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準々決勝敗退を本気で悔しがった選手たち。九州新人は全国復帰、活躍を狙う佐賀商の目線を上げる大会に

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公立の佐賀商高はCB平山颯汰主将(右)中心に優勝校・鹿児島城西高に食い下がった

「思っていた以上にアイツらが悔しがっていたので、それが嬉しかったですね」。佐賀商高(佐賀)の松尾智博監督は、優勝校・鹿児島城西高(鹿児島)に0-2で敗れた九州高校新人大会準々決勝後の光景を喜んでいた。
 
 公立の佐賀商は、77年インターハイ準優勝、夏冬合わせて29回の全国大会出場の歴史を持つ伝統校。選手権は12年度、インターハイも13年度を最後に遠ざかっているが、佐賀北高を夏冬の全国大会へ導いている松尾監督の下、選手権予選で2年連続あと一歩の準優勝と全国舞台に近づいてきている。

 佐賀県2位で出場した今大会は、沖縄県1位の那覇西高と大分県1位の柳ヶ浦高を倒して8強入りを果たした。鹿児島城西戦は個々で上回る相手のロングボールとそのこぼれ球を拾ってからの攻撃に押し込まれる展開。だが、今大会を通して機動力の部分や連係面が向上したチームは粘り強い守備で対抗し、相手に得点を許さない。それでも前半終了間際、PAやや外側でのルーズボールの反応で遅れてFKを献上。これを決められて先制されると、後半開始直後にもセットプレーの流れから追加点を奪われた。

 細部で差をつけられて2失点。その後も押し込まれる時間が長かったが、声を発し続けた長身CB平山颯汰主将(2年)や守備範囲が向上したというGK久本春輝(2年)らが我慢強く相手の攻撃を跳ね返す。そして、交代出場のMF宝蔵寺晴(1年)らがボールを落ち着かせ、大型FW古賀航太郎(2年)を起点とした攻撃で反撃。左サイドからの折り返しをMF前田朔太郎(1年)が右足で狙うシーンもあった。

 だが、1点を奪い返すことはできず、0-2で敗戦。私学の強豪相手に健闘したが、選手たちは涙を見せて本気で悔しがっていた。松尾監督は、「お客さんみたいに客観的に来ていないというか、本当に戦った。『佐賀県大会ではなく、九州で勝ち上がったチームとの今のゲームだったんだぞ、その基準の中でバトルして普通に悔しがっている。それを大事にしろ』と。『基準を色々なチームに上げてもらっている。これは忘れずに努力しよう』と話しました」。九州大会で優勝争いすることや全国大会上位で戦うことは他人事ではない。それを実感できた大会となった。

 今大会は同会場で、全国高校選手権3位・神村学園高(鹿児島)の試合を観戦。年代別日本代表、日本高校選抜候補の選手たちの凄さを目の当たりにした。選手たちの反応を見た指揮官は、「リスペクトは良いけれど、別次元の人みたいに言うなと」指摘。そのことも選手たちの意識を変えたのかもしれない。目線を上げ、九州王者に食い下がったチームの目標は全国大会での活躍。力強さやポジショニングの質など上げていかなければならない。校訓の誠実・努力を持って挑戦。敗戦の悔しさと学んだことを必ず力に変える。

(取材・文 吉田太郎)

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