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[新人戦]立正大淞南とのバトルに挑んで勝利。自信つける作陽、今年は自分たちが頂点へ

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前半29分、作陽高MF高峻士朗が決勝点

[3.17 中国高校新人大会1回戦 立正大淞南高 0-1 作陽高 揚倉山上段]

 1回戦屈指の好カードは作陽が制した。第15回中国高等学校サッカー新人大会が17日に開幕。立正大淞南高(島根)と作陽高(岡山)の名門校対決は作陽が1-0で制し、高川学園高(山口)との準々決勝へ進出した。

 作陽の酒井貴政監督は、「相手の戦場で戦え。それで負けなかったら絶対に負けないでしょうと。思っていたよりもやれていましたね。僕もびっくりしました」と振り返る。ボールを保持しながらテクニックとアイディアで勝負するスタイルを特長とする作陽が前半、立正大淞南の得意とする縦に速い攻防戦で勝負を挑んだ。

 開始直後に10番MF井手竣介(2年)や成長株のFW足立琥来(2年)が立て続けに相手ゴールを脅かす一撃。入り良く試合を進めた作陽は前半の飲水タイム後からシステムを2トップから1トップへシステムを変更する。そして、本来の戦い方に戻すと、井手の鋭いターンなどからゴールへ迫った。

 そして、前半29分、井手の左CKをゲーム主将のMF高峻士朗(2年)が頭で叩き込んで先制点。酒井監督がコントローラーとして期待するCB虫明勇咲(2年)と左SB西森大輔(2年)がゲームをコントロールし、ポテンシャルを秘めた181cmCB小椋翔太(1年)も高さを発揮するなどリードして前半を折り返した。
 
 立正大淞南は左のMF久島理功(2年)が抜群のスピードを発揮。攻めどころになり続けた。また、雰囲気のある1年生レフティーMF三島拓人が攻撃にアクセントを加える。その一方、前線から強烈なプレッシング。作陽の判断がわずかに遅れると、身体に触れるくらいまで一気に距離を詰めていた。

 最終ラインでCB西口大稀主将(2年)が高さを発揮し、MF中井佑泰(2年)がセカンドボールを拾い続けていたことも印象的だった。だが、今年の県新人戦から南健司総監督(前監督)の後任を務める野尻豪監督は「守備も攻撃も(その局面に)あと1人2人いないとゲームが作れないと思う」「全くトーナメントのメンタルがないですね」とコメント。勢い任せになり、チームとして戦えなかったことを指摘していた。

 一方の作陽は後半も塊になって戦い続けた。立正大淞南は簡単にクロスも上げさせてくれない。だが、抜群のテクニックを見せる井手を中心にMF山田蒼唯(1年)や足立、交代出場でタメを作ったFW宮澤慶(2年)が絡んだ崩しであわや追加点のシーンも。MF吉田央と山田の1年生ダブルボランチが立正大淞南相手に後半も高い強度でバトルを続け、高は終盤でもボールを奪い取るなど貢献度の高い動きを見せていた。

 追加点を奪うことができず、終了間際には立正大淞南FW永澤叶太(2年)の反転シュートが左ポストをヒット。それでも、勝ち切って見せた。酒井監督は「よくテーマを明確にしてみんなが意志を合わせてくれたと思います」と選手たちを称賛。「(スタートは厳しい状況だったが)この期間に色々なところとやらせてもらってだいぶ変わった」と目を細めていた。

 作陽は酒井監督が10番を背負っていた06年度選手権で全国2位。選手権出場回数は岡山県勢最多の24回を誇る。だが、21、22年度は全国切符を獲得することができなかった。常に全国大会へ出場していた時代とは異なるが、全国で戦える力が無いわけではない。「知らないだけなんです。できるのに」と酒井監督。経験値が低く絶対的な自信を持てていなかっただけに、この日の勝利は自信をつける面でも、強豪とまた真剣勝負できるという面でも大きい。

 近年台頭してきた岡山学芸館高が今冬の選手権で岡山県勢初の日本一。悔しさはもちろんあるが、井手は「逆に岡山県が注目される。自分たちが勝って、岡山県は作陽やぞと言われるようにやっていきたい」と語り、高も「岡山では作陽が勝たないといけないと言われているのでここからが勝負だと思います。自分たちが決めた目標は全国優勝というのがあるので、そこへ向けて中国大会は絶対に優勝したいと思います」と前を向く。県新人戦準決勝ではライバル・岡山学芸館を分析し、準備して戦って1-0勝利。選手権王者に黒星をつけたチームは、今回の中国大会でも勝ち続ける意気込みだ。

 作陽は4月に津山市から倉敷市へ移転し、校名も作陽学園高校へ変わる。酒井監督は「あそこの場所(津山)で育ててもらったので、色々な先生に。今までの歴史があって、こういうサッカーが出来る」と作陽を育ててくれた美作地区に感謝する。岡山県作陽高校としては、最後の公式戦。内容と結果にこだわり、優勝して歴史を繋ぐ。

(取材・文 吉田太郎)

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