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マルチプレーヤーが前線で徹底する「走ること」。大津FW稲田翼は走り切り、泥臭く1点と白星をもたらす

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FW稲田翼は走り続け、泥臭くゴールを決めて大津高に1点と白星をもたらす

“公立の雄”こと大津高(熊本)は19年以降、継続してプレミアリーグWESTに参戦。19年と21年は4位、22年も6位と上位に食い込んでいる(20年は代替開催されたスーパープリンスリーグ九州で優勝)。

 守備から構築し、プレミアリーグでJクラブユースと渡り合うチームに成長した近年は、全国高校選手権でも好成績。21年度大会で初の準優勝を記録し、22年度大会でも3位と結果を残した。1年、365日を有効活用して毎年のように好チームを作り上げているが、3年生卒業後の春先は常に苦戦。今年も、ともにU-17日本高校選抜でJクラブ注目のMF碇明日麻(新3年)と左SB田辺幸久(新3年)を除くとメンバーが大きく入れ替わっており、県新人戦、サニックスカップの先発の半数以上を下級生が占めていた。

 3月のサニックスカップは16チーム中6位。山城朋大監督は「去年もそうでしたけれど、ここに来ると、自分たちのやっている基準が分かってくる」という。予選リーグの柏U-18戦では迷いながら戦った前半に4失点。だが、1-4でスタートした後半は100%の力でプレッシングに行き、流れを引き寄せ、同点に追いついてもおかしくないような戦いを見せた。

 結果は決めるべきところで決めきれず、逆に突き放されて2-6で敗戦。山城監督は「防げる失点もいくつかあると思う。防ぎどころをしっかり防いで、頑張ります」と語っていた。まだ不要な失点が多いものの、DFラインを中心に着実に成長。U-19日本代表候補の191cmFW小林俊瑛(筑波大へ進学)や日本高校選抜候補の10番MF田原瑠衣(立正大へ進学)の抜けたアタッカー陣も、FW稲田翼(新3年)やMF古川大地(新3年)が軸になりつつある。

 稲田は1年時の選手権でゴールも決めているマルチプレーヤー。昨年はSBでもプレーしたが、「今、FWでしっくりきている」と語る。器用な一方で、特別な武器がないことを本人も自覚。その上で「(自分がやるべきことは)プレスですね。1試合通して走り切って、泥臭く、最後(相手の)足が止まったところで1点、2点取れることを目指しています」と走ってチームに1点をもたらす考えだ。

 元々走ることが得意だった訳では無い。だが、新チームになって増した責任感が身体を突き動かしているという。目指すのは、U-19日本代表候補の大型FW小林ではなく、その隣で一際ハードワークし、プレミアリーグWEST後半戦だけで2桁得点をマークしたFW山下基成(専修大へ進学)の姿だ。「去年の11番の基成さんの献身的な守備、プレスだったり、決め切る力だったり、そこが目指すところにあります」。サニックスカップでは得点嗅覚の高さを活かしてチャンスに絡み、2得点。だが、もっと個の力でもチャンスを作り出し、決めなければならないと考えている。

 サニックスカップで4得点のFW山下景司(新2年)とともに新生・大津の前線で結果を残す。そして、先輩たちを超える1年に。「1年生の時(の選手権)は決めさせてもらった。2年生の時に選手権で何もしていないので、それが本来の結果。受け止めながら得点のイメージも持ちながらやっていかないといけない。(現状は)まだまだ練習が足りないと思います。(チームとしては)去年とか一昨年のチームと比較されることもあるけれど、自分たちは自分たちなので。(自分たちのプレーに集中し、)全国優勝を目指して頑張っている」。先輩超え、日本一になることは簡単なことではない。それでも、諦めずに進化を続け、目標にチャレンジする。

(取材・文 吉田太郎)

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