人大会決勝には、並々ならぬ決意を抱いて臨んでいた。「プレミアは去年22試合に出させてもらったにもかかわらず0点で、ずっとチームや監督にも『公式戦ではゴールが獲れない』みたいに言われてきて、自分でもやっぱり悔しい気持ちは残っていて、この新人戦も準決勝まで1点も獲れていなくて、自分でも悔しかったので、『絶対に今日は決めてやろう』と思っていました」。

 2年生だった昨年もサイドハーフや1.5列目でチャンスメイクできる力を買われ、プレミアリーグ全22試合に出場したが、無念のノーゴール。シーズン途中に敢行した“願掛け”も、結局最後まで貫く羽目になる。

「親から『プレミアで全然点が獲れていないんだから、坊主頭ぐらいにしないと点が獲れないぞ』みたいなことを言われて、それをコーチに言ったあとに、自分が点を獲れていないのに髪を伸ばしていたら、『全然獲ってないじゃないか』と指摘されて、『これは坊主頭にするしかないな』と(笑)。自分も最初はそろそろ決められるかなという感じで坊主頭にしていたんですけど、それが22試合続いてしまって……」。

 少しだけ伸びた短髪で迎えたこの日の一戦。小野も「育英を超えないと群馬では1位になれないので、もう昨日は全員が本気を出して、チーム一丸となって勝てた試合だったなと思います」と振り返る、前橋育英を撃破した前日の準決勝も好機には絡んだがノーゴール。あとは得点だけが、必要だった。

 チャンスは前半のうちに訪れる。16分。DF中野力瑠(2年)のフィードから右サイドを抜け出したDF能崎大我(2年)がクロス。小野が頭で中央へ流したボールは、混戦を経て、再び8番の足元へ戻ってくる。

「最初は右足でシュートを打とうと思ったんですけど、相手が来ていたので、『これはかわそう』と思ってかわしたら、シュートコースがあって、あまり左足は得意ではないんですけど、『ここはもう打つしかない』と左足で打ったら良いコースに飛びました」。

 ボールは左ポストの内側を激しく叩いて、ゴールネットへ到達する。それを見届けた小野は、そのままチームメイトが待つベンチサイドへとまっしぐら。「もう1年前から、プレミアの時からゴールを決めたらチームメイトの方へ行こうと思っていたんですけど、その機会が1年なかったので、『ようやく来たな』という感じで、22試合分喜びました(笑)」。殊勲のスコアラーを中心に、水色の歓喜が弾けた。



「公式戦のカップ戦は初ゴールだと思うんですよね、去年のシーズン途中ぐらいで、『オマエ何試合出て、何点獲った?』と聞いたら『ゼロです』と。たまたま他のヤツが初めて出て点を獲ったりしていたのに、そこからこんな感じだったので」という中村監督の言葉を本人に確認すると、「インターハイでは1ゴール決めたんですけど、こういう準決勝や決勝で決めるのは初めてです。さっきチームメイトにも『1年温存してきたぞ』と言いました(笑)」と胸を張る。

 明るい雰囲気に巻き込んでいくような話し方や、ゴール後のチームメイトの喜び方を見ても、明らかにムードメーカー。キャプテンの中野も「自分はクラスも一緒なんですけど、学校でもみんなに『剛史、喋れよ』みたいに言われて、ちゃんとオチのある話をして、それで雰囲気が良くなる感じですね。ムードメーカーです」と証言。常に気持ちの入ったプレースタイルと、笑いを誘うトーク力のギャップも微笑ましい。

 意識する選手は同じ兵庫出身で、昨年のチームを支え続けた1つ上の“先輩”だ。「自分がプレミアで上手く行っていない時も、諏訪さんには『オマエならできるぞ』と良い声掛けをしてもらったので、そういうところが尊敬できるところですし、諏訪さんにはプレーでも引っ張ってもらってきたので、今年は『自分がそうなるんだぞ』という気持ちで1試合1試合頑張っています」。10番とキャプテンを任され、チーム初のプレミアを戦い抜いた諏訪晃大(3年)の振る舞いをイメージしながら、最高学年の1年間へ向かっていく。

 2023年の目標も、明確に携えている。「プリンスリーグで得点ランキングの上位を狙うことと、インターハイ、選手権と全国に出て得点も獲っていきたいですし、得点以外でも得意なドリブルや凄いプレーで有名になって、全国に名前を知られるような選手になっていきたいなって。自分の中で『まだ1点も決めていない』という想いもあったんですけど、今日のゴールで『自分も獲れるんだな』とは思えましたね」。

 桐生一が誇るアグレッシブなアタッカーにして、生粋のムードメーカー。もう温存する必要は、まったくない。ようやく1点を手にした小野のゴール量産と、それに伴う“長髪化”が、チームのさらなる飛躍には必要不可欠だ。



(取材・文 土屋雅史)

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