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[新人戦]前半限定出場のエースが2発。奮起し、戦った高川学園が中国大会“4連覇”達成

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高川学園高が中国大会“4連覇”を達成した

[3.19 中国高校新人大会決勝 高川学園高 4-1 玉野光南高 Balcom広島]

 第15回中国高等学校サッカー新人大会は19日、Balcom BMW広島総合グランドで決勝を行い、高川学園高(山口)が4度目の優勝を飾った。初Vを狙う玉野光南高(岡山)と対戦した高川学園は、U-17日本高校選抜FW山本吟侍(2年)の2ゴールなど4-1で快勝。高川学園は19、21、22年大会に続く4連覇(20年大会は中止)を達成している。

 1-0で勝利した準決勝終了後、高川学園の江本孝監督は選手たちに「きょうの試合に後悔がなかったか」と問いかけたという。これまでサブに回っていた選手たちの多くが出番を得たが、ミスが増えるなど苦しい内容。「技術もだけど、それを補う姿勢があったのか。ギラギラしているものがまだ足りなかった」と指揮官は指摘した。試合後、約30分間のミーティングと言葉に言葉たちは奮起。決勝当日の朝、CB藤井蒼斗主将(2年)を中心に選手たちは自発的にミーティングを行い、会場へ向かった。

 察知する力に秀でた藤井ら各選手が、ウォーミングアップからギラギラしたエネルギーを発揮。「僕が最初から出ていたらあんな試合にはならなかった」と言い切る初先発のMF伊木樹海(2年)や先発チャンスを得たCB安井拓海(2年)が気持ちの込もったプレーでチームを引っ張る。

 中でも第5回 J-VILLAGE CUP U-18(福島)に出場中のU-17日本高校選抜合流のため、前半の35分間限定出場だった山本が、「やっぱりチームがあっての個人の活動なので、他の皆のパスや、指導者からの助言が無かったらいけないと思ったので、チームを勝たせたいという気持ちがありました」という思いをぶつける。

 先にチャンスを作ったのは玉野光南の方。8分、スピーディーにボールを動かし、最後は右クロスからMF伊原快(2年)がヘッド。大黒柱で“ピッチ内の監督”GK常藤至竜主将(2年)を準決勝の怪我で欠いた玉野光南だが、CB内山陽太(2年)が山本にヘディングで競り勝ったほか、巧みな守備対応を見せて相手に決定打を打たせない。

 だが、高川学園はMF矢次皐(1年)が強引なドリブルでサイドを破るなど攻勢を強め、18分に先制点を奪う。敵陣左タッチライン際でボールを奪った山本がDFを剥がして中央方向へ。連動してPAへ飛び出したMF佐藤大斗(2年)がPKを獲得する。「江本先生から『前半からしっかり飛ばしていこう』と。代えもいる中で前半から倒れる勢いで最初はやってやろうかなと思いました」という佐藤が獲得したPKを山本が右足で決めた。

 さらに22分、高川学園は中央で山本が競るとFW田坂大知が左へ展開する。そして、佐藤が縦へのドリブルからクロス。これをファーのMF松木汰駈斗(1年)が右足ダイレクトでゴールへ沈めた。玉野光南は出場停止明けのFW鈴木大空(1年)が怯まずに強気の仕掛け。だが、次の1点も高川学園が奪う。31分、山本がゴール前でGKと競り合い、こぼれを松木がクロス。これを山本が頭でゴールへ押し込んだ。

 2得点の山本は前半終了と同時にユニフォーム姿のまま福島県へ出発。玉野光南は苦しい展開となったが、乙倉健二監督は「せっかく自分らで掴んだこのステージ(初の決勝)。切り替えて後半のモチベーションを整理して臨みました」。3点差の状況にも気持ちを落とさず、真向きな姿勢で後半の35分間を戦った。

 左サイドへ移ったMF北村雄河(1年)がスピードに乗ったドリブルにチャレンジ。MF市村海晴(2年)らがボールを前進させようとする。高川学園はセットプレーから決定機を作ったが、玉野光南は粘り強くゴールを死守。高川学園もGK田中惣一朗(2年)と右SB沖野眞之介(1年)、藤井、安井、左SB西村大和(1年)の4バック中心に堅い。また小柄な伊木が相手の前に身体をねじ込んでボール奪取。だが、玉野光南は29分にゴールをこじ開けた。

 北村のスルーパスから鈴木が右サイドを突破。折り返しのこぼれをMF守田尚樹(2年)が狙うと、最後は北村が身体を投げ出してゴールへ押し込んだ。さらに玉野光南は突破力を見せる北村を中心に、縦へ速い攻撃で2点目を目指す。だが、高川学園は35分、交代出場MF大下隼鋭(2年)が切り返しを交えたドリブルで相手の守りを攻略。選手権のレギュラーメンバーでA2チームから復帰したばかりのアタッカーは豪快な右足シュートをゴールへ突き刺し、4-1で“4連覇”を飾った。

 優勝した高川学園の江本監督は「強豪校相手に公式戦で対戦できたのは収穫ですし、課題がはっきりした。球際の寄せの部分、攻撃でボールを動かす、ビルドアップ、基本的な止める・蹴るの課題が出た」と振り返る。選手が掲げた今年のチーム目標は日本一。江本監督が「(それに相応しい)日常をちゃんと作り出します」と語ったように、甘さを許さず、充実した毎日をやり切って目標に近づく。

(取材・文 吉田太郎)

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