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「俺らのゲームモデル」160cmMFに託された10番。石内凌雅が走って、身体を張って、鹿児島城西の勝利に貢献

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鹿児島城西高の「ゲームモデル」を表現する10番MF石内凌雅。準々決勝では貴重なゴールも決めた

[2.20 九州高校新人大会準々決勝 鹿児島城西高 2-0 佐賀商高 金武町陸上競技場(天然芝)]

「立ち上がりは厳しい展開になったんですけれども、城西のサッカーを貫き通せたので、良い形で点も取れて、良い形でゲームの展開ができたと思います」

 鹿児島城西高(鹿児島1)の10番MF石内凌雅(2年)は、2-0で勝利した九州高校サッカー新人大会準々決勝の佐賀商高(佐賀2)戦後、会心の白星を素直に喜んでいた。

 鹿児島城西は前線へボールを入れて、拾って、速攻。佐賀商の粘り強い守備に阻まれ、なかなか得点を挙げることができなかったが、「(粘り強さは)自分らもそれがウリなので。(佐賀商に)粘り強くされるけれど、それ以上にしつこくと」(新田祐輔監督)。何度も何度も繰り返し続けた鹿児島城西が、前半終了間際と後半の立ち上がりに連続ゴールを奪う。

 前半アディショナルタイム、「自分は一瞬の隙とかを見逃さないタイプ」という石内がルーズボールへの反応で相手を上回ってFKを獲得。これをCB横山輝人(2年)が右足で直接決めて1-0で前半を折り返す。

 さらに後半2分、CKの流れからこぼれ球に鋭く反応した石内が右足で決めて追加点。MF坂上日向(2年)とMF芹生海翔(2年)のダブルボランチやアタッカー陣らの献身性、頑張りが動きに表れる鹿児島城西は、守備時に相手選手との距離を一気に詰め、パスを身体に当てるなど前進を許さない。

 中でも貢献度の高い動きを見せているのが、石内だ。新田監督は「石内は今、俺らのゲームモデルなんで。追っかけ回す、身体を張る。小さい選手が背番号10番をつけている。我々の粘ってやってきたゲームモデルですね」。DFの逆を取るドリブルや左足も魅力だが、チームの走る、球際、声を出すというベースを人一倍表現。身長160cmの小さなMFが、チームの象徴的な背番号を託されている。

 石内は「今までの(10番の)人たちは、上手くて技術もあって、チームのトップレベルの選手だったんですけれども、自分は、技術は無いんですけれども、技術無いなりにチームに徹して、ゴールも奪って、チームを勝たせる人になりたい」。1年前はBチーム。だが、チームのために走ることで味方の雰囲気が変わることを体感し、それを武器として極めて、出場機会を増やしてきた。

 その10番は昨秋の悔しさをエネルギーにしている。選手権予選準決勝の後半8分、DF背後へ抜け出して決定的な左足シュートを放つも、GKに止められ、鹿児島実高に惜敗。「正直、自分のせいで選手権とか負けてしまった面がある。何としてもチームのために走って、戦って、引っ張って」と強い思いを持って新チームでの戦いに臨んでいる。

 そのMFは、今大会初戦で決勝点を決めるなどチームの進撃に貢献。準決勝ではDF陣の踏ん張りもあり、長崎総合科学大附高に0-0からのPK戦で勝利した。「沖縄にメンバー外で来れていない人や怪我で試合に出れていない人がいるので、その人たちのためにも城西高校の看板を背負って優勝というタイトルを取りたい」という石内が、決勝でもチームメートとともに“鹿児島城西らしさ”を全面に出し、宿敵・神村学園高(鹿児島2)に勝つ。

(取材・文 吉田太郎)

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