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[J-VILLAGE CUP U-18]予選リーグ最終節に組まれた“特別な一戦”。ラスト1年「全尽」のJFAアカデミー福島U-18が尚志に1-0で勝利

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後半38分、JFAアカデミー福島U-18FW吉田喬が決勝ゴール

[3.20 J-VILLAGE CUPU-18予選リーグ 尚志高 0-1 JFAアカデミー福島U-18 Jヴィレッジ]

 20日、第5回 J-VILLAGE CUPU-18予選リーグ最終節で尚志高(福島)とJFAアカデミー福島U-18(静岡)が対戦し、JFAアカデミー福島U-18が1-0で勝った。

 JFAアカデミー福島U-18は現在、高校2年生(新高校3年生)のみ。23年度いっぱいで、09年度から行われてきたU-18チームとしての活動を終了する。第1回大会から出場してきたJ-VILLAGE CUP U-18も今回が最後の参戦。その予選リーグ最終節でホストチームである地元・尚志対JFAアカデミー福島U-18のカードが組み込まれた。

 JFAアカデミー福島のJ-VILLAGE CUPU-18参戦は、尚志の仲村浩二監督からの誘いがきっかけ。JFAアカデミー福島の津田恵太監督は「ありがたいことです」と感謝する。両チームは、18年と21年のプレミアリーグプレーオフで対戦し、18年は尚志が、21年はJFAアカデミー福島がPK戦で勝利し、プレミアリーグ昇格に結びつけている。震災の影響でJFAアカデミー福島が静岡へ活動拠点を変える以前は、同じ福島県で活動し、プリンスリーグ東北でも対戦。好敵手でもあった両チームはこの日、“特別な一戦”で好勝負を演じた。

 前半は尚志のペースだった。U-18日本代表候補FW網代陽勇(2年)が前線で巧みにボールキープ。2列目、3列目から選手が飛び出して攻撃に係る。チャンスを作り続けたものの、相手の好守に阻まれるなど1点が遠かった。MF出来伯琉(2年)の左足ミドルはGK和泉空良(2年)が反応し、クロスバーをヒット。前半終盤には網代の突破からFW桜松駿(2年)が決定的なヘッドを放ち、さらに網代とMF濱田昂希(2年)のコンビで左サイドを切り崩し、桜松が合わせた。

 だが、このシュートもGK和泉が目一杯身体を伸ばしてかき出す。JFAアカデミー福島はU-16日本代表候補歴を持つMF山崎太湧に加え、左SB林晃希(2年)がインサイドでビルドアップに絡むなど丁寧にボールを繋ぎ、22年U-17日本代表の10番MF花城琳斗(2年)が力強くボールを運んでシュートを打ち込んでいた。

 加えて、花城やMF塚田喜大(2年)らアタッカー陣も献身的な守備を見せていた。だが、距離感が悪く、全体的にゴールへ向かう姿勢が不足する前半。それでも、「これはアカデミーではないよね」(津田監督)と檄を受けた後半、パス&コントロールしながら前に出るJFAアカデミー福島らしさ、そして勝利への執着心を見せた。

 存在感を放つ花城がボールを前進させ、突破からチャンスを演出する。そこにMF植田陸(2年)や右SB坂本秀吾(2年)、ボランチのMF石田然(2年)が係わってシュートを打ち込んだ。また、前に強く、高さも発揮したCB長尾ジョシュア文典(2年)とCB阿部琉星(2年)を中心としたDF陣が相手の攻撃をよく食い止めていた。

 尚志は右SB冨岡和真(2年)と左SB白石蓮(2年)の攻め上がりも交えて攻め返し、濱田のドリブルシュートやMF若林来希(2年)の突破から桜松の放ったヘッドがゴールを脅かす。だが、1点を奪うことができない。

 逆にJFAアカデミー福島は試合終盤、右サイドで獲得したFKからサインプレー。MF渋川雅也(2年)が小さくボールを出し、花城がクロスを上げ切る。そして林が競り、その後方のFW吉田喬(2年)が右足ダイレクトで叩く。これがゴールを破り、決勝点となった。大興奮のJFAアカデミー福島に対し、尚志の仲村監督は「勝ちたいという気持ちがアカデミーの方が上でしたね」と称賛。気持ちで上回ったJFAアカデミー福島は2勝1分とし、3位決定戦へ進んだ。

 Jクラブの育成組織でも、高体連でも、街クラブでもないJFAアカデミー福島。選手たちはサッカーだけでなく、寮生活、全員が同じクラスという三島長陵高での授業と常に生活をともにしてきた。「全寮制でみんなと寝食ともにして生活できて、好きな時にミーティングできるし、自分たちで映像確認したりして、それを練習で活かしたりするのは良くてコミュニケーションも取れるし、そこは良いところ」と吉田。培ってきたことを最後の1年で表現する意気込みだ。

 津田監督は「1学年で難しいことはたくさんあるけれど、やってきたことをアピールしようと。静岡の方々に受け入れてもらって、育ててもらった恩返し。1試合1試合全力で戦いたい」と語る。選手たちが今年のスローガンとして掲げているのが「全尽」だ。

 花城は「(全尽は)前に進んだり、全てを尽くす。一回の試合に全てを尽くして前進するという意味です」と説明した。この日、前半から切り替えて「全尽」で臨んだ後半に1点をもぎ取って勝利。吉田は「今年はプリンスリーグでしっかり優勝を成し遂げて御殿場、時之栖の人たちにも感謝を伝えて、恩返ししたいと思いますし、チームが目標にしているのはプリンスリーグ優勝とクラブユース出場なので、そこは出てしっかり有終の美を飾りたい」と誓った。「全尽」で1年を過ごし、目標を達成すること。そして、J-VILLAGE CUPU-18関係者を含めて支えてくれた人たちに恩返しする。

(取材・文 吉田太郎)

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