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「テレビの中の存在」東福岡を破った大分鶴崎、九州新人大会で健闘

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大分鶴崎高はプレミアリーグ勢の東福岡高を撃破。前半28分、MF大川万葉が鮮やかな右足FKを決める

 2月21日まで沖縄県で開催された九州高校新人大会は、鹿児島城西高(鹿児島)の優勝で幕を閉じたが、収穫を得たのは上位チームだけではない。

 大分鶴崎高(大分)は、予選リーグ第2ブロック1勝2敗で敗退となったが、全国優勝経験があり、最高峰のプレミアリーグに所属している名門の東福岡高(福岡)から勝利を挙げる健闘を見せた。同じブロックに同大会3位となった長崎総合科学大附高(長崎)、4位となった日章学園高(宮崎)もいる激戦区。初戦は日章学園に0-3で敗れたが、2戦目で東福岡を2-0で破ると、3戦目は長崎総科大附を相手に2点差から1点差へ追い上げて意地を見せた。特に、東福岡戦の勝利は価値が高い。

 初日の2試合目で行った東福岡戦は、立ち上がりから相手のサイドアタックを受け続ける展開となった。大分鶴崎の守備は、後ろで人を余らせることなくFWから相手を1人ずつ捕まえるスタイルだ。しかし、九州レベルになると、スペースがあるエリアでの1対1は、簡単にはがされてしまう。最終ラインが自陣でリトリートし、2列目からの飛び出しに中盤の選手が食らいついて対応した。

 押され気味ではあったが、普段はアンカー起用でプレー範囲の広いMF高橋涼介(2年)、パスの狙い所が良いMF野々下蒼斗(1年)が中央で攻守に活躍。その少し前で攻撃のアクセントをつけるMF志賀杏陸(1年)が組む中盤のトライアングルを経由してエースFW楠元和馬(2年)が前を向けば、少し強引でもミドルシュートに持ち込むなど、ワンチャンスの雰囲気を漂わせた。

 前半終了間際の28分(予選リーグは30分ハーフ)、大分鶴崎が右サイドから連係で中央へ仕掛けると、ペナルティーアークのすぐ右辺りでFKを獲得。すると、右MF大川万葉(2年)が鮮やかに左隅へたたき込んで先制した。首藤謙二監督が「あの辺のキックは蹴りたいと言っていたのですが(入るのを)1回も見たことがない。期待していませんでしたが、あれが決まって1戦目の疲れを盛り返して、最後まで体力を保てた」と驚きと効果の大きさを表現した一撃だ。

 実は、蹴った本人もビックリしていた。普段は、先輩を見て真似をし始めたというブレ球を土のグラウンドで練習しているからだ。大川は「無回転を蹴ろうとしたんですけど、ちょっと回転がかかって良いコースに行った。狙いとは違いましたけど、あんなに良いボールが蹴れて良かったです」と照れ笑いを浮かべながら、得点場面を振り返った。

 後半も粘り強い守備から反撃の機会をうかがう展開。後半11分には、東福岡の最終ラインのパスミスを奪った志賀が思い切ってロングシュート。味方のバックパスに備えて前に出ていた相手GKの頭上を抜いた球は、右ポストに当たってゴールイン。終盤は、ゴールライン上でクリアする危ない場面もあったが無失点でしのぎ切り、強敵から勝利を挙げた。エースの楠元は「東福岡は、テレビの中の存在みたいな感じだったので、そこに勝てたのは自信にもなったし、嬉しいなという気持ちです」と笑顔を見せた。

 中盤を経由してFWとの連係で仕掛ける攻撃は、回数こそ少ないながら九州レベルでもチャンスを作れることを証明できた。首藤監督は「元々、選手は(県大会の)3冠を取ると言っていましたが(県大会の決勝で柳ヶ浦に)勝てなかった。それが良い薬になった。普段から九州、全国で勝てるようにやっていこうと言っているので、東福岡さんに勝てたのは自信になります」と手応えを語った。

 3戦目の長崎総科大附戦でも、エースの楠元が1得点を決めて追い上げを見せた。九州トップレベルのチームとの3試合で得た収穫は大きい。「テレビの中の存在」とも十分に戦える可能性や自信、再現するために必要な課題とたくさんの収穫を得る大会となった。

(取材・文 平野貴也)

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