beacon

九州の新たな才能は謙虚で貪欲、倒れずに前へ。日章学園の1年生FW高岡伶颯が試合を決める活躍

このエントリーをはてなブックマークに追加

前半21分、日章学園高FW高岡伶颯(1年=三股町立三股中出身)は左足クロスで先制アシスト

[2.18 九州高校新人大会予選リーグ 長崎総合科学大附高 0-2 日章学園高 豊見城総合運動公園陸上競技場(天然芝)]

 18日、令和4年度KYFA第44回九州高校(U-17)サッカー大会(九州高校サッカー新人大会)予選リーグ第2ブロック第2節で日章学園高(宮崎1)と長崎総合科学大附高(宮崎2)が激突。日章学園が2-0で勝ち、2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。

 東福岡高(福岡1)、大分鶴崎高(大分2)含めて激戦区の第2ブロックで、日章学園がいち早く予選リーグ突破を決めた。怪我明けのCB藤本晃士主将(2年)が先発を外れているが、原啓太監督が「総附の土俵でも負けないというところをテーマに持ってやったので。球際、切り替え、ロングボールの処理……(そこで負けずに)相手を押し込むぞと」と説明したように、ゲーム主将のCB宮本大誠(2年)や右SB梶原壮一郎(2年)らが強度で負けずに戦い、徐々に強みである長短のパスワークも発揮して快勝した。

 中でも印象的な動きを見せたのが、U-17日本高校選抜候補のFW高岡伶颯(1年=三股町立三股中出身)だ。前半10分、右中間からドリブルで仕掛けると、相手DF2人の厳しいチェックでバランスを崩してピッチに手をつくような状況に。だが、倒れない。そこから一歩でも、二歩でも、前に進もうとし、ゴールへ近づいて左足を振り抜いた。

 シュートはカバーしたDF2人にブロックされたものの、強敵相手に馬力を示した1年生FWは、その後も個で相手DFを苦しめる。ボールを受けると1対2でもドリブルを仕掛けて前進。して前半21分、ビッグプレーで先制点を演出した。

 日章学園は自陣から速攻。センターサークル付近で受けた高岡は、頭で左前方のスペースへボールを落とす。ここから50m走6秒フラットのスピードで一気に加速。ドリブルを警戒したDF2人がコースを塞ぎに来ていたが、その裏をかく形で左足ループパスを送る。ボールは相手CBの頭上をわずかに越え、素晴らしい動き出しを連発していたFW篠田星凪(2年)の下へ。篠田が右足で先制ゴールを決めた。

 高岡はこの日の第1試合、大分鶴崎戦の2ゴールに続く活躍。後半も相手の背後を鋭く突いてシュートを放つ。決めることができず「点というところにもっと貪欲にいければと思います」と首を振ったが、日章学園は左SB阿部真大(2年)のクロスからMF水田祥太朗(1年)が加点。連戦の試合終盤、高岡は人一倍の声でチームを鼓舞していた。

 加えて、守備では最後の一歩まで全力でプレッシャーをかけ、身体を投げ出して縦パスをブロックするシーンも。攻撃面では仕掛ける回数や無得点に終わったことなど、物足りなさがあったかもしれない。それでも、全国高校選手権初戦でインターハイ王者の前橋育英高相手に「ソロ(個)でやれていた」(原監督)という1年生は、この日もスピードと馬力、負けん気の強さを攻守で表現していた。

 高岡は「強みは熱量だったり、チームが下向きになっている時に仲間を鼓舞したり、状況が悪い時に自分が点を決めたりするところです」と自己分析する。そして、「おしゃれな選手じゃないので(微笑)。公立中から来て上手くないし、何ができるかなと思った時に体力とかみんなある程度あるけれど、(その中でも)前からずっと追うところとか極めています」と加えた。

 164cm、60kg。見た目は小柄で凄みは感じない。だが、評価は高まっており、1月には早くもJ1の名門クラブへ練習参加。同じような小柄なJリーガーの突破力、相手を剥がす力を見て刺激を受けたという。また、課題であるパスの部分の差を痛感。一方で「貪欲さは全然負けていなかったと思います」と頷く。

 本人は非常に謙虚。少しでも気を抜いてしまえば、「その間に誰かが努力して差がついてしまう」という考えの持ち主だ。中学時代は九州大会3位を経験。県外の強豪校からの誘いもあったが、原監督の「オマエなら絶対にできる。オマエが頑張れば出れるよ」という言葉を受けて「ここでやれば、成長できるんじゃないか」と日章学園への進学を決意した。
 
 そして、プリンスリーグ九州開幕戦でいきなり1ゴール。原監督が「点を取れるし、チャンスをつくれる。サッカー以外にしても気持ちも強いですね。チームに活力を与えるような存在でもある」と評するFWはシーズン後半に先発を獲得し、プリンスリーグでは計6得点をマークしている。

 同じ宮崎県南部出身のU-16日本代表FW名和田我空(神村学園高1年)は、小学生時代から旧知の仲。「小学校で1人だけ飛び抜けていて、目標にしていた選手」を追いかけてきた高岡は、「今は一緒の土俵になったと思う」。大事な高校2年目のシーズンで成長し続け、年代別日本代表入り、ライバル超えも目指す。

「ずっと努力をし続けて、謙虚な姿勢で、この九州大会でもいろいろなものを吸収していきたいです。貪欲な選手。どこからでも決められる怖い選手になりたいです」。FW仲川輝人(FC東京)やFWリオネル・メッシ(パリSG)が憧れ。九州から台頭してきた新たな才能が今年、大きな飛躍を遂げる。

バランスを崩しても前へ

スピードと馬力、負けん気の強さを見せつけた

(取材・文 吉田太郎)

TOP